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人間選者をするにあたって〈次世代歌壇 毎月短歌第8回〉

 短歌投稿サイト、次世代歌壇(コトバディア)には、「AI選者」がいるため「人間選者」という概念が生まれています。この度、その第8回毎月短歌の人間選者をお引き受けしました。その意気込みなどの表明のため記事を書きます。

 まず、主催者の深水英一郎さんのXでの炎上について、わたしのスタンスを表明しておこうと思います。関心のない方は読み飛ばしてください。▶

 炎上の概要としては〈今の短歌界には読者ファーストが欠けている〉と口火を切って、その文脈のなかで文語旧かなについても否定的な印象を与える発言をされたことです。これについては、あまりに言葉選びがまずく、反感を買うことは否めないと感じました。私見は、Xでもポストしています。わたしも発言を言葉通りに受け取るなら賛同できないひとりです。
 ですが、「言うは易く行うは難し」あら、文語だわ(笑)という言葉がありますが、今どきのSNSでは「言うも難し」。行うは言うに及ばず。そんな中、深水さんの活動には目を見張るものがあります。短歌投稿サイト「コトバディア」は、短歌を楽しむ人の間口を広げたい、敷居を下げたいという理念がよく伝わってきます。(ちなみに深水さんとは直接の面識もなく、交流もXの相互フォローのみです。)ですのでわたしは、深水さんの炎上〈発言〉と〈行動(活動)〉とは分けて考えています。発言があまりにもまずかったですが、行動から読み取れる深水さんは、件の炎上の印象とは齟齬があります。わたしは、深水さんの活動を支持し、試みを継続できるよう応援したいと思います。
 というわけで、人間選者お引き受けしました。

▶なぜ、〈口語新かな〉〈文語旧かな〉を分けるのか?
 第8回から投稿欄と選者を分けるということに、賛否両論あるようです。ほとんどの投稿欄では、そういった基準が設けられていないのが通例ということもありますし、〈口語旧かな〉などのグレーゾーンの人はどうすればいいのかという問題が出てきます。
 ちなみに、グレーゾーンの歌人が投稿できないということはなく、ご自身の判断でどちらかの部門を選択して投稿可能ですし、迷う方は運営が相談に応じて振り分けるとのことです。
 で、デメリットはそのようなグレーゾーンですが、一方でメリットもあると思っています。
 わたしが短歌を始めてまもなく歌会を経験して驚いたのが、口語や文語、作歌スタイルが様々な人の作品が全て同じ土俵で批評されることです。まるで異種格闘技戦だな!と感じました。慣れるとそれがおもしろいのですが、一方で、全員で票を投じる歌会では、口語の作者が多いと文語の歌が評価されにくい、またはその逆のような状況もあります。はっきりとは分けられなくても、まずはゆるやかに土俵を分けるというのは、おもしろい試みだと思います。投稿する側が、自分が選ばれやすいと思う土俵を選べるということになれば、さらに初心者の心理的ハードルも下がると思います。これはもしかしたら、口語短歌をやっていたけど、文語でやってみたいという文語初心者にも、場によって切り替えがきいていいかもしれません。ひとつくらいそういう場があってもいいのでは。少なくともやる前から否定するにはあたらないでしょう。
 また、選者側のハードルを下げる意味でも、メリットは大きいでしょう。口語文語どちらにもいえることですが、全ての作品をきちんと鑑賞し評価できるのかと考えると、得手不得手は否めないと尻込みをしてしまいたくなります。それが、いくらか緩和される…と思いたい。(自分が選者なことを思い出してちょっと弱気に...!!)AI選者を導入しているのも、その選者の敷居を低くする試みではないかと思っています。
 投稿者も選者も、まずは敷居を下げることで研鑽の場が広がっていき、そこから優れた歌人が生まれる可能性は大いにあると思います。以上は、とくに深水さんの意見を聞いたわけではない、わたしの考えです。

▶人間選者、淀美佑子としての抱負
 さて、わたしは〈口語新かな〉現代語部門の人間選者になります。せっかくの機会を楽しもうと思っています。コトバディアで過去のAI選者の講評を見ると、なかなかの精度で驚きますよね。あんまりAIが優秀なので、AI選者を悩ますような問題作が送られてこないかなとわくわくします。
 わたしの選歌基準としては、ちょっといびつでも独自性がある歌に甘いです。整った秀歌もやっぱり選んじゃうとは思いますが、それはAIでも選べるのかなというフェーズに入っていますよね。ちなみに当方、句跨り、破調も好物としております。ぜひとも色々な球種を投げて頂ければ、全力で拾いに行く所存です!人間だもの!いびつな選者かもしれませんが、できるだけ短歌の魅力を掘り起こせる選ができるようがんばります。
 あと、文語及び旧かな使いの歌人の皆様が炎上発言でお怒りなのは当然と思いますが、今こそ現代文語部門で、その魅力を爆発させてくださいませ。わたしも文語旧かなに挑戦して投稿しようかな。どちらにもふるってご投稿ください。よろしくお願い申し上げます!

追記:【現代語・自選3首】担当選者に決まりました。選者の負担軽減のため、担当を分けたそうです。よろしくお願いします。(2024/02/27)

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