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キャリアチェンジ:幹部自衛官から経営コンサルタントへの転職<自衛隊の仕事編>(1/3)

自衛隊の幹部から民間の経営コンサルタントへ転職をした人がいます。
全く異なる仕事へのキャリアチェンジをなぜ希望したのでしょうか。
そもそもなぜ一般の大学から自衛隊に入ったのか、自衛隊では何に苦労して、どんな仕事をしていたのか。転職を希望したり理由は何か。転職活動ではどのような壁があり、それをどう乗り越えたのか。転職後はハッピーなのでしょうか?

本テーマは、3回に分けてお届けしたいと思います。1回目は自衛隊の仕事から転職を志すまで、2回目は転職活動、3回目は転職後、について書きます。

幹部自衛官から転職を志す

島津大地さん(仮名/当時31歳)は一般の大学を卒業後、自衛隊に就職をして国家・国民の為に防衛に従事をしてきた現代のサムライです。

通常、自衛隊の幹部は一般の大学ではなく防衛大学校で専門的な訓練と勉強をしてから任官するのですが、島津さんは一般の大学から民間の企業に就職をするのではなく、自衛隊に就職をされました。なぜでしょうか?

島津さんにとって最も大切なことは「国が繁栄していること」でした。当時ご自身の就職先について検討していた時「国を栄えている状態にする為に直接貢献できる仕事は何か?」と真摯に考えておられました。

そんな時、ご友人で自衛隊の幹部候補生試験を受ける人がいて一般の大学からも自衛隊幹部になれることを知り、自衛隊もキャリアの選択肢になったのです。

そして、考えを進めました。経済も社会も平和であってこそ栄えます。国民一人一人が幸せに生きることが出来るのも、自らの生命や財産が守られて、安心して生活できることが必要です。そのような平和を維持する自衛隊の仕事に意義を見出されたのです。

また、親族に軍人がいたことも自衛隊を他の人々よりも身近に感じたのかも知れません。

入隊して直面したギャップ

晴れて試験に合格して幹部候補生として採用されました。まずは幹部候補生学校などで1年ほど初級幹部になるためのトレーニングを経て現場に配属されます。

島津さんが入隊して初めに感じた印象は「これまでの常識が通用しない。全然違うなぁ」でした。議論することよりもまずは従うことが重宝されることを目の当たりにして驚きました。ただ、集団生活は苦では無かったそうです。

また、幹部候補生学校では一人ではなく集団で生活し訓練を行います。大変なことも1人ではなくて仲間がいたからこそ乗り越えることが出来たそうです。こうして初めのトレーニングを無事に終えて現場の部隊に配属されたのです。

自衛隊での仕事内容

幹部候補生学校などでの研修を修了すると、初級幹部である3尉(=少尉)として部隊に配属されると少人数のグループを率います。ある一日のスケジュールを紹介すると次の通りです。

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~ある一日のスケジュール~

6時: 起床

7時: 会議

8時~12時: 訓練

12時~13時: ランチ等

13時~16時: 訓練

16時~18時: 部隊を運用する計画策定や報告資料作成

18時: 帰宅

(その他、24時間常に活動している状況もあるとのこと。)

尚、時間毎に仕事内容を記載はしましたが、実際には同時に幾つもの業務をやりながらになります。また、この時間割は日によって状況次第でどんどん変わります。
***

従事する作業だけでなく、同時に幾つもことを見ながら行うことが特徴です。担当する装備品の状態、部下の心身の状態、気象などを把握しながら活動します。

この様なハードな仕事をやりながら、島津さんはどんな気持ちだったのでしょうか?

自衛隊の仕事をやっていて思うことを聞いた時には、「日常の仕事で満足感を得ることはないけれども、突発的な事象やトラブルが発生した時に、色々な状況を勘案しながら判断を下して実行して結果が出た時に満足感が得られた」とのことでした。

例えば、荒天の中で活動をしている時に、その作業を継続するか否かを検討した時に中止することを判断(正確には「上官に進言」)した結果、誰も傷つかず、装備品も壊れずに済んだ時には、自分の判断が間違っていなかったと満足感を得たとのことです。

いやー、ギリギリの状況の中で頭をフル回転させて体を張っていますね。

キャリアで悩んでいたこと

こんなハードな仕事に取り組んでいた島津さんですが、普段の仕事では大きな悩みはなかったそうです。同時多発的に突発的なことが発生する複雑な状況で、冷静に判断を下して優先順位をつけて1つ1つ指示をしていくことは「自分には適性があった」そうで得意だったとのこと。凄いですね。

一方で、自分自身のキャリア形成を考えた時には疑問が生じたそうです。
この仕事を10年、20年と続けた先に自分はどんな結果を残せるのか。漠然とした思いを抱えておられました。

島津さんが考える実績とは大きく仕組みを変えることでした。例えば、人事制度や装備体系を整えること(例:技術革新を踏まえた装備や訓練体系の変更など)等でした。しかし、自分が自衛隊にいつづけたとして、将来的にその様なことができるように感じられなかったそうです。日常業務では立派な実績を出していても、そのことに価値を感じなかったのです。

更に、島津さんは国家や防衛について専門家やその立場にある人々と議論することが好きでした。そういった人々と出会うにはやはり東京がベストです。もう全国転勤はしたくないと思うようにもなりました。

その様な背景から、次第に転職を考えるようになったのです。

自衛隊の給料

ところで、幹部自衛官の給料はどの程度なのでしょうか?

島津さんの場合ですが、30歳で階級が1尉(=大尉)という民間企業における課長くらいの職位の時は、年収約640万円(月給40万円位+ボーナス80万円×2回)+諸手当でした。

また、職種や活動内容によっては[IK1] 月給が加算(例:30%)されることや、物価が高い都会に勤務する時(東京の市ヶ谷など)も手当がつくそうです。他には、官舎で生活していますので家賃が非常に低かったそうです。
これらを考慮すると国内の大企業の課長クラス程度の年収ですね。

ちなみに、戦闘機パイロットは普段から手当があるそうです。やはり辞められると防衛力に直結するからでしょうか。

以上、島津さんが自衛隊へ入隊してから、転職を希望するまでのストーリーをご紹介させて頂きました。

次回は、島津さんの転職活動についてお書きします。

(2022年1月31日)
山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士
プロフィール

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<公開済みのキャリアチェンジ・ストーリー>
キャリアチェンジ:化学メーカーから製薬会社の経営戦略部門へ
年収5000万円から500万円への幸せ転職:ファンドマネージャーから地方自治体の公務員へ
40代のキャリアチェンジ:メガバンクから製造業の経営企画室長へ
キャリアチェンジ:ECサイト運営会社の技術職から戦略コンサルタントへ
キャリアチェンジ:証券会社の投資銀行部門からベンチャー企業のCFOへ

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