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これぞ荒療治の真骨頂②~カッサ施術~

これはこの記事の続きです。

懐中電灯片手に外の闇の中に吸い込まれて行った友人Y。

まだロクな挨拶さえしないまま一人残された私は、愛想笑いを浮かべ会釈しながら小屋の中を見渡しました。

ゴミなのか、家具なのかわからないゴチャゴチャの山。
家族全員でベッドにしているっぽいビーチチェア。
(チェアというか、寝そべるようのフラットになるヤツ↓↓)

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Yが戻ってくると、ミイラのようなお爺ちゃん(以下秋先生)
は、おもむろに左手の人差し指と中指を伸ばした状態で、私を指差しました。

それが「脈を取るぞ」という合図のようでした。

秋先生の前にある、お風呂によくある低くて丸い
プラスティック椅子に座り、それより少し背が高い、木の椅子の上に紙ペーパーが一枚敷かれた所に腕を置いて脈を取ってもらいます。

中医(東洋医学のお医者さん)はみんな脈からその人の症状を診ます。
脈を取るだけで、身体がどんな状態にあるか、まさに
手に取るようにわかるらしいのです。

片手三か所ずつ、左右6か所で脈を取ります。
秋先生はタバコを片手に持ったまま首をかしげて、じ~っと脈を読んでいます。

「こりゃ、酷いわい。」と秋先生はカッカッカと笑いました。
「このコは6つの脈のうち4つが塞がってしまっとるわ。」
横に立っているジャージ姿の二人のおばちゃんが
秋先生の弟子コらしく、その二人に代わる代わる
と私の脈を取らせ、二人が「わ~、ホンマやね~」と言ってから、私にも
自分で押さえてみろ、と言います。言われた場所を
押さえてみると、確かに6か所の内、2か所だけ、かろうじて脈動を感じることができました。

「血が足りてないんじゃわ。」
と秋先生はそう言ってから、
「脈は、ココが詰まれば、首と腰と膝に来る。
ココが詰まれば肝臓に来る。ココが詰まれば記憶力が悪くなる。」
とその場所を指さしながら、今まで私が、老化や太り過ぎでなった事だと諦めていた、そして今まさに苦しんでいる症状を何も聞かないうちに、レントゲンの写真も何も見ないうちから次々に言い当ててました。

無題10

「こりゃあ後から火療やな。じゃ、とりあえず上で」
と秋先生は私に反応する時間も与えないまま、友人Yと上に上るように
私を促しました。

いよいよ治療・・・。ゴクッ

木造の板を渡しただけの階段をギシギシ上ると、
二階も全部秋先生の手作りらしく、床はベニヤ板を
何枚か貼り合わせて補強してあるらしく、
歩くと、床がギュシギュシと派手にたわみます。

お~、こっえ~。床抜けないでしょうね・・冷や汗

でも治療をする弟子コのおばちゃん達二人もかなーり重量級。
このおばちゃん達が大丈夫なら私も大丈夫だな、と失礼な安心をしていると

「はい、じゃ、ブラも取って、パンツ一丁になって。」
Yからは、「治療の為に長袖の服を着てくるように」
という注意メールをもらってた割にはセミヌード・・。

スリムな友人Yの隣で、ぶよぶよのセミヌードをさらけ出し、
それぞれのビーチチェアに寝そべった私達。

寝そべると、おばちゃん二人が私とY、一人ずつに分かれて就きました。
「痛みを紛らわすのに、カーテンを少し開けてあげるね。」
友人Yと私を仕切っているカーテンを肩が見えるくらい
まで開けてくれました。

(ん?何だ何だ?痛みを紛らわせるのにカーテンを開ける??!)

「3時間だから、23:00までね。」

(・・え! 3時間?! 3時間も? 仕事帰りに急いで来たから、ご飯も食べてないんですけど。。)

私は空腹でした。

・・・でも、お腹が鳴りそう、とかそんなしょうもない事を考える心の余裕があったのは、始まる前まで。

山に生えてる草から抽出したと言う油をおでこに垂らすと
おもむろに指の腹でゴリゴリマッサージ。
「いやいやいやいや!そんなに押したら目玉が中に落ちるよ!?」と
叫びたくなるくらいすごい力で目の上をグリグリ。

目ん玉の上ってこんなものすごい力で押さえてもいいんだ、と目玉が内側に落っこちそうになりながらも目からウロコが落ちました。


「そんなに押したら鼻の骨がっ、頬がっ・・!」
とにかく痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ、ア~タタタタタタタタタタタタタ!(←余りの壮絶な痛みに北斗の拳のケンシロウ状態)

「このコひどいわね、そこら中詰まってるわ。」
と事も無げにグリグリ、ゴリゴリを繰り返すおばちゃん。
それも、目をゴリゴリされてる時は、てっきり指の腹で押されてるのかと思っていたら、何とラーメンを食べるあのレンゲでゴリゴリされていました!

つまりこれが、私にとっての初めてのカッサだったのです。

耳の下、顎の付け根をレンゲの柄の頭でググググ~っと
押された時は、マジで顎が外れるかと思いました。

抑揚のないすごい馬鹿力のまま、首、脇、腕。
すっ、筋が切れるっ!!血管が潰れるっ!!

開始後10分も経たないうちに、
「もう駄目だ!絶対二度と来ない。すごい効果かも
しれないけど、この痛みだけでも十分人が死ぬレベル。」
と心で毒を吐きまくっていました。

途中でホントに
「ちょっと、この痛さは絶対異常やって!」と
ぶちキレそうになりましたが、友人Yが
隣で同じように「アイヤー好痛阿(めっちゃ痛い~)」と
わあわあ言っていたので、私の身体が悪いから特別に痛いわけじゃなく、これをされたら誰でも痛いんだなと少し冷静になれ、
「ま、今日のところは友人Yを立てて」
と激痛の中 悟りに到達。

腕の裏のやらかいトコ、脇、喉の下(肋骨の真ん中)
足全体は痛くてガチで意識が遠のきかけました。

「足は特にひどいよ」とおばちゃんがゴリゴリの手を緩めることなく話しかけてきます。私はひたすら「うわあっ!ああああっ!」とわめかずにいられないので、おばちゃんが何を言ってもスルーです。

そして、何気に一番痛かったのはお尻!!
肉が厚くて一番そういう刺激には耐えられそうなのに、
「坐骨神経が乱れているわ」
と言われる私のお尻は、レンゲで1ゴリ(←もはや単位になってる)されただけで、
「はうううっ!」
心臓停止の人に電気ショックを与えたような衝撃が身体を走り、私の身体はビーチチェアの上を飛び跳ねました。

いや、もう、尻へのレンゲ攻撃の破壊力たるや、尻が割れるどころか、内部で四方八方に裂けまくってる感じです。

エビゾリ、のけぞり、ひぃひぃむせび泣きながら3時間、ただひたすら耐え続けました。

続く

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