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唯一無二のブックレビューの書き方⑧

「日記」とは? 物語を旅するということ

唯一無二のブックレビューの書き方も、そろそろ終盤です。ブックレビューは「前座」「場面」「日記」の3つのパートで完成することを踏まえた上で、前回までは「前座」「場面」の書き方をお伝えしてきました。

この回からは、最後のパートである「日記」の書き方についてお話したいと思います。

ブックレビューなのに日記? と思われるかもしれないのですが、要はそれぐらい「個人的な経験」と「個人的な感情」を書くべきだということです。そして、それこそが私達の書くブックレビューを、Amazonでは読むことの出来ない「唯一無二」のものに押し上げるエンジンとなります。レビューにおける、真っ赤な心臓なのです。

それでは「日記」のパートを、「経験を書く」「感情を書く」の2つの段階に分けてお伝えしましょう。

【日記】①「経験」を書く

第4回で、「場面」の工程では「何がこの本の魅力なのか」を掘り下げる行為が必要だとお伝えしました。「主人公が格好いいところ」「素敵な魔法がたくさん出てくるところ」などなど、1冊の本と1人の人間が出会った時に生まれる様々な感動があったと思います。

そして、ここで考えてほしいのです。

どうしてあなたは「この本の、この場面」に心動かされたのでしょうか。同じ本を読んでも、全く違うところに感動する人もいます。それどころか、同じ本を読んでも何も感じない人すらいるのです。不思議だとは思いませんか。

それは、「わたし」と「あなた」が別の人間だからです。当たり前のことですが、しかし非常に大切なことでもあります。他の誰でもない「あなた」を形作っている「何か」が、感動という感情を生むのです。

この「何か」というのは、あなたの過ごしてきた時間と、そこから感じたこと、学んだことの集大成、つまりあなたの「人生」です。他の誰でもなく、あなたが今まで送ってきた「人生」が、1冊の本の1つの場面に激しく反応した、これが「感動の正体」です。

それでは、どんな時に「人生が激しく反応する」のでしょうか。

第3回で登場した、『竹取物語』の「かぐや姫」がプロポーズを断りまくるシーンに感動した、Aさんを例に考えてみます。

同じ『竹取物語』を読んでいても、かぐや姫のプロポーズお断りシーンに感動する人は少ないでしょう。
しかし、Aさんには「親から婚活を勧められている」という経験があったために、お断りシーンを読んだ時に、かぐや姫と自分の姿が重なって感じられたのです。
そして、自分の人生が、かぐや姫の人生に形を変えて『竹取物語』の中に書かれているように感じたからこそ、感動したのです。

このように、「場面」で選びだしたシーンと重なる、自分の人生の中の「特定の出来事」こそが、「日記」で書くべき「経験」なのです。

感動の背景には、必ず自分の「経験」があります。
数あるシーンのなかで、どうしてここを「場面」としてピックアップしたのか、その答えを自分の人生の中から探して下さい

この回のタイトルには「物語を旅するということ」と付けました。
実はこれは、私が本を読む時に常に心に置いていることです。

感動したということは、過去の自分と重なる「何か」を本の中に見つけたのだというのが今回のテーマですが、これは「自分の人生が形を変えて本の中に書かれていた」とも言い換えられます。

このことを私は「物語を旅する」と表現しています。

自分の過去と本の内容がリンクした結果、自分の人生を生きながら、物語の世界も生きるようになった瞬間のことです。

このように、いくつもの世界を同時に生きることを「豊か」というのではないでしょうか。
そして、多くの人に「ここに私の人生が書いてある」と思わせる本が後世に残るのでしょう。沢山の人に旅をさせた本こそが傑作なのです。

『舞台のうえで演じられる悲痛なできごとや、こっけいな事件に聞きいっていると、ふしぎなことに、ただの芝居にすぎない舞台上の人生のほうが、じぶんたちの日常の生活よりも真実にちかいのではないかと思えてくるのです。みんなは、このもうひとつの現実に耳をかたむけることを、こよなく愛していました。』(ミヒャエル・エンデ『モモ』より)


今回は、「日記」の工程の1つ目である「経験を書く」ことについてお話をしました。
「感動した」ということは、自分の人生(経験)と重なるものを、物語の中に見つけたということです。

1冊の本の中に自分の人生を見つけた瞬間、物語の旅が始まるのです。

人生と物語の「重なり方」には様々なパターンがあります。
次回は、経験と物語はどのように重なるのか、についてお話します。


【結論】

Q.「日記」で書くべき「経験」とは?

A.「場面」でピックアップしたシーンに重なる、自分の人生に起きた特定の出来事。感動の根拠となる個人的な体験。

⑨続・「日記」とは? 人生は形を変えて物語に現れる

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