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古今東西のコンパクトな名作紹介。『名作うしろ読み』斎藤美奈子

斎藤さんの『文庫解説ワンダーランド』がおもしろかったので、また久しぶりに斎藤節を楽しもうかと手に取りました。

川端康成の『雪国』から司馬遼太郎の『竜馬がゆく』、シェークスピアの『ハムレット』まで、古今東西の名作132冊を、ラストの一文から読み解くという、文庫本ワンダーランドとは真逆の試み。本当にそんなことが可能なの(?)という一抹の疑問ととともにページをめくりました。

コンセプトとしては、できるだけたくさんの本をコンパクトに印象深く紹介する形式らしく、まず、名作のラスト一文を提示して、それから作品について左右2ページで語るというもの。名前しか知らない、読んだことのない名作文学の概要を知るには便利ですが、132冊も紹介するので、1冊についての文章が深くないのが難点。

分析するどい斎藤さんには、とくに自分の好きな作品について熱く深く語って欲しいと思ってしまいます。だから、そういうファンには多少物足りないですが、部分的にはおもしろい、鋭い指摘も混じっていて、まあ楽しめました。予想外だったのは、夫が結構はまって読んでいたこと。『文庫解説ワンダーランド』『冠婚葬祭のひみつ』も気に入ったからかでしょうか?

古典的な少女小説の主人公にはなぜか孤児が多い。理由は単純。古い価値観のなかで女の子を活躍させるには、親の存在が邪魔なのだ。

『名作うしろ読み』より

個人的に鋭いなあと思ったのは、この文章です。なるほど、だから児童文学とか少女小説とか、少年少女が新しいことをやったり、冒険したりする作品に親は出て来ないのですね。


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