「おめでとう」は言いたくない
私が初めて妊娠した人の姿を見たのはきっと、弟が生まれる前だろう。
記憶には鱗片も残ってはいないけれど、確かにそこに妊娠した母の姿があったはずだ。
流行病というには酷く残酷なウィルスが世界に蔓延しているが、この時期に命を授かるという重みはそれぞれに圧し掛かるだろうと想像する。
今夜私が話すのはコロ助(コロナ)の話ではない。ある知人の物語だ。
"知人"とは上手く言ったものだが、私は"知人"ではないのであくまで「私が知りえる彼/彼女」からの妄想が入っていることを先に補足しておこ