淀美 佑子

淀美佑子(ヨドミ・ユーコ) ✒️中部短歌会(2017入会)2023年中部短歌会新人賞 ┃…

淀美 佑子

淀美佑子(ヨドミ・ユーコ) ✒️中部短歌会(2017入会)2023年中部短歌会新人賞 ┃ 短歌集団☆チカヨミ( @tikayomiall ) ┃ 64調自由律短歌(#64tanka) ┃ 性愛短歌ネプリ(#せいあい羅曼) 休止中┃👘 呉服業→💊調剤薬局事務&登録販売者研修中 ┃

記事一覧

塚田千束『アスパラと潮騒』短歌研究社*歌集鑑賞

   先生と呼ばれるたびに錆びついた胸に一枚白衣を羽織る  塚田千束の歌集は、どうしてもプロフィールと切り離しにくい。それはまず、医師という職業柄の側面が大きい…

淀美 佑子
5日前
10

永井陽子『なよたけ拾遺』*リズム研究会 読書会リポート

2024/07/07   七夕であり、東京都知事選であったこの日、リズム研究会初めての読書会がオンライン開催されました。  メンバーは、岡部杏里さん(幻桃)、岩舘澄江さん(…

淀美 佑子
12日前
18

小島なお「かどうた」最終回*ニコ動無料配信ありがとう(ゲスト:笹公人)

 おいおいおいおいおいおいおいおいおい!!(岸部露伴風味)  ニコ動に参入したくなくて観ることを拒んでいた「かどうた」!最終回!!  障害の影響でログインエラーが…

淀美 佑子
1か月前
6

短歌集団☆チカヨミ☆ってなに?

 この度、文学フリマ東京38(2024/5/19)に、5年ぶり出展となるチカヨミ。「チカヨミ」というタイトルの本は作っていませんが、同人誌サークルです。  文学フリマに…

淀美 佑子
2か月前
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短歌マガジン(次世代短歌) 第10回毎月短歌【現代語・テーマ性愛】人間選者:淀美佑子

 さてさてみなさま、ごきげんよう。選評発表のお時間です。 求めあう人の性から生まれたる歌のテーマの性愛は、いつの時代も色褪せぬ。百五十一首のなかから捨てきれぬ愛…

淀美 佑子
2か月前
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連作「帯すれば」30首 淀美 佑子 / あの頃のわたしへの挽歌として

 ※第25回NHK全国短歌大会(2024) 近藤芳美賞 入選作15首を含む    帯すれば  淀美 佑子 販売の仕事でならば商品を介して会話ができるコミュ障 売上に自分が肯…

淀美 佑子
3か月前
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短歌マガジン(次世代短歌 )第8回毎月短歌【現代語・2月の自選】人間選者:淀美佑子

さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!人間選者・淀美佑子の選評発表だよ!! 毎月の短歌選ぶも第8回、口語文語を分かつとし、すったもんだのその後で、さてさて話…

淀美 佑子
4か月前
28

伊豆みつ『鍵盤のことば』書肆侃侃房*歌集鑑賞

   花の名を呼ぶかのやうに歌ふから耳がすっかり咲いてしまった  口語、文語、旧かな、新かな、どれをどう選択するかでその人の文体はつくられる。わたしに、口語に旧…

淀美 佑子
4か月前
12

人間選者をするにあたって〈次世代歌壇 毎月短歌第8回〉

 短歌投稿サイト、次世代歌壇(コトバディア)には、「AI選者」がいるため「人間選者」という概念が生まれています。この度、その第8回毎月短歌の人間選者をお引き受けし…

淀美 佑子
5か月前
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小坂井大輔『平和園に帰ろうよ』書肆侃侃房*歌集鑑賞

   乗車位置ではないところに立っているわたしの後ろに出来た行列  行列を作るのは、もはや日本人の習性なのか、なぜ乗車位置ではないところにわたしが立っていたのか…

淀美 佑子
5か月前
5

橋爪志保『地上絵』書肆侃侃房*歌集鑑賞

 たとえ仲の良い友達だとしても、すべてを理解できるわけではない。逆もしかりで、仲が良い人にも理解されたくない部分が自分の中にある。というのは言い訳の前振りになっ…

淀美 佑子
5か月前
11

笹公人『終楽章』短歌研究社*歌集鑑賞

 今話題の『シン・短歌入門』の著者、笹公人(以下、笹先生)の第五歌集を改めて味わう。  『シン・短歌入門』は、初心者にもそうでない人にも、よくある疑問をQ&A形式…

淀美 佑子
5か月前
9

中村孝子『あね いもうと』*歌集鑑賞

 結社、中部短歌会の先輩の歌集を拝読した。書店には流通していない歌集ながら素敵な歌がたくさんあり、最近読んだ歌集の中で最も付箋まみれになった。    反骨の精神…

淀美 佑子
5か月前
2

佐藤涼子『Midnight Sun』書肆侃侃房*歌集鑑賞

 まもなく1か月が経過するが、能登半島地震による被災者の避難生活は続いており、行き届かぬ支援がくりかえし報道されている。個人的にはわずかばかりの支援金募金をする…

淀美 佑子
6か月前
4

近江瞬 『飛び散れ、水たち』左右社*歌集鑑賞*

 塩害で咲かない土地に無差別な支援が植えて枯らした花々  被災地視察に新大臣が訪れる秘書の持つ傘で濡れることなく  宮城県石巻市生まれの歌人、近江瞬は東日本大震…

淀美 佑子
6か月前
7

平出奔『了解』短歌研究社*歌集鑑賞*

   終電の一本前で座ってる誰もを僕と呼べそうだった  自他との境界があいまいになっていく瞬間を切り取った一首。ただでさえ右へならえの日本社会で、逃せば後がない…

淀美 佑子
7か月前
7
塚田千束『アスパラと潮騒』短歌研究社*歌集鑑賞

塚田千束『アスパラと潮騒』短歌研究社*歌集鑑賞

   先生と呼ばれるたびに錆びついた胸に一枚白衣を羽織る

 塚田千束の歌集は、どうしてもプロフィールと切り離しにくい。それはまず、医師という職業柄の側面が大きい。どうしても医師として命に寄り添う歌には注目してしまうし、多くの読者に新鮮な視点と発見をもたらす。
 かつ、母として、妻として、娘として、女性としての役割を多角的な視点で歌われている歌集だ。

   母乳でしょうと言われるたびにすり減って

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永井陽子『なよたけ拾遺』*リズム研究会 読書会リポート

永井陽子『なよたけ拾遺』*リズム研究会 読書会リポート

2024/07/07 
 七夕であり、東京都知事選であったこの日、リズム研究会初めての読書会がオンライン開催されました。
 メンバーは、岡部杏里さん(幻桃)、岩舘澄江さん(コスモス)、江口美由紀さん(幻桃)、三好くに子さん(塔)、淀美佑子(中部短歌)の超結社で、ただただ一緒に話したら楽しい集まりです!
 意外とちゃんと読んだことがない名著を、みんなで読もう!という趣旨で、岡部さんが手に入りにくい歌

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小島なお「かどうた」最終回*ニコ動無料配信ありがとう(ゲスト:笹公人)

小島なお「かどうた」最終回*ニコ動無料配信ありがとう(ゲスト:笹公人)

 おいおいおいおいおいおいおいおいおい!!(岸部露伴風味)
 ニコ動に参入したくなくて観ることを拒んでいた「かどうた」!最終回!!
 障害の影響でログインエラーが発生していることから、無料配信されたじゃあないか!
 小島なおさんの番組ですが、ゲストが笹先生含め、めちゃくちゃおもしろかったじゃあないか!!
(呑みながら視聴したので、ちょっと勢いがありすぎることに関してはお察しください。)

 とても

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短歌集団☆チカヨミ☆ってなに?

短歌集団☆チカヨミ☆ってなに?

 この度、文学フリマ東京38(2024/5/19)に、5年ぶり出展となるチカヨミ。「チカヨミ」というタイトルの本は作っていませんが、同人誌サークルです。

 文学フリマにデビューしたのは2013年。月日の経つのが早くて恐ろしい。そのころから本を作っているなんて、ベテランだと思うでしょ?薄い本作りはベテランの、短歌初心者1年生でした(笑)

 チカヨミは、中学生くらいからの同級生で、詩、小説、エッセ

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短歌マガジン(次世代短歌) 第10回毎月短歌【現代語・テーマ性愛】人間選者:淀美佑子

短歌マガジン(次世代短歌) 第10回毎月短歌【現代語・テーマ性愛】人間選者:淀美佑子

 さてさてみなさま、ごきげんよう。選評発表のお時間です。
求めあう人の性から生まれたる歌のテーマの性愛は、いつの時代も色褪せぬ。百五十一首のなかから捨てきれぬ愛をいくつも拾い上げ、咲き乱れるはこの十首。人間選者、淀美佑子がお送りします。どうぞ

【バーレスク賞】
脱衣所で裸の二羽の人間が鳥の部分を見せ合う真冬 /猫背の犬

 人間の単位は、はて?羽があるかのように二羽と数えるふたりには、鳥の部分が

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連作「帯すれば」30首 淀美 佑子 / あの頃のわたしへの挽歌として

連作「帯すれば」30首 淀美 佑子 / あの頃のわたしへの挽歌として

 ※第25回NHK全国短歌大会(2024) 近藤芳美賞 入選作15首を含む

   帯すれば

 淀美 佑子

販売の仕事でならば商品を介して会話ができるコミュ障

売上に自分が肯定されているかんじがするのは一種の麻薬

贅沢を敵としているお客にも消費の正義を笑顔で語る

面倒だ着ない高いと穿たれて出発点に立つ呉服売り

羨望を抱くばかりの常套句「嫁入り道具」と「箪笥の肥やし」

帯すれば背筋に芯

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短歌マガジン(次世代短歌 )第8回毎月短歌【現代語・2月の自選】人間選者:淀美佑子

短歌マガジン(次世代短歌 )第8回毎月短歌【現代語・2月の自選】人間選者:淀美佑子

さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!人間選者・淀美佑子の選評発表だよ!!
毎月の短歌選ぶも第8回、口語文語を分かつとし、すったもんだのその後で、さてさて話はこれからだ。
2月自選の現代語、ふたを開ければ集いしは、ありがたいこと183首。
どちらに投稿すべきかと、よもや失格?などという、ご心配には及びません。全てきちんと鑑賞し、選をいたしてございます!
どうぞ、今宵はお楽しみください!!

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伊豆みつ『鍵盤のことば』書肆侃侃房*歌集鑑賞

伊豆みつ『鍵盤のことば』書肆侃侃房*歌集鑑賞

   花の名を呼ぶかのやうに歌ふから耳がすっかり咲いてしまった

 口語、文語、旧かな、新かな、どれをどう選択するかでその人の文体はつくられる。わたしに、口語に旧かなを取り入れた文体の魅力を教えてくれた歌集を読み返して紹介したくなった。
 伊豆みつの歌集には、花や音楽、サブカルなど様々な要素があり、引き出しの多い歌人だと思う。「花」と「歌」が入ったこの一首は、この歌集の世界観の入り口という気がする

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人間選者をするにあたって〈次世代歌壇 毎月短歌第8回〉

人間選者をするにあたって〈次世代歌壇 毎月短歌第8回〉

 短歌投稿サイト、次世代歌壇(コトバディア)には、「AI選者」がいるため「人間選者」という概念が生まれています。この度、その第8回毎月短歌の人間選者をお引き受けしました。その意気込みなどの表明のため記事を書きます。

 まず、主催者の深水英一郎さんのXでの炎上について、わたしのスタンスを表明しておこうと思います。関心のない方は読み飛ばしてください。▶

 炎上の概要としては〈今の短歌界には読者ファ

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小坂井大輔『平和園に帰ろうよ』書肆侃侃房*歌集鑑賞

小坂井大輔『平和園に帰ろうよ』書肆侃侃房*歌集鑑賞

   乗車位置ではないところに立っているわたしの後ろに出来た行列

 行列を作るのは、もはや日本人の習性なのか、なぜ乗車位置ではないところにわたしが立っていたのかはわからないが、例えば立ち止まってスマホをいじっていただけかもしれない。だがふと気づけば後ろに列ができてしまっていて気まずいかんじが笑いを誘う。

 この歌集の作者、小坂井大輔は1980年愛知県名古屋市生まれ。短歌の聖地と呼ばれている、名

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橋爪志保『地上絵』書肆侃侃房*歌集鑑賞

橋爪志保『地上絵』書肆侃侃房*歌集鑑賞

 たとえ仲の良い友達だとしても、すべてを理解できるわけではない。逆もしかりで、仲が良い人にも理解されたくない部分が自分の中にある。というのは言い訳の前振りになってしまうが、橋爪志保の歌には、よくわかるものとわからないものが混在している。そのわからなさは、作歌する上での意図的なものというよりは、作者の内面をそのまま顕在化した結果という気がする。その根拠は歌集から逸脱してしまうのだが、日頃SNSで垣間

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笹公人『終楽章』短歌研究社*歌集鑑賞

笹公人『終楽章』短歌研究社*歌集鑑賞

 今話題の『シン・短歌入門』の著者、笹公人(以下、笹先生)の第五歌集を改めて味わう。
 『シン・短歌入門』は、初心者にもそうでない人にも、よくある疑問をQ&A形式でわかりやすくまとめてあり、最後には既存の短歌を穴埋め問題にした短歌ドリルがあるなど、楽しく短歌が学べる素晴らしい入門書だった。丁寧で、親切で、おもしろい。入門書にも人柄があらわれている。
 その笹先生の第五歌集が、2022年8月に発行さ

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中村孝子『あね いもうと』*歌集鑑賞

中村孝子『あね いもうと』*歌集鑑賞

 結社、中部短歌会の先輩の歌集を拝読した。書店には流通していない歌集ながら素敵な歌がたくさんあり、最近読んだ歌集の中で最も付箋まみれになった。

   反骨の精神むずと湧き出づる熊襲の裔のしたたかにあれ

 作者中村孝子さんは、1936年(昭和11年)熊本県生まれ。つまり戦前生まれの大先輩だ。「熊襲」とは『日本書紀』における九州地方の地名で、熊本に生まれた作者のたくましい精神性がうかがえとても頼も

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佐藤涼子『Midnight Sun』書肆侃侃房*歌集鑑賞

佐藤涼子『Midnight Sun』書肆侃侃房*歌集鑑賞

 まもなく1か月が経過するが、能登半島地震による被災者の避難生活は続いており、行き届かぬ支援がくりかえし報道されている。個人的にはわずかばかりの支援金募金をするくらいしかできないものの、それらの報道を注視し明日は我が身と心を寄せる毎日だ。
 そんな今、この歌集を改めて開いた。宮城県仙台市在住の歌人、佐藤涼子の『Midnight Sun』には、「記録」というタイトルの連作で東日本大震災の光景が描かれ

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近江瞬 『飛び散れ、水たち』左右社*歌集鑑賞*

近江瞬 『飛び散れ、水たち』左右社*歌集鑑賞*

 塩害で咲かない土地に無差別な支援が植えて枯らした花々

 被災地視察に新大臣が訪れる秘書の持つ傘で濡れることなく

 宮城県石巻市生まれの歌人、近江瞬は東日本大震災のその時、故郷にはいなかったという。あの日の惨状を知らないという劣等感にさいなまれながら詠まれた連作は、被災地から遠く離れたわたしたちにも、災害と向き合うことの大切さと難しさを教えてくれる。
 また2024年の元日、能登半島を大きな地

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平出奔『了解』短歌研究社*歌集鑑賞*

平出奔『了解』短歌研究社*歌集鑑賞*

   終電の一本前で座ってる誰もを僕と呼べそうだった

 自他との境界があいまいになっていく瞬間を切り取った一首。ただでさえ右へならえの日本社会で、逃せば後がない終電ではなく、余裕をもってその一本前に乗車するリスクを冒さない価値観。そんな乗客全員が群れとなってひとつの個を作っているかのようだ。

 わたしが平出奔の作品に初めて出会ったのは、文学フリマ東京で販売されていた同人誌だった。味のある手書き

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