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9月10月のトマトが高い理由【八百屋から見た“食”no.36】

「びっっっっっっくりするくらいトマト・ミニトマトが高い」とのニュースが駆け巡っています。

戦争/肥料/輸入危機といろいろ理由をつけたがる人がいますが、現在のトマト高騰については単純な理由。

9月・10月は、1年で最もトマトが流通しない(栽培リスクが高く流通量が少ない)期間。簡単に言えば元から季節外れ・旬外れだからです。

今年ならではの理由もあります。
①7・8・9月の全国的な猛暑で、1カ月早いペースで取り切ってしまい、(10月まで収穫予定だった)夏トマトの樹勢が弱まり、9月初旬から流通量が一気に落ち、今なお長引いていること。
10月11月以降に流通する冬トマト一番手の生育が、同様の猛暑で(苗や花が)育つ前に枯れて植え直し、1カ月以上後ろにずれたこと。

9月10月の今現在、売場に並ぶ(≒収穫する)トマトは、“あの猛暑”のなかで育ったとイメージしていただけるとわかりやすいです。オクラ・ゴーヤー以外の実野菜は、30℃以上が続くと樹勢が弱まります。35℃以上連発だった今年はなおのこと。ただでさえ流通量の少ない9月10月が壊滅的に少なくなったことは事実で取引価格にも表れています。

◆一般的な大玉トマト L20玉 (握りこぶし大≒割と大きめの玉)
青果市場価格:平常時:L20玉1ケース 2200円前後
例年9月10月:同1ケース4500円前後(平時の2倍)
今年9月10月:同1ケース7500円前後(平時の3倍以上)
       ↓
市場で仕入れた場合、1玉300円で売っても赤字の状況です。

東京青果:野菜相場表・野菜入荷数量(営業日毎更新)より

※産直仕入中心の当店では、生産者に直接発注し送ってもらっていますが、発注した3割程度の入荷量です(例:20㎏発注→5-6㎏)
※水膨れ・乾燥・ひび割れも多発しています。味はとても良いです。

濃い味のミニトマト(当日の糖度9.8)
季節柄どうしても割れ玉が出やすいためPOPで掲示

“生のトマトが高すぎて(毎日使うのに)困る”とおっしゃる方もいますが、ないものはないです。今の時期こそ、トマトジュース・ピューレ・ホールトマトを活用してください。経済的かつ合理的です。

また、採れていないトマトを(10月中旬の市況)2玉680円で無理くり買うより、豊富に出回り価格が落ち着いている秋が旬のジャガイモ・玉ねぎ・かぼちゃ・れんこんを活用しましょう。秋モノ採れ始めたキャベツ・大根・人参・ブロッコリー・カリフラワーも選択肢に加えれば、予算を抑えた上で相当レシピの幅が拡がります。

植え直した冬春産地のトマトの生育も、じき追い付きます。11月末~12月初旬には九州/愛知/関東各地のトマトが出揃い、価格も落ち着きます。暖冬&安定出荷&冬の需要減も相まって、年明け1~2月はトマトがかなり余る状況(≒暴落)を心配するほどです。

季節外れの野菜が高いとごねるのはナンセンスです。
季節の野菜(≒豊富に出回る野菜)を中心に美味しくたべましょう。


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↓過去投稿:猛暑下の生育や流通について(ネギ・人参が高い理由)

↓過去投稿:目の前に並ぶ食材は、誰かの尽力のおかげ。

↓過去投稿:東京に満足に食材が届かなくなる日

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