中国政治評論2

時事通信社解説委員 西村哲也◇中国の鄧小平時代から習近平時代にかけて、特派員として北京…

中国政治評論2

時事通信社解説委員 西村哲也◇中国の鄧小平時代から習近平時代にかけて、特派員として北京・香港に合わせて13年駐在。◇中国政治評論1⇒https://note.com/xczy00

記事一覧

有力紙の記事改ざんが大騒動に─広東省党宣伝部の検閲に記者ら反発(2013年1月)

 中国広東省の有力週刊紙「南方週末」が新年号で掲載する予定だった「憲政」実現を主張する記事が同省共産党委員会宣伝部の指示で大幅に改ざんされたことから、同紙の記者…

谷内内閣官房参与の「尖閣」発言に中国側猛反発─香港で日米中の民間安保対話(2013年1月)

 「中国は1971年まで領有権を主張していなかったのに、今や力ずくで主張している。国際秩序に基づくルールを破る行為と言わねばならない」―。尖閣諸島(中国名・釣魚…

江沢民氏、序列12位に─「宿敵」の葬儀で急低下(2013年2月)

 中国政界で第一線を退いてからも隠然たる影響力を保っていた江沢民前国家主席の公式序列が3位から一気に12位に低下した。胡錦涛国家主席が昨年11月の第18回共産党…

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李源朝、汪洋両氏の処遇が焦点─3月の中国全人代(2013年2月)

 中国全国人民代表大会(全人代=国会)と国政諮問機関の人民政治協商会議(政協)が3月初めから北京で開かれ、国家機関の大幅な人事異動が行われる。これにより、201…

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一党独裁堅持の決意表明─習近平総書記の内部講話(2013年3月)

 中国の習近平国家主席(共産党総書記)が昨年11月の総書記就任後、ソ連崩壊を教訓として、党の軍に対する指導や社会主義への信仰により一党独裁を堅持していく決意を表…

党・軍の大物OBが標的か─習近平新体制の「反腐敗」(2013年3月)

 3月5~17日に開かれた中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の第12期第1回会議で習近平共産党総書記が国家主席を兼務し、同国の新指導部が本格的に始動した…

胡派の李源潮氏、国家副主席に─習近平指導部が本格始動(2013年4月)

 3月に開かれた中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)と国政助言機関の人民政治協商会議(政協)で国家機関の人事異動が行われ、昨年11月の第18回共産党大会で…

習近平氏はタクシーに乗ったのか─香港紙「特ダネ」で中国メディア大混乱(2013年4月)

 香港の代表的な中国系日刊紙である大公報が4月18日、習近平国家主席(共産党総書記)が主席就任前の3月1日にお忍びでタクシーに乗り、運転手と言葉を交わしていたと…

「琉球問題」提起で日本けん制─「尖閣」に加え、「歴史」にも不満(2013年5月)

 尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題に絡めて、中国が「琉球(沖縄)問題」を持ち出してきた。共産党機関紙「人民日報」が日本の沖縄領有権に疑問を呈する大論文を掲載し、中…

最強の汚職調査機関首脳、異例の左遷─「反腐敗闘争」本格展開の前触れか(2013年5月)

 中国で最強の汚職調査機関として知られる共産党中央規律検査委員会の副書記(閣僚級)が不正疑惑で左遷された。超法規的な調査権限を持ち、腐敗官僚に恐れられている中央…

習近平体制、左傾化が鮮明に─対外政策では海洋進出拡大(2013年6月)

 習近平国家主席率いる中国の新体制はイデオロギー面で左傾化が鮮明になってきた。3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で新体制が本格的に始動してから、さまざ…

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対米摩擦の長期化避けたかった中国━香港政府、スノーデン容疑者を「厄介払い」(2013年6月)

 5月20日に米ハワイから香港入りして、米国家安全保障局(NSA)による個人の通信情報収集活動を暴露したため、米当局から訴追されたエドワード・スノーデン容疑者が…

習主席、党内で「整風」開始─4日連続と異例の政治局会議(2013年7月)

 中国の習近平国家主席(共産党総書記)は党内を政治的に粛清する「整風」を開始した。習主席率いる党政治局は会期4日間という異例の会議を開いて、各政治局員に「高度の…

中国の成長率目標、7%に事実上引き下げ─6%台も想定、政権内で反発か(2013年7月)

 中国政府は景気低迷が続く中、これまで「7.5%前後」としていた2013年の経済成長率目標を7%に事実上引き下げた。李克強首相は高度成長より発展の質を重視する構…

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江沢民氏の発言、異例の公式報道─習主席称賛で影響力誇示(2013年8月)

 江沢民元中国国家主席の発言が久しぶりに公式に伝えられた。江氏はキッシンジャー元米国務長官との会見で、習近平国家主席を称賛。引退した指導者の発言が公式発表される…

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習近平指導部に早くも不協和音─一部の指導者、名指し批判か(2013年8月)

 3月に本格始動した習近平国家主席率いる中国共産党・政府の新指導部に早くも不協和音が生じているようだ。一部の香港メディアは、党中央書記局の劉雲山常務書記(党政治…

有力紙の記事改ざんが大騒動に─広東省党宣伝部の検閲に記者ら反発(2013年1月)

有力紙の記事改ざんが大騒動に─広東省党宣伝部の検閲に記者ら反発(2013年1月)

 中国広東省の有力週刊紙「南方週末」が新年号で掲載する予定だった「憲政」実現を主張する記事が同省共産党委員会宣伝部の指示で大幅に改ざんされたことから、同紙の記者たちが猛反発し、元同紙記者らが公然と◆(席の巾を尺に)震宣伝部長の辞職を要求する騒ぎになった。中国本土・香港・台湾のメディア・学者だけでなく、一部の芸能人も同紙記者を支援。党がメディアを管理している社会主義体制の中国で報道規制がこれほど大き

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谷内内閣官房参与の「尖閣」発言に中国側猛反発─香港で日米中の民間安保対話(2013年1月)

谷内内閣官房参与の「尖閣」発言に中国側猛反発─香港で日米中の民間安保対話(2013年1月)

 「中国は1971年まで領有権を主張していなかったのに、今や力ずくで主張している。国際秩序に基づくルールを破る行為と言わねばならない」―。尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題に関する谷内正太郎内閣官房参与(元外務事務次官)の主張が読み上げられると、会場はシーンと静まりかえった。
 中国人や香港人の出席者の表情は一様にこわばり、日本人や米国人も含め約200人の会場は緊張した雰囲気に包まれた。香港中心部の会

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江沢民氏、序列12位に─「宿敵」の葬儀で急低下(2013年2月)

江沢民氏、序列12位に─「宿敵」の葬儀で急低下(2013年2月)

 中国政界で第一線を退いてからも隠然たる影響力を保っていた江沢民前国家主席の公式序列が3位から一気に12位に低下した。胡錦涛国家主席が昨年11月の第18回共産党大会で「完全引退」を決めた後も、 江氏はたびたび公式報道に名前を登場させて存在を誇示していたが、今年1月に死去した楊白冰氏(元党中央軍事委員会秘書長)の葬儀を報じた公式報道で序列の変化が判明した。かつて江氏の「宿敵」だった楊氏の葬儀を機に序

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李源朝、汪洋両氏の処遇が焦点─3月の中国全人代(2013年2月)

李源朝、汪洋両氏の処遇が焦点─3月の中国全人代(2013年2月)

 中国全国人民代表大会(全人代=国会)と国政諮問機関の人民政治協商会議(政協)が3月初めから北京で開かれ、国家機関の大幅な人事異動が行われる。これにより、2012年11月の第18回共産党大会で総書記に就任した習近平氏が国家機関でも国家副主席から主席に昇格し、習氏を中心とする新指導体制の布陣が整う。党大会で政治局常務委員会入りを逃した李源潮、汪洋の両政治局員をどう処遇するかが焦点となる。

■国家

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一党独裁堅持の決意表明─習近平総書記の内部講話(2013年3月)

一党独裁堅持の決意表明─習近平総書記の内部講話(2013年3月)

 中国の習近平国家主席(共産党総書記)が昨年11月の総書記就任後、ソ連崩壊を教訓として、党の軍に対する指導や社会主義への信仰により一党独裁を堅持していく決意を表明した内部講話の内容が明らかになった。習氏は総書記就任後初の地方視察先として改革・開放の先進地区である広東省を選んだり、憲政の重要性を強調したりして、改革派のカラーを打ち出していたが、その一方で、党内では「国体護持」を何よりも優先する本音を

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党・軍の大物OBが標的か─習近平新体制の「反腐敗」(2013年3月)

党・軍の大物OBが標的か─習近平新体制の「反腐敗」(2013年3月)

 3月5~17日に開かれた中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の第12期第1回会議で習近平共産党総書記が国家主席を兼務し、同国の新指導部が本格的に始動した。習主席は汚職を取り締まる「反腐敗闘争」を非常に重視しており、香港メディアやインターネット上では早くも、党・軍の大物OBが標的になっているとの説が出ている。

■前軍事委副主席、全人代を欠席

 全人代では前中央軍事委員会副主席の徐才厚

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胡派の李源潮氏、国家副主席に─習近平指導部が本格始動(2013年4月)

胡派の李源潮氏、国家副主席に─習近平指導部が本格始動(2013年4月)

 3月に開かれた中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)と国政助言機関の人民政治協商会議(政協)で国家機関の人事異動が行われ、昨年11月の第18回共産党大会で党総書記・党中央軍事委員会主席に就任した習近平氏が国家主席を兼任した。これにより、習主席率いる党・政府指導部が本格的に始動した。前総書記・軍事委主席の胡錦涛氏は全人代で国家主席も退任し、中国共産党政権のトップとして史上初めて自主的に完全引退

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習近平氏はタクシーに乗ったのか─香港紙「特ダネ」で中国メディア大混乱(2013年4月)

習近平氏はタクシーに乗ったのか─香港紙「特ダネ」で中国メディア大混乱(2013年4月)

 香港の代表的な中国系日刊紙である大公報が4月18日、習近平国家主席(共産党総書記)が主席就任前の3月1日にお忍びでタクシーに乗り、運転手と言葉を交わしていたという「特ダネ」を報じ、国営通信社の新華社を含む多くの本土メディアがこれを紹介した。ところが、大公報は同日夕、インターネットを通じて声明を出し、報道を撤回。新華社も関連報道を取り消すなど本土メディアは大混乱となった。報道の真偽はいまだに不明だ

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「琉球問題」提起で日本けん制─「尖閣」に加え、「歴史」にも不満(2013年5月)

「琉球問題」提起で日本けん制─「尖閣」に加え、「歴史」にも不満(2013年5月)

 尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題に絡めて、中国が「琉球(沖縄)問題」を持ち出してきた。共産党機関紙「人民日報」が日本の沖縄領有権に疑問を呈する大論文を掲載し、中国系香港紙「文匯報」は「琉球は中国領」と断言。さらに、人民日報系の「環球時報」は、中国が「琉球の日本からの分離」を支援する可能性を示唆した。尖閣問題が長引いているのに加え、4月後半から日本側で歴史問題についても強硬な言動が相次いだことから、

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最強の汚職調査機関首脳、異例の左遷─「反腐敗闘争」本格展開の前触れか(2013年5月)

最強の汚職調査機関首脳、異例の左遷─「反腐敗闘争」本格展開の前触れか(2013年5月)

 中国で最強の汚職調査機関として知られる共産党中央規律検査委員会の副書記(閣僚級)が不正疑惑で左遷された。超法規的な調査権限を持ち、腐敗官僚に恐れられている中央規律検査委の首脳が不正の調査対象になるのは史上初めてとみられる。習近平国家主席(党総書記)と中央規律検査委の王岐山書記が「反腐敗闘争」を本格的に展開するため、まず同委員会内部を粛清した可能性がある。

■権力闘争の「武器」

 社会主義

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習近平体制、左傾化が鮮明に─対外政策では海洋進出拡大(2013年6月)

習近平体制、左傾化が鮮明に─対外政策では海洋進出拡大(2013年6月)

 習近平国家主席率いる中国の新体制はイデオロギー面で左傾化が鮮明になってきた。3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で新体制が本格的に始動してから、さまざまな指示や文書で思想の引き締めを指示。改革派知識人からは「毛沢東時代に回帰しようというのか」と懸念の声が上がっている。また、習主席は6月7日から8日にかけて、3月の就任以来初めてオバマ米大統領と会談し、「中華民族の偉大な復興」の一環として海

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対米摩擦の長期化避けたかった中国━香港政府、スノーデン容疑者を「厄介払い」(2013年6月)

対米摩擦の長期化避けたかった中国━香港政府、スノーデン容疑者を「厄介払い」(2013年6月)

 5月20日に米ハワイから香港入りして、米国家安全保障局(NSA)による個人の通信情報収集活動を暴露したため、米当局から訴追されたエドワード・スノーデン容疑者が6月23日、モスクワ行きの旅客機で香港を離れた。米政府は犯罪人引き渡し協定に基づいて、香港政府にスノーデン容疑者の拘束を求めたが、香港側は同容疑者の出境を容認した。この問題で米国との摩擦が長期化する事態を避けたい中国政府の意向を受け、「厄介

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習主席、党内で「整風」開始─4日連続と異例の政治局会議(2013年7月)

習主席、党内で「整風」開始─4日連続と異例の政治局会議(2013年7月)

 中国の習近平国家主席(共産党総書記)は党内を政治的に粛清する「整風」を開始した。習主席率いる党政治局は会期4日間という異例の会議を開いて、各政治局員に「高度の団結と統一」を要求。会議で習主席がある政治局常務委員を批判したとの説も流れている。「反腐敗闘争」でも、江沢民元国家主席派の有力者と知られる大物の元秘書が規律違反の疑いで取り調べられるなど、党内の雰囲気はきな臭くなってきた。

■「大衆路線

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中国の成長率目標、7%に事実上引き下げ─6%台も想定、政権内で反発か(2013年7月)

中国の成長率目標、7%に事実上引き下げ─6%台も想定、政権内で反発か(2013年7月)

 中国政府は景気低迷が続く中、これまで「7.5%前後」としていた2013年の経済成長率目標を7%に事実上引き下げた。李克強首相は高度成長より発展の質を重視する構造改革を優先する方針だ。関係当局者らの発言から、6%台への落ち込みも想定しているとみられる。しかし、中国各地・各部門の官僚たちはひたすら成長率を追求する粗放的な経済政策に慣れきっており、李首相の路線は政権内で反発を買う可能性がある。

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江沢民氏の発言、異例の公式報道─習主席称賛で影響力誇示(2013年8月)

江沢民氏の発言、異例の公式報道─習主席称賛で影響力誇示(2013年8月)

 江沢民元中国国家主席の発言が久しぶりに公式に伝えられた。江氏はキッシンジャー元米国務長官との会見で、習近平国家主席を称賛。引退した指導者の発言が公式発表されるのは極めて異例で、政治的影響力を誇示した形だ。また、権力闘争が激化していることから、共産党内の団結を対外的にアピールする意図があった可能性もある。一方、習主席が力を入れる「反腐敗闘争」では、昨年失脚した元重慶市党委書記の薄熙来氏が収賄罪など

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習近平指導部に早くも不協和音─一部の指導者、名指し批判か(2013年8月)

習近平指導部に早くも不協和音─一部の指導者、名指し批判か(2013年8月)

 3月に本格始動した習近平国家主席率いる中国共産党・政府の新指導部に早くも不協和音が生じているようだ。一部の香港メディアは、党中央書記局の劉雲山常務書記(党政治局常務委員)や汪洋副首相(政治局員)らが他の指導者から名指しで批判されたと報じた。また、経済政策でも、市場経済化をどれほど進めるのかがはっきりせず、党内で意見が一致していない可能性がある。

■不祥事続きの宣伝工作

 香港紙「明報」は

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