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アニメによって、東京の求心力は落ちてしまった

ゆるキャン△」って、3期から制作会社が替わったんだね。
1期・2期・劇場版までがC-Stationで、3期からエイトビット
会社の格としてはエイトビットの方が上だと思うので、「ゆるキャン△」的には出世ということになるの?
というか、このシリーズは劇場版がなでしこらが社会人になった姿を描いて実質最終回みたいな感じだったことを思えば、C-Station的にはあれでケリをつけた感じだったんだろう。
だけど商業的には「まだまだいける!」と考えるオトナたちもいるわけで、そこにうまいことエイトビットが入れたということか。
実際「ゆるキャン△」って、まだまだおいしいと思うのよ。
癒し枠としては、最優良コンテンツのひとつである。
聖地巡礼とか、いまだ凄いらしいし。

3期から、微妙にキャラデザが変わったんだね

こういう「田舎」アニメが人気になったのは、いつの頃からだろう?
古いところを挙げれば「となりのトトロ」の頃から田舎描写はあったけど、ああいうのはファンタジーゆえ、いまどきのやつとはちょっと違う。
LOHAS」という言葉が世に出てきたのは、00年代初頭のことらしい。
Production I.Gのプロデューサーだった堀川憲司が、富山県でP.A.WORKSを立ち上げたのはちょうそのあたりの頃である。
このへんから、アニメの舞台は田舎が多くなっていったんだよね。
やがて決定打となったのが「のんのんびより」(制作SILVER LINK)で、これは東京から田舎へと引っ越した小5の女子・蛍を中心とした物語だった。
普通、こういうパターンって都会っ子は田舎に嫌気がさすのが鉄板だろうに、「のんのんびより」では全くそうならない。
それどころか、蛍はどんどん田舎に馴染んでいき、なぜか毎日超楽しそうである。
都会⇒田舎というベクトルの肯定。
この「のんのんびより」のプロットとほぼ同じタイプの映画が2009年に公開されてて、それが「マイマイ新子と千年の魔法」(制作マッドハウス)である。

「マイマイ新子と千年の魔法」

これの監督は「この世界の片隅に」でお馴染み、片渕須直氏である。
モントリオールのファンタジア映画祭では最優秀賞獲ったり、ブリュッセルの映画祭でも最優秀観客賞獲ったりと評判は上々の作品だったんだが、当時興行収入は全く振るわなかったらしい。
だけど、「この世界の片隅に」で片渕監督の知名度が上がったことを受けて2017年にリバイバル上映したところ、今度はそこそこ観客は入ったんだってさ。
皆さんも、もしこれをまだ見てないようなら、ぜひ見てほしい。
「のんのんびより」が好きな人なら、絶対イケるはずだから。

これの舞台は山口県ですね

昔は、ベクトルは田舎⇒都会の一方通行だった。
古くから「故郷に錦を飾る」という言葉もあり、地方の若者が大志を抱いて都会に出ていくことはごく当たり前のことだった。
逆に、都会⇒田舎のベクトルには「都落ち」というネガティブな言葉が使われてたよね・・。

ところで、皆さんは上條淳士の「TO-Y」って知ってる?
知らん人は多いかもしれんが、ちょうど「うる星やつら」が人気だった頃に同じく少年サンデーで人気だった漫画なんだ。

「TO-Y」

今改めて見ても、上條先生ってオシャレで綺麗な画を描くよね~。
これが80年代の作品なんだから、そりゃ爆発的に人気も出るわけよ。
で、これはひとりの若者がロックシンガーとして立身出世していく物語。

「TO-Y」

正直、これの影響力は凄かったと思うよ。
後のヴィジュアル系バンドの人たちの多くが、「TO-Y」に影響受けたことを認めてるし。
でさ、この当時はまだ東京ドームがなかったから、日本武道館が聖地だったのかな?
全国のロック少年たちは、「いつか東京に出て日本武道館に!」という夢を抱いたわけさ。
そういう意味で「TO-Y」は、田舎⇒都会というベクトルを強固にした作品だったといえよう。
これの女子バージョンが「NANA」だね。

「NANA」

しかし時代は流れて、ちょっとベクトルが変わってきた。
その象徴が、これである↓↓

「ゾンビランドサガ」

いつの間にか、目指すべきところが日本武道館とか東京ドームじゃなくて、「鳥栖スタジアム」や「SAGAアリーナ」になっとる(笑)。
「NANA」の2006年から「ゾンビランドサガ」の2018年までの間に一体何があったのかというと、それは京アニP.A.WORKSといった制作会社による、美麗な背景を作画したアニメの興隆、じゃないだろうか。
それらの舞台は東京じゃなく主に自然豊かな地方都市で、00年代後半からはそういうロケ地を巡る、「聖地巡礼」がひとつのムーブメントになってきた。
意外と、そういうところからスローライフの再評価がきてるんだよね。
田舎ってイイじゃん、と。
昔は、それこそ都会に行かなきゃ情報に取り残されるようなニュアンスもあったが、今は日本全国にネットが浸透してるだけに、たとえ田舎でも情報の格差なんてないでしょ?
「田舎はテレビのチャンネルが4つしかない」とかいったところで、今はネットが繋がれば配信でいくらでも番組を見れる時代だし、そのへんは昔とだいぶ事情が変わってきてるさ。
モノにしたって、今はAmazonで何でも買える時代だし。
ここまで地方もネットで網羅された時代、逆に「都会のうまみ」は昔ほどではなくなってきたと思う。
むしろ都会は物価が高いし、家賃も高いし・・。

ゾンビランドサガ」が2018年として、同じくその年に始まったのが「ゆるキャン△」である。
2018年には「からかい上手の高木さん」も放送されたわけで、確かこの作品は小豆島だっけ?
これはラブコメなんだが、やはり都会を舞台にしたやつと比べて田舎を舞台にしたやつは癒し成分が多い。

う~ん、やっぱり地方女子はイイな~。

逆に都会女子って、こんな感じだからね↓↓

奔放な都会女子
動揺する地方男子

昔はともかく、令和の今は【都会<地方】という価値観に大きくシフトしてきてると思う。
そしてそこに影響を与えたのは、やはり00年代以降のアニメ文化だという気がしてならない。

<田舎ブームの流れ>

【2004年】
LOHASブームがスタート
(『MYLOHAS』創刊)
【2005年】
「聖地巡礼アニメ・マンガ12か所めぐり」
(著・柿崎俊道)出版
【2006年】
「ひぐらしのなく頃に」放送
【2007年】
聖地巡礼ブームがスタート
(07年放送「らき☆すた」が契機らしい)
2008年】
「夏目友人帳」放送
【2009年】
「サマーウォーズ」公開
【2011年】
「あの日見た花の名前を、僕達はまだ知らない」放送
【2013年】
「のんのんびより」放送

そういや、昨年大好評だったアニメ「スキップとローファー」も、あれって東京を舞台にした青春ドラマでありつつ、ヒロインの野望は「官僚になり、将来は地元(石川県)に戻って過疎化対策」という、めっちゃ堅実なものだった(笑)。
いまどきの若い子って、そういう感じになってきてるの?
一方、昨年大好評だったアニメのもうひとつ、「呪術廻戦」は逆にヒロイン釘崎野薔薇が田舎大嫌いキャラで、閉鎖的ムラ社会を思いきりディスってたよね。

釘崎野薔薇
「呪術廻戦」近所の人が釘崎の初潮のお祝いを持ってきたシーン

2023年はドラマ「VIVANT」でお赤飯ブームがきたというのに、それを「呪術廻戦」が思いっきりブチ壊しやがった!
でも、確かにそうだよな・・。
田舎って、正直いいところばかりでもないと思う。
人と人との距離感の問題というか、場合によっては息が詰まるところもあるだろう。
そういう意味では、「のんのんびより」は明らかにお赤飯系のムラだと思うし、ちょうどいい田舎というのは「ゆるキャン△」レベルなのかもしれないなぁ。


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