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20世紀最大の稀覯本盗難事件。『古書泥棒という職業の男たち』トラヴィス・マクデード


稀覯本とは、珍しかったり貴重だったりする本のこと。本書は、アメリカの1920年代から30年代にかけて、図書館と稀覯本泥棒がくりひろげたイタチごっこの物語。一番驚いたのは、多くの場合、古書店経営者が泥棒して稀覯本を入手していること。

この本を読むと、図書館でカード忘れたときに、しつこいくらい免許証とかの身分証明書を確認されたりする理由がわかります。図書館は、市民にどうやって本の貸し出しを広めるかを考える業務の他に、どうやったら市民に蔵書を盗まれないか追求する業務もあったのですね。

私は想像したこともないけれど、戦前のアメリカではニセの住所で図書館に登録して、貴重な本をコートの中に隠して持ち出したり、綿密な計画を立てて盗んだりした困った人たちがいたとは。しかも、彼らはプロで、稀覯本を売りさばいていたのだから、恐れ入ります。

三上延さんの『ビブリア古書堂の事件手帖』でも、稀覯本や作家の草稿を盗むためなら手段を厭わない人たちが出てきます。最初は、「それってありなの?」と思っていましたが、本書を読むと、古書店店主としては、むしろ彼らが「正統派」だと思えてくるから不思議。

そして、本書では普通の図書館員も実は図書館の本を売っていたという、衝撃の記述が出てきます。でも、考えてみれば、数年前の日本でもそんなニュースがあったのでした。確か、高校の図書館司書さんが給料が少なくて、図書館の本を売っていたという話。

確かに、図書館司書は資格が必要な割に、時給はコンビニの店員さんとか喫茶店のバイト以下で安かったりします。そして、最近は経費削減で、公立図書館や大学図書館ではアルバイトや派遣の司書さんばかり。時給も安くて驚いたっけ。

アメリカの古書販売と古書泥棒の状況はわかったけど、日本ってどうだったんだろう? 久しぶりに『ビブリア古書堂の事件手帖』を読み返して、参考文献を探してみようかな?


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