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40代のキャリアチェンジ:メガバンクから製造業の経営企画室長へ。

今回のキャリアチェンジは新卒入社した銀行で20数年勤めてきたアラフォー過ぎの男性が地方の製造業へ転職するお話です。メガバンクの法人営業で実績を上げて活躍してきたものの、やりがいを十分には感じることが出来ていませんでした。本当にやりたいことは何かと考えて製造業の経営企画室長に転じました。どんな思いで、地方のオーナー企業へ転じたのか。年収は?ご家族の理解は?

銀行勤め20年以上で抱える思い

新卒でメガバンクに入行して20年以上法人営業のキャリアを歩んできた千葉勝信さん(仮名)。営業成績は抜群で若い時には支店長賞や本部賞などを数多く受賞。管理職に昇進してからも部下の育成に長け担当部署の業績は常に右肩上がり。特に、営業成績が低迷している部署を立て直す手腕は誰もが認めるほどでした。

ただ、誰にも言いませんでしたが心の中にいつも引っかかっている思いがありました。千葉さんが営業成績を上げることが出来るのは、これから成長する会社を見極めて融資を実行する能力でした。その陰で、経営が停滞しているクライアントについては、短期的に業績を改善させる余地がある会社を除いて、多くを切り捨ててきました。「金融の仕事とはこういうものだ」と自分に言い聞かせていましたが、心にはモヤモヤ感を抱えていました。

真剣に事業再生に取り組めば業績が改善するかも知れない企業でも、銀行が提供出来るのはファイナンスだけ。それは経営において大切なことですが、一部に過ぎません。その会社のことだけを考えれば、立て直す為にやることは沢山あります。自分が力になれることもありそうです。

しかし、銀行マンとして営業成績を上げる為には、その様な会社よりも、成長余地が大きく資金需要がどんどん拡大していく会社を重視すべきと割り切ってきたのです。それはそれで意味のあることに違いないと思いながらも、20年以上もそんな思いでやってくると、自分に進歩が無い様な気持ちになってきてモチベーションも下がってきました。そこに、自分よりも実績が劣る同期が先に昇進。そんなことに拘る千葉さんではないものの、ふと一体何の為に仕事をしてきたのかな?という思いが高まってきました。

転機となった大阪出張

その様な思いを抱えつつ大阪に出張した際に、3年前に銀行から転職した元後輩の武田君と晩飯に行って上記の思いを語りました。そうすると武田君が「そう言えば、千葉さんが御堂筋支店にいた時に担当してはった株式会社ヨシザワ(仮称)ですけど、ワンマン社長の吉澤さんがそろそろ引退したいけど、息子さんが頼りなくて心配やって悩んではりましたよ。業績もテコ入れが必要で。ええ会社ですし、助けてあげたらどうです?」と話してくれました。

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株式会社ヨシザワは社長の吉澤氏が興したカバンのOEMメーカーで、年商60億円、従業員100名ほどのオーナー企業です。業績は長らく頭打ちの状態ですが、自社工場の技術力には定評があり長い付き合いのクライアントを多数抱えている骨太の会社です。
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千葉:「そないか、あの吉澤社長が。ノウハウは全て社長の頭の中だけにある様な会社やったから、代替わりとなったら今まで社長の鶴の一声で動いていた会社を組織で機能する会社に作り変えんとあかんな」

武田:「そうですなぁ」

千葉:「当時はえらい世話になったし、灰汁が強いけど賢くて人情のあるおっさんやったなぁ。おっしゃ、ほな、今から連絡しよか」

そう言って千葉さんは、記憶していた吉澤社長の携帯電話番号
090‐○○○〇-4430(ヨ・シ・ザ・ワ)に電話しました。

元クライアントの社長と再会

すぐに電話に出た吉澤社長は数年ぶりにも関わらずフレンドリーで「おお、久しぶりやないか。今、祇園で飲んでるしすぐこいや」と相変わらず強引でした。千葉さんは「武田、すまん!」と言うと、すぐに大阪、梅田から阪急電車の特急で京都、河原町に向かい、祇園へダッシュしました。そして、90分後には吉澤社長に合流して、朝まで語り合い、社長の考えと悩み、会社の状況を聞き、自分の思いを話しました。その後も、週末毎にミーティングを重ねて、ヨシザワへの入社を決めたのです。年収は単身赴任する大阪での家賃補助を加えると銀行時代の1400万円から大きくは変わらなかったこともあり、ご家族の理解も得られました。

そして、ヨシザワの新体制は、社長の息子さんが新社長に就任し、千葉さんが新社長の片腕として新設する経営企画室長に就任することで合意しました。尚、吉澤前社長は会長に退いて当面は必要があればアドバイスするという立場になりました。

転職して1年後

あれから1年が経過して千葉さんに話を聞きました。銀行を辞めて単身赴任で勤務するヨシザワでの仕事は、前社長吉澤氏の頭の中にだけあるノウハウや経営データなどを可視化して、業務の仕組みを構築し続ける日々です。組織の整理も行いました。この際やっちまえと、改革を進めて、今までは会長が一つ一つ細かく指示をしていた経営から、業務プロセスが確立されていちいち社長が指示しなくても仕事が回るようになり始めたそうです。

「やっと普通の組織に近づいてきたところです」と千葉さん。

新社長、即ち会長の息子さんを真の社長に育成するミッションも順調な様です。今は、後見人、いや古女房の様に新社長を支えておられるそうです。「今までやってみたかったことが出来ている」とやりがいを実感をする日々だそうです。

山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士
プロフィール
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・参考ツール(無料):タイプ分け診断
・推薦図書一覧:キャリアの図書室


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