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京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

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タイトルの通りです。 本当はもうちょっと色々ありました。
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#48 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

#48 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

旅の第二交差点ーネパール⑤2009年1月のある日、ぼくの人生は大きく動いた。

2006年から京都に住み始めて以来、自分を罵り続けて3年が経ったある日のことだった。

その日は、これといった理由もなく、友達と京都東山の川沿いを歩いていた。

天気は大層な曇り、月は満月である。

なぜその日、その時機だったのかは分からないのだが、とにかくぼくはその友達に告げていた。

少し前から頭には浮かんでいたが

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#47 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

#47 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

旅の第二交差点ーネパール④振り返れば18歳の春、ぼくは現役で京都大学に入学していた。

中高一貫校に通い、高校二年生が終わるまでの5年間は、勉強などしたことがなかったのだが、高校三年生に上がると、大学進学のため必死になって勉強をするようになった。

もちろん、当時将来に対する展望などは何も持っていなかったが、ただただ京都大学に入りたい、という一心のみで、その後の10ヶ月を駆け抜け、見事に合格するこ

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#46 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

#46 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

旅の第二交差点ーネパール⑤ふと気が付けば、ぼくの旅は世界の宗教聖地というものに焦点が置かれていた。

スペインのカトリック聖地「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」

チベット仏教の聖地「ボダナート」

仏教の聖地「ルンビニ」

少なく見積もっても、三箇所を念頭に置いたぼくの世界旅行は、あたかも「聖地巡礼の旅」という様相を呈していたのだ。

そしてその時、一瞬で全身に鳥肌が立つような衝撃が体を走った

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#45 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

#45 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

旅の第二交差点ーネパール④スペインでやると決めた、徒歩による巡礼の練習も兼ねて、往路はほとんど小走りのようなスピードで向かったボダナートだったが、復路はそこでの体験を何度も反芻しながら、バスでのんびりと帰った。

日本人のオーナーが常駐している、タメル地区のゲストハウスに着いても、そのことが頭から離れず、その癒着を解くのには時間をかけるしかなさそうだった。

その晩は何をするでもなく、晩飯を摂った

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#44 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

#44 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

旅の第二交差点ーネパール③弱り果てて、日本から逃げ出し早二ヶ月、この時のぼくは、図らずも宗教的な何かに助けを求めていたのかもしれなかった。

チベット仏教というものに興味があったのだ。

もちろん、チベット仏教ということであれば、本場のチベットを訪れたくはあったが、そこを訪れることが困難であったことや、ルート上の問題から、書籍による少しの勉強の後に、カトマンズを訪れ、その風を少しでも感じようという

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#43 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

#43 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

旅の第二交差点ーネパール②確固たる理由はないが、やらなければいけないような、未知の使命感に襲われていたのだ。

そうなってしまえば、もう逃げることは出来なかった。

やるしかないのだ

そう心に誓ったのは、クアラルンプール郊外の公園で、独り物思いに耽っている時だった。

そして、その決断の翌日、早朝になるとぼくはネパールへ向かうべく空港へ向かった。

このように何か大きな決断をした後にやって来る、

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#42 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

#42 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

旅の第二交差点ーネパール①3月18日、久々に純粋な一人旅となり、寂しくもあり、清々しくもある空気を感じながら、ネパールの首都カトマンズに位置する、トリブバン空港にぼくは降り立っていた。

実はこの空港に降り立ったのは、ブルネイを出てから3日ほど後のことだった。

飛行機の乗り換えと、運賃との相談で、マレーシアのクアラルンプールで2日間を過ごした結果だ。

そして、この宙に浮いた2日間をクアラルンプ

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#41 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

#41 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

インターネット在りて、この冒険在りーブルネイダルサラーム⑥さて、そんな国ブルネイで何をして過ごしたかと言えば、まず食事ということのみが、行動意欲の大半を占めるようになっていた。

さらに、食事という枠を超えて、二人とも普段はあまり口にすることのない、「スイーツ」というものにまで手を出し、街中を彷徨うようになった。

とはいっても、そういった「スイーツ」すらも、あまり見つけることが出来ず、ひねもすフ

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#40 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

#40 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

インターネット在りて、この冒険在りーブルネイダルサラーム⑤つまり、簡潔にまとめてしまうと、気楽な個人旅行のバックパッカーにとっては、最も不向きな部類に入る国だということがわかったのだ。

しかし、ラブアン島での一件によって、事前期待値を上げてしまっていたせいか、ここでもまだ自分たちの信じたいことだけを信じようとしていた。

ブルネイ人の彼から聞いた話を信じ切ることが出来なかったのだ。

或いは、英

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#39 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

#39 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

インターネット在りて、この冒険在りーブルネイダルサラーム④この時のぼくたちは、ラブアン島での興奮と熱気に瘴てられて、深く考えることをやめていた。

何も知らない場所へ行くというのに、その国の性格というものを、直前に滞在した場所と同じようなものだろうと妄信していた。

ヒトは、自分が信じたいものを進んで選択し、それを信じているに過ぎないのである。
 

いつか教授が仰っていた言葉であるが、この時のぼ

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#38 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

#38 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

インターネット在りて、この冒険在りーブルネイダルサラーム③とうとう、冒険の地、ブルネイに降り立つ時が来たのだ。

ここから先も、インターネットに頼ることなく、必要な情報は現地の人から得ながら、この地を楽しむのだ。

と思うのも束の間、どこからともなく違和感を覚えたぼくたちは、ここがブルネイかと職員に尋ねてみると、違う、とのことだった。

ブルネイに行くには、船を乗り換える必要があり、ここは「ラブア

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#37 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

#37 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

インターネット在りて、この冒険在りーブルネイダルサラーム②自分たちにこれといった情報がないこと、そして他者による情報の自然流入が少ないこと、更に、着いてみるまでその国について調べてはいけないこと、この3点が条件だった。

そうして選ばれたのが、ブルネイダルサラームという国だ。

ボルネオ島北部マレーシア領の扁平な領土に、楔を打ち込むように位置しているこの国だが、日本国籍を有する人であれは、ビザの事

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#36 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

#36 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

インターネット在りて、この冒険在りーブルネイダルサラーム①登山を終えて、無事にコタキナバルの市街まで戻ってきたぼくと朋也は、早くも次の計画を実行に移そうとしていた。

その計画は、以前にバンコクで朋也や明日香と交わした、こんな会話に端を発していた。
(旅の第一交差点ータイ⑦)

 
『やっぱり同じ場所に行っても、人によってとか、時期によってとかで感じ方って全然違うから、もちろん、この観光名所は誰が

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#35 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

#35 京都大学を中退した医学部生が世界一周してみた

登山と亡き人ーマレーシア⑩そして、ぼくの登山より時を進めること、およそ3ヶ月後の201X年6月5日、ここボルネオ島のキナバル山付近で大地震が発生し、18名の方々が命を落とした。

その中には日本人男性も一人含まれていたとのことだった。

6月5日この時のぼくは、ウユニ塩湖で有名な、南米のボリビアという国に滞在していたが、記事をインターネットで読んで、思わず泣いてしまっていた。

ぼくが登山をした3

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