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セックス、その前に~①性感染症にご用心~

3月も半ばになり、トレンチコートを羽織る人が増えてきました。
暖房も必要なくなり、電気代が節減できて家計が助かっております。
本格的に春になりましたね。
 
私の好きな言葉をお届けします。

「君子危うきに近寄らず」
(日本のことわざ)


性感染症とは?


「性行為で感染する病気」を総称して、性感染症(STI:Sexually Transmitted Infections(Deseases))といいます。

ウイルス、細菌、原虫などが、性器、泌尿器、肛門、口腔などに接触することで感染します。

しかし、症状が軽かったり、なかったりすることもあり、気がつかない間に感染していることがあります。


性感染症に該当する主な病気


1. 梅毒


(1)概要
梅毒は梅毒トレポネーマという細菌が感染することで起こる感染症です。性行為で粘膜や皮膚の小さな傷から感染します。

感染すると、性器や肛門、口にしこりができたり、全身に発疹(ほっしん)が現れたりしますが、一旦症状が消えるため治ったと間違われることがあり、発見が遅れる危険があります。

免疫はできないので、何度も感染します。

検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。

なお、梅毒はHIVの感染リスクを高める可能性があります。

東京都のデータによれば、梅毒患者報告数は男女ともに増加しています。

2022年には、1999年に感染症法に基づく調査が始まって以降、最も多い報告数(3,677件)となりました。

男性は20歳代~50歳代、女性は20歳代で増えています。


(2)症状
梅毒は、感染したあと、経過した期間によって、症状の出る場所や内容が異なります。

・第1期
感染後約1か月で、感染した場所(性器、肛(こう)門、口など)に、できもの、しこり、ただれなどができます。治療しなくても、数週間で症状は消えます。

・第2期
感染後3か月程度経つと、手のひらや足の裏など全身に発疹ができます。治療しなくても、数週間から数か月で症状は消えます。

・潜伏梅毒
症状がないまま何年も経過することがありますが、皮膚や内臓で病気は静かに進んでいます。

・神経梅毒
数年~数10年後に、心臓、血管、神経の異常が現れることがあります。


(3)感染経路
菌を排出している感染者との粘膜や皮膚の接触を伴うセックス(膣性交、肛門性交、オーラルセックス)などで感染します。妊娠中に感染するとお腹の赤ちゃんに感染させる可能性があります。

自分だけが治療してもパートナーから再感染したり、その逆もあるので、パートナーも完全に治すことが必要です。

妊娠中に梅毒に感染すると、お腹の赤ちゃんに感染してしまうことがあります。お腹の赤ちゃんに感染すると、死産、早産、新生児死亡、障害をもって生まれることがあります(先天梅毒)。

なお、初期の妊婦健診で梅毒検査が行われますが、健診後に感染する場合もありますので、気になることがあれば、主治医に相談しましょう。


(4)検査
梅毒トレポネーマの検出または血液検査で診断します。検査は感染したと思われる時から4週間以上経過してから受けることが必要です。

東京都の場合、都内の保健所や都の検査室(新宿東口検査相談室、多摩地域・検査相談室)で、保険証不要(無料・匿名(とくめい))で受けられます。

クリニックや病院の場合は、その医療機関ごとに費用が違いますので、受検したい医療機関へ直接お問い合わせください。


(5)治療
抗菌薬が有効です。

菌を死滅させることはできても、臓器などに生じた障害を元に戻すことはできません。早期の治療が大切です。

パートナーも検査を受け、感染していたら治療することが重要です。


2. HIV/AIDS


(1)  HIV感染とエイズ(AIDS)の違い
・HIV感染
体の中にHIV(ヒト免疫不全ウイルス)が存在している状態をいいます。自覚症状がほとんどないので、本人が気づくことは困難です。
 
・エイズ(AIDS)
エイズとはHIVによって体の免疫力が低下し、その結果として、日和見(ひよりみ)感染症※など様々な合併症が出た状態をいいます。

ただし、その場合も合併症の治療を行い、また、HIV感染の治療により免疫力を回復させることができます。

※日和見(ひよりみ)感染
免疫の力が弱くなったために、普段なら病気を起こさないような弱いカビ、細菌、ウイルスなどの病原体による症状を抑えきれずに、感染症が起きることをいいます。
カンジタ症、ニューモシスチス肺炎等の23の病気が定められています。


(2)  症状
・急性期
HIVに感染して2~4週間経過すると、発熱、咽頭痛、筋肉痛など、インフルエンザ様の症状が出てきます。これらの症状は多くの場合、自然に消えます。
また、無症状のこともあります。

・無症候期
体の免疫力で、ウイルス量はある一定のレベルまで減少したところで安定し、その後、数年~10数年程度は症状がなく経過します。

・エイズ発症期
治療をしないでいると、HIV感染により免疫力が低下し、健康な時にはかからない弱い病原体によってもかかる日和見感染症(ニューモシスチス肺炎や食道カンジダ症など)や悪性腫瘍の症状が現れます。
※結核の発症により、HIV感染やエイズが判明することがあります。


(3)  感染経路
HIVは、血液、精液、膣(ちつ)分泌液に多く含まれていて、粘膜や傷口から感染します。

主な感染経路は、性行為感染、母子感染及び注射針の回し打ちなどの血液を介しての感染となっています。


(4)  予防

a. 性行為による感染予防

・ノーセックス(NO SEX)・・・セックスをしない
不特定多数や見知らぬ相手とは性行為をしないといったような、ノーセックスも予防のための選択肢のひとつです。

・セーフセックス(SAFE SEX)・・・安全なセックス
今は特定の相手しかいなくても、過去に他の人と性的接触があれば、過去のパートナーからの感染の可能性があります。
ふたりとも感染がないことを確かめておくことが大事です。

・セーファーセックス(SAFER SEX)・・・より安全なセックス
コンドームを正しく使うことが感染の予防に有効です。


b. 早期発見・早期治療による感染防止

早期発見・早期治療を受けることにより、体内のウイルスを減らし、他人への感染の恐れを大幅に低減することができます。

 
c. 母親から赤ちゃんへの感染の予防

妊娠前、または妊娠中のできるだけ早い時期に感染の有無を確認し、出産前から適切な医療を受けることにより、赤ちゃんへの感染確率を低くすることができます(1%以下)。

 
d.血液感染の予防

・注射の回し打ちはもちろん、麻薬、覚せい剤などの薬物を使用しない。
・血液がつく可能性があるカミソリ、歯ブラシ、ピアスなどを共用しない。
・血液が皮膚や衣服などについたときは、流水でよく洗い流す。
※血液には、HIVに限らずいろいろな病原体が含まれている可能性があります。


(5)  検査
血液検査により診断します。検査は感染したと思われる時から、60日以上経過してから受けることが必要です(即日検査は原則90日以上)。

(6)  治療
服薬治療により、エイズの発症を抑えられることから、感染を早く知って、治療を始めることが大切です。

HIV感染症を根治する薬はまだ開発されていないため、服薬の継続が重要です。

治療により、ウイルス量が検査で測定できないほどのわずかな量にまで抑えることができ、他の人への感染の可能性をとても低くすることができます。


3. 性器クラミジア感染症


日本で最も多い性感染症です。
自覚症状がない場合が多く、感染に気付かないことがよくあります。

しかし、進行すると、不妊症や母子感染など様々な病気の原因になるので、きちんと治療する必要があります。

免疫はできず何度も感染します。


(1)  症状
a.   女性
普通は無症状です。
症状があっても、おりものが少し増えるとか、軽い生理痛のような痛み、不正性器出血などですが、黄色い濃いおりものが出ることもあります(進行すると→卵管炎、腹膜炎、子宮外妊娠、不妊症を起こすことがあります)。


a.   男性
症状は軽く、尿道がむずかゆくなったり、排尿の時に軽い痛みがある程度です。尿道分泌物による下着の汚れで気付くこともあります。
治療しないと精巣上体炎、男性不妊症を起こします。

 
b.   妊婦
感染すると流産・早産の原因になることがあります。

 
c.   新生児
母親が感染していると、出産時に新生児に感染し、結膜炎や肺炎を発症させることがあります。


(2)  感染経路
菌は、喉(のど)、直腸、尿にも出るので、口、肛(こう)門、尿を使ったセックスも危険です。
 
(3)  検査
尿や分泌液、おりもの、咽頭擦過物(いんとうさっかぶつ)、咽頭(いんとう)うがい液の遺伝子学的検査で診断します。
血液クラミジア抗体を調べる検査は、過去に感染し、治ゆした人も陽性となることがあります。
 
(4)  治療
抗菌薬が有効です。決められた期間きちんと服薬しないと菌が残ることがあります。必ず医療機関で診断を受け、パートナーも一緒に完全に治しましょう。
 


4. 淋(りん)菌感染症


男性にはすぐにはっきりした症状が出ますが、女性は症状に気付きにくく、進行して初めて分かることがよくあります。
免疫はできず何度も感染します。

(1)症状
 
a.   女性
男性よりも症状に気付きにくいです。
症状がある場合は、緑黄色の濃いおりものや、尿道から膿(うみ)が出ます。(進行すると→子宮内膜炎、卵管炎、腹膜炎、子宮外妊娠、不妊症)

b.   男性
尿道のかゆみや熱っぽさから始まり、粘液や黄色の膿(うみ)が出ます。
排尿時の痛みがひどくなり、ペニス全体が腫(は)れ上がるほどの激しい症状が出ることもあります。(進行すると→尿道狭窄(きょうさく)(尿道が狭くなる)、精巣上体炎、不妊症)

c.   新生児
母親が感染していると、出産の時に新生児に感染し、失明や関節炎を起こしたり、命に関わる状態になることもあります。


(2)  感染経路
感染力は非常に強く、菌は、喉(のど)、直腸、尿にも出るので、口、肛(こう)門、尿を使ったセックスも危険です。

喉(のど)では症状がないまま他の人に感染させることがあります。
膿(うみ)や分泌物の付いた手で、目をこすると、結膜炎になることもあります。


(3)  検査
尿や分泌液、おりもの、喉(いん)頭擦過物、咽喉(いん)頭うがい液を採って、培養検査をします。尿や分泌物で淋(りん)菌DNAを検査する方法もあります。


(4)  治療
抗菌薬が有効ですが、耐性の淋(りん)菌も増加しています。自己中断は耐性菌の発生をまねくため、必ず医師の指示に従い、パートナーも一緒に完全に治しましょう。


5. 性器ヘルペスウイルス感染症


一度感染すると、ウイルスが体の中に住み続けて、何度も再発します。

(1)  症状
症状がないことが多いですが、性器に小さい水ぶくれやただれができることがあります。
激痛のため、排尿困難や歩行困難を生じることがあります。
治った後もウイルスは体の中に住み続け、疲労や抵抗力が落ちた時などに再発することがあります。

a.   妊婦
妊娠中には再発しやすくなります。

b. 新生児
母親が感染していると、出産時に新生児に感染し、致命的な症状を引き起こすことがあります。
ヘルペスに感染したことのある妊婦は、分娩(べん)方法などについて医師に必ず相談しましょう。


(2)  感染経路
性器、口、口唇周囲、肛(こう)門などから感染します。無症状でも性器の粘膜や分泌液等にウイルスの排出がみられている場合は感染します。

単純ヘルペスウイルスには、1型と2型があり、性器ヘルペス感染症は、主として2型によって起こされます。

主に1型で起こる口唇(こうしん)ヘルペスのウイルスも、オーラルセックスなどで性器にも感染することがあります。

口唇(こうしん)にヘルペスの症状が出ている時は、オーラルセックスなどは避けましょう。


(3)  検査
水ぶくれを破って、内溶液に含まれる感染細胞の検査、血液検査で診断します。


(4)  治療
抗ウイルス剤の内服や軟膏(こう)、抗炎症剤、鎮痛剤などで治療します。
必ず医療機関で診断を受け、パートナーも一緒に完全に治しましょう。


6. 尖圭(せんけい)コンジローマ


外陰部に小さな尖ったイボができる病気です。イボができないこともあり、痛みやかゆみなどの自覚症状もほとんどないので、感染に気付かないことがあります。

免疫はできず何度でも感染します。再発がしばしばあります。


(1)  病原体はHPV(ヒトパピローマウイルス)

尖圭(せんけい)コンジローマの他、子宮頸がんの原因にもなるウイルスです。

HPVは100種類以上あり、このうち約15種類が子宮頸がんの原因となると言われています。

HPVは主にセックスにより感染し、女性の約80%が一生のうちに一度は感染するという、ごくありふれたウイルスです。

感染は一時的で症状もないことが多く、自然に消えることがほとんどですが、まれに子宮頸がんの原因となるHPVの感染が長期間持続すると、その一部が、数年から十数年後に子宮頸がんを発症すると考えられています。

HPVのうち、子宮頸がんの原因となりやすい2種類(16型、18型)のウイルスに対しては、子宮頸がん予防ワクチンを接種することで予防効果があると報告されています。

ワクチンは、すでに感染しているHPVを排除したり、子宮頸がんの進行を遅らせたりする効果はありませんので、感染前に接種するのが最も効果的です。

また、ワクチンだけで、子宮頸がんを完全に予防できるわけではありませんので、定期的に子宮がん検診を受け、早期発見を心がけることが大切です。

HPVワクチンについては、厚生労働省ホームページ「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」をご確認ください。

ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~|厚生労働省 (mhlw.go.jp)


(2)  症状
小さな尖ったイボは外陰部から肛門や膣(ちつ)内にもできて、集まると小さなカリフラワー状になります。

普通は、自覚症状はありませんが、時々かゆみや、セックスの時に痛みを感じることもあります。ウイルスに感染してもイボができないこともあります。


a.   妊婦
妊娠中には、イボが大きくなることがあります。

b.   新生児
母親が感染していると、出産時に新生児に感染し、喉頭乳頭腫などを発症させることがあります。


(3)  感染経路
ウイルスはイボの中に多く、セックスの時に皮膚や粘膜の微小な傷から進入します。


(4)  検査
特徴的なイボを確認することによって診断します。


(5)  治療
外科的治療や薬物塗布を行います。外科的治療法としては、切除、電気焼灼(しょうしゃく)、液体窒素による凍結療法、CO2レーザー蒸散などがあります。
必ず医療機関で診断を受け、パートナーも一緒に完全に治しましょう。

 
性感染症は、他に、トリコモナス症、性器カンジダ症、A型肝炎、B型肝炎、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルスI型)などがあります。


参考資料:東京都福祉保健局ホームページ
     厚生労働省ホームページ


最後まで読んでいただきありがとうございました。


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