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唯一無二のブックレビューの書き方⑨

続続・「日記」とは? 人生は形を変えて物語に現れる


前回は、「日記」の工程の1つ目である「個人的な経験」を書くことについてお伝えしました。

「場面」は、読み手が特に感動したシーンをピックアップする工程です。
そこで、自分がどうしてこのシーンに感動したのか、ということを考えた時に、そこにはピックアップしたシーンと重なるような「個人的な体験」があるのです。

「こういう経験、私にもあった〜」
「わかる〜こういう人いるよね〜」

また、実際の体験でなくても、「精神的な体験」が物語と重なることもあります。

「この主人公の気持わかる〜」
「この登場人物、私と性格似てるかも〜」

実際の体験でも、精神的な体験でも、物語に強く共感する瞬間があります。それが「感動の正体」であり、「物語の中に自分の人生を見つけた」つまり「物語を旅している」状態です。

架空の物語であっても、自分とはかけ離れた世界の話であっても、私たちは「自分」と「自分以外の存在」を重ね合わせることができます。
本来は別々のものが重なり合った瞬間に生まれるのが「感動」なのだとも言えます。

さて。
このままでは「共感できないものには感動できないのか」というお声を頂いてしまうかもしれません。
ざっくり言ってしまうと、そうです。
「共感」=「自分の人生との重なり」を感じないことには、人は感動しないのです。
(なので、誰かを説得する際に「共感してもらう」ことは非常に有効です)


そして「共感」にも様々なバリエーションがあります。

たびたび登場してもらっている、Aさんの場合はどうでしょうか。

Aさんには「親から望まない婚活を勧められている」という「個人的な経験」があったために、「貴公子たちとお見合いをさせられている」かぐや姫と自分を重ね合わせました。

しかし、かぐや姫とAさんには大きな違いがあります。

Aさんは、親から婚活を勧められていることに対し、不満を持ちつつも渋々従っている様子が見て取れます。
それに対し、かぐや姫は「貴公子たちに無理難題を吹っ掛けて蹴散し」ています。

たくましい。
かぐや姫は(婚活という場面において)Aさんより遥かにたくましいです。

Aさんは、かぐや姫と自分は「似た環境にある」ことを感じつつも、自分よりもきっぱりした態度をとることのできるかぐや姫に憧れを感じています。

自分とまったく同じだ、と思うことだけが共感ではありません。
「似ているけど、ここは違うな」と思うことも、共感のバリエーションの1つです。

Aさんは「かぐや姫」のことを「私に似ているけど、私よりずっとたくましい人。私もこうなりたいな」と思っています。
つまり「共感」の「未来ver.(自分のなりたい形)」を覚えて感動しているのです。

未来ver.ということは、過去ver.や現在ver.の共感もあります。

例えば『竹取物語』が、かぐや姫がAさんと同じく貴公子たちとのお見合いを受け入れながら悶々とするというストーリーであったとすれば、Aさんはそこに「共感」の「現在ver.(今の自分と同じ形)」を感じることになります。
そして、自分と同じ悩みを抱えるかぐや姫にこそ、感動するということだって十分考えられます。

他にも、昔の恋人と同じ名前の登場人物が出てくるラブストーリーを読めば、そこに「共感」の「過去ver. (かつての自分と同じ形)」を重ねて、湧き上がる感情があるかもしれません。

他のパターンとしては、自分と同じ職業の登場人物が罪を犯す物語を読むことで、「共感」の「否定ver.(自分はなりたくない形)」を見ることもありそうです。

「共感」の
「未来ver.(自分のなりたい形)」
「現在ver.(今の自分と同じ形)」
「過去ver. (かつての自分と同じ形)」
「否定ver.(自分はなりたくない形)」

これらは全てが自分の人生から発生していて、心が動く根拠となるものです。
(上で挙げたのは単純な例ですが、実際にはもっともっと複雑な「自分しか知らない個人的な経験」が感動の根拠になることもあります)

「親から婚活を勧められている」「同じ名前の恋人がいた」「主人公と同じ職業に自分も就いている」など、レビュアーの人生の数だけ、感動の根拠となる「個人的な経験」も無数にあります。
そして、その「個人的な経験」と「物語」を照らし合わせた時に、どう「共感」するかというパターンも無数にあるのです。

1冊の本を読んで「感動した」とき、その背景にあるのは「共感」です。
そして「共感」したということは、読み手の人生の「個人的な経験」と「物語」が、どこかで一致したということです。

これが「自分の人生を生きながら物語の世界を生きるようになった状態」つまり、前回お話した「物語を旅する」ということです。

実は物語の旅をすることによって、旅人である読者は決定的に「姿を変えられて」しまいます。元の自分には戻れない旅路なのです。

次回は、旅人が旅の道中に手にする「あるもの」についてのお話です。

【結論】

Q.「感動」の正体とは?

A.「共感」であり、様々なバリエーション(現在・過去・未来・否定など)が存在する。「共感した」=「物語と自分の人生に一致点を見つけた」時に「物語の旅」が始まる。

→⑩続続・「日記」とは? 旅人は新たな目を手に入れる

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