マガジンのカバー画像

エッセイ集

11
運営しているクリエイター

#エッセイ

ミニバンな距離がいい。

ミニバンな距離がいい。

人は、集まるほど存在を強めるのか。
人は、集まるほど存在が弱くなるのか。

私は、後者だ。
2人が、5人に。また10人へと増えるたびに、私は居場所を無くしていく。

誰であろうと、自分を見てくれることを期待するのは間違っているのだろうか。

冷たいことを言うと、私は「目的のない」集まりはあまり好きではない。
それは結局、”言い出したやつ”の空間だから。

人が多いほど、誰かがリーダーになって会話が

もっとみる
会いたくない病

会いたくない病

人に会うのが、怖くなるときがある。

何処にいても、”居場所”を見つけられない自分がいる感覚があって。

私はまた、”空(から)”に閉じこもる。

居場所不在なのはきっと、私が無意識に張るバリアのせいだ。
普段、俯瞰で自分なんか見つめないくせに、他人を俯瞰で観察している。

その時々に合わせて、私は”私”であり続ける。
「無難な人」になりきる。

いても、いなくても、変わらない存在でありたいとどこ

もっとみる
「おめでとう」は言いたくない

「おめでとう」は言いたくない

私が初めて妊娠した人の姿を見たのはきっと、弟が生まれる前だろう。
記憶には鱗片も残ってはいないけれど、確かにそこに妊娠した母の姿があったはずだ。

流行病というには酷く残酷なウィルスが世界に蔓延しているが、この時期に命を授かるという重みはそれぞれに圧し掛かるだろうと想像する。

今夜私が話すのはコロ助(コロナ)の話ではない。ある知人の物語だ。
"知人"とは上手く言ったものだが、私は"知人"ではない

もっとみる
出口を探せ!

出口を探せ!

緊急事態宣言が発令されてしばらくだけど、ふと思った。
友だちに会えなかったり、外に出れなかったり。
この状況って、大学受験の浪人期に似てるなあって。

勉強嫌いで、授業もろくに聞かないから高校では急激に学力が落ちた。
同じような人、いるかな。
私は中学までそこそこ普通の成績(中の下)で、そんなに真剣に勉強しないで上手いこと乗り越えてしまった人だ。

苦労せずに進むと後でそのツケが回ってくる。
その

もっとみる
物語ノックアウト

物語ノックアウト

物語を誘発するのはいつだって、「物語」であるものだ。
私は書き殴った文章を見て落胆する。
私の中にあった、”内なる嫉妬”や”秘めたる憎悪”、”伝えきれない愛情”とかいうごちゃまぜな感情は、何1つとして私の役には立たない。正確には、"私の文章には何の変化も生まない。"

1か月もの間noteに手を付けず、仕事を始めてから感じたことのなかった絶対的な”喪失感”に苛まれていた。浪人期にも、不登校時代にも

もっとみる

深夜のカーテン向こうは大切な何かを気づかせてくれる

夜、何を想うか。

20歳を超えて滅多に訪れることの無い静寂。
私は1人だ。灰色1色の部屋の内装が、カーテンを開けただけで淡い光に包まれる。

オオカミが出てきそうな夜だ。

人がこんなことを思うのは、1人になって広い世界を垣間見た時。

普段気にすることの無い、虚無な空、空気。

案外、私は嫌いじゃない。
一人暮らしをしていない身だと、もう当分訪れないであろう瞬間だ。

私は食い入るように、窓か

もっとみる
食卓は味の記憶だ

食卓は味の記憶だ

私の実家は、自慢じゃないが料理が美味しい。

父は、私が幼い頃何故か調理師免許を取ったらしく洒落た料理が得意だ。

母は、父との結婚当初は湯豆腐しか作れなかったらしい。
だが主婦というのは偉大なもので、いつの間にか多彩な家庭料理を作れるようになったという。

長男の私。
不器用で、中学の調理実習ではお米をまっくろくろすけにしてしまったこともある。
才能はないみたい。

次男。
まず、自分では何も作

もっとみる