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キャリアチェンジ:幹部自衛官から経営コンサルタントへの転職<入社後 編>(3/3)

自衛隊の幹部から民間の経営コンサルタントへの転職事例3部作の最終回は、転職した後についてです。自衛隊から民間企業、それもビジネスのど真ん中を扱う経営コンサルティング会社に入社をして直面したギャップや現在の思い、キャリアチェンジを考えておられる方々へのメッセージなどをお聞きしました。

「日本が繁栄する為に貢献する」という思いを実現する為に働くという理念と、自分が働きがいを持てる仕事をする為に、幹部自衛官から民間の経営コンサルティング会社への転職を成功させた島津大地さん(仮名/当時31歳)。

ただし、転職が成功したと言えるのは採用されることだけではありません。新しい会社に入社して活躍をするようになって初めて転職が成功したと言えるのです。

島津さんは、全く異なる職業に転職をして入社後は上手くいったのでしょうか?

入社後のギャップ

幹部自衛官を退官して、現職の経営コンサルティング会社に入社して感じたことは官と民の違いでした。特に、売上や工数管理(そのプロジェクトに時間をどれくらいかけるのか)の意識が大きく異なりました。

また、自衛隊と経営コンサルティング会社どちらの組織でも上司に言われたことをやるのは同じですが、現職の経営コンサルティング会社では上司からの指示が自衛隊でのそれと比べると明確ではないことに驚きました。更に、上司の部下への説明は自衛隊よりも現職の方が随分と少なく、一方で、自分の裁量がずっと大きいとのこと。

自衛隊では上司とはお願いをする相手でした。例えば、仕事で何かやりたいことがある場合は「自分は〇〇をしたいので、〇〇に話を通してもらえませんか」という感じです。

しかし、現職では上司とは自分が担当している業務の品質を上げる為のディスカッション相手とのことです。上司と議論をして示唆を得たいという気持ちだそうで、逆にこれが出来ないと話す時間がもったいないと感じてしまい、良くも悪くも会話する相手を選ぶようになりました。

苦労したこともあるそうで、スキル面ではパワーポイントやエクセルなどのPCスキルを早急にキャッチアップする必要がありました。

また、コミュニケーションの取り方も異なり、前職の様な会話主体ではなく、Eメールでの意思疎通(最近はチャット形式)が中心で対面でのコミュニケーション機会が大きく減ったそうです。転職したばかりの時は、自分は対面で話す方がEメールなど書面でのコミュニケーションよりも得意なのだと気づき、そして、しばらく苦労しました。

ただし、今は問題ないそうです。必要な時には希望する相手にディスカッションを依頼するなど、話したい相手とはより積極的に会話できるようになっりました。加えて、最近はコミュニケーションツールが使いやすくなり、従来のEメールでのやりとりよりも格段に情報の共有もやりやすくなったとのことです。

今後の目標

上記の様に入社後はギャップを感じてしばらく苦労をしてきた島津さんですが、スキル面はキャッチアップして、環境にも慣れて今はプロとしてプライベートも含めて充実した日々を過ごしておられます。加えて、プライベートでは結婚もして幸せそうです。

そして、今後の目標をお聞きしたところ「まずは今の仕事で取り組んでいるプロジェクトを成功させ、且つ、現在取り組んでいる分野での実績を積むことに全力を尽くす」そうです。それによって、この分野では自社ひいては自分が第一人者と言われるくらいにしたいとの意気込みです。

防衛の前線で体を張ってきた島津さんらしい現実的でリアルな目標ですね。きっと遠からず実現をされるのでしょう。

転職を検討している人へのメッセージ

自衛隊から民間の経営コンサルティングファームに転職をして、その後ご活躍をされている島津さんに、転職を検討している人々へのメッセージをお聞きしました。

すると、意外ですが、後悔していることもあるそうです。

それは、前職にいた時に「出来ないと諦めていたことを、せめてトライはしておくべきだった」とのことです。

例えば、業務の改善提案については、自分の階級やポジションでは担当しない提案だとしても(自衛隊では階級やポジションでの役割が民間以上に厳格です)、少なくとも何らかの意見の表明はしておくべきだったとお考えでした。発信していれば、運が良ければ理解ある上司に伝わったかも知れないし、転職をしなくてもやろうと思っていたことが出来たかも知れない。どうせ出来ないと思い込んでいたが、やりようはあったかも知れないと今は思っておられるそうです。

当時やろうと思っていた提案は前職にいた時には出来たけれど、外部に移った今はもう出来ないとのこと。やりたいことが出来るor出来ないと言うゼロサムゲームでは無く、その組織にいるからこそ、小さな提案を実行できる。また(お客さんからも大きな成果を求められる)コンサルティングファームではクライアントの小さな改善なんて手掛けることは出来ません。これらは現職に移ってから気づいたそうです。

駄目だと思っていても、上司の中には誰か見ている人はいるかも知れません。また、出来ないかも知れないけれど、今出来ることは意外にあるかも知れません。そして、そんなことまで取り組んでやり切ったのであれば、今以上に納得感を持てたと思うとのこと。

「どうせ出来ないと決めつけずに、現職でやれることはトライだけでもしてみるべき」

それが大きなキャリアチェンジをした島津さんからのメッセージでした。

転職は清水の舞台から飛び降りるような気持ちでするものではありません。大切なことは納得感です。今の仕事で十分にやり切ったと思える時、他人から見れば大胆な行動でも本人は無理なく自然と新たな道に進んでいるものです。

島津さんは心残りな点もあると仰いましたが、転職をされた当時は真摯に自分に向き合いよく考えた上で行動をされていました。そして今もご自身に向き合うからこそ反省点を見出しておられます。島津さんはこれからきっと活躍をして、社会をより良いものへ変えていかれることでしょう。

(2022年2月14日)
山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士
プロフィール

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<公開済みのキャリアチェンジ・ストーリー>
キャリアチェンジ:幹部自衛官から経営コンサルタントへの転職<転職活動 編>(2/3)

キャリアチェンジ:幹部自衛官から経営コンサルタントへの転職<自衛隊の仕事編>(1/3)

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