中国政治評論2

時事通信社解説委員 西村哲也◇中国の鄧小平時代から習近平時代にかけて、特派員として北京…

中国政治評論2

時事通信社解説委員 西村哲也◇中国の鄧小平時代から習近平時代にかけて、特派員として北京・香港に合わせて13年駐在。◇中国政治評論1⇒https://note.com/xczy00

最近の記事

最強の汚職調査機関首脳、異例の左遷─「反腐敗闘争」本格展開の前触れか(2013年5月)

 中国で最強の汚職調査機関として知られる共産党中央規律検査委員会の副書記(閣僚級)が不正疑惑で左遷された。超法規的な調査権限を持ち、腐敗官僚に恐れられている中央規律検査委の首脳が不正の調査対象になるのは史上初めてとみられる。習近平国家主席(党総書記)と中央規律検査委の王岐山書記が「反腐敗闘争」を本格的に展開するため、まず同委員会内部を粛清した可能性がある。 ■権力闘争の「武器」  社会主義体制の中国では、高官の大半は共産党員。このため、高官の汚職は通常、党中央もしくは

    • 習近平体制、左傾化が鮮明に─対外政策では海洋進出拡大(2013年6月)

       習近平国家主席率いる中国の新体制はイデオロギー面で左傾化が鮮明になってきた。3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で新体制が本格的に始動してから、さまざまな指示や文書で思想の引き締めを指示。改革派知識人からは「毛沢東時代に回帰しようというのか」と懸念の声が上がっている。また、習主席は6月7日から8日にかけて、3月の就任以来初めてオバマ米大統領と会談し、「中華民族の偉大な復興」の一環として海洋進出を積極的に進める姿勢を示した。国内を政治的に引き締めて一党独裁を堅持し、対

      • 対米摩擦の長期化避けたかった中国━香港政府、スノーデン容疑者を「厄介払い」(2013年6月)

         5月20日に米ハワイから香港入りして、米国家安全保障局(NSA)による個人の通信情報収集活動を暴露したため、米当局から訴追されたエドワード・スノーデン容疑者が6月23日、モスクワ行きの旅客機で香港を離れた。米政府は犯罪人引き渡し協定に基づいて、香港政府にスノーデン容疑者の拘束を求めたが、香港側は同容疑者の出境を容認した。この問題で米国との摩擦が長期化する事態を避けたい中国政府の意向を受け、「厄介払い」のために拘束を見送ったとみられる。 ■引き渡せば「弱腰」批判  米

        • 習主席、党内で「整風」開始─4日連続と異例の政治局会議(2013年7月)

           中国の習近平国家主席(共産党総書記)は党内を政治的に粛清する「整風」を開始した。習主席率いる党政治局は会期4日間という異例の会議を開いて、各政治局員に「高度の団結と統一」を要求。会議で習主席がある政治局常務委員を批判したとの説も流れている。「反腐敗闘争」でも、江沢民元国家主席派の有力者と知られる大物の元秘書が規律違反の疑いで取り調べられるなど、党内の雰囲気はきな臭くなってきた。 ■「大衆路線」強調  「今年後半から約1年、党の大衆路線教育実践活動を展開する」という政治

        最強の汚職調査機関首脳、異例の左遷─「反腐敗闘争」本格展開の前触れか(2013年5月)

          中国の成長率目標、7%に事実上引き下げ─6%台も想定、政権内で反発か(2013年7月)

           中国政府は景気低迷が続く中、これまで「7.5%前後」としていた2013年の経済成長率目標を7%に事実上引き下げた。李克強首相は高度成長より発展の質を重視する構造改革を優先する方針だ。関係当局者らの発言から、6%台への落ち込みも想定しているとみられる。しかし、中国各地・各部門の官僚たちはひたすら成長率を追求する粗放的な経済政策に慣れきっており、李首相の路線は政権内で反発を買う可能性がある。 ■「下限」と「最低ライン」  中国の公式報道によると、李首相は7月16日、専門

          中国の成長率目標、7%に事実上引き下げ─6%台も想定、政権内で反発か(2013年7月)

          江沢民氏の発言、異例の公式報道─習主席称賛で影響力誇示(2013年8月)

           江沢民元中国国家主席の発言が久しぶりに公式に伝えられた。江氏はキッシンジャー元米国務長官との会見で、習近平国家主席を称賛。引退した指導者の発言が公式発表されるのは極めて異例で、政治的影響力を誇示した形だ。また、権力闘争が激化していることから、共産党内の団結を対外的にアピールする意図があった可能性もある。一方、習主席が力を入れる「反腐敗闘争」では、昨年失脚した元重慶市党委書記の薄熙来氏が収賄罪などで起訴されて初公判が開かれ、薄氏の後ろ盾だったといわれる江派の大物、周永康氏(前

          江沢民氏の発言、異例の公式報道─習主席称賛で影響力誇示(2013年8月)

          習近平指導部に早くも不協和音─一部の指導者、名指し批判か(2013年8月)

           3月に本格始動した習近平国家主席率いる中国共産党・政府の新指導部に早くも不協和音が生じているようだ。一部の香港メディアは、党中央書記局の劉雲山常務書記(党政治局常務委員)や汪洋副首相(政治局員)らが他の指導者から名指しで批判されたと報じた。また、経済政策でも、市場経済化をどれほど進めるのかがはっきりせず、党内で意見が一致していない可能性がある。 ■不祥事続きの宣伝工作  香港紙「明報」は8月20日、劉書記と汪副首相が批判を受けたという説が北京で流れていると伝えた。こ

          習近平指導部に早くも不協和音─一部の指導者、名指し批判か(2013年8月)

          江派大物に対する「包囲網」狭まる─石油閥の不正調査、閣僚級も対象に(2013年9月)

           中国の「反腐敗闘争」で江沢民元国家主席派の大物、周永康氏(前共産党中央政法委員会書記・前政治局常務委員)に対する「包囲網」が狭まってきた。一部の香港紙は、周氏の汚職疑惑が調査されると報道。また、石油部門出身の周氏に近い国営石油会社の幹部や閣僚級高官が次々と党の規律違反で取り調べられ、大きな政治的影響力を持っていた「石油閥」は大打撃を受けた。周氏は胡錦涛国家主席時代、当時の胡主席や温家宝首相に対抗する実力者といわれたが、習近平国家主席の汚職摘発キャンペーンで政治的動きを封じ込

          江派大物に対する「包囲網」狭まる─石油閥の不正調査、閣僚級も対象に(2013年9月)

          「反腐敗闘争」、検察トップも標的か─江派大物と密接な関係(2013年9月)

           中国の習近平政権が力を入れる「反腐敗闘争」で、最高人民検察院の曹建明検察長(検事総長に相当)が調査対象になったとの説がインターネットや香港メディアで流れている。曹検察長は江沢民元国家主席派の大物として知られる周永康氏(前共産党中央政法委員会書記・前政治局常務委員)と密接な関係にあるといわれ、周氏の周辺に対する一連の不正調査の中で新たな「容疑者」として浮上してきた可能性がある。検察トップが処分されれば、極めて異例の事態となる。 ■政法委vs規律検査委  社会主義体制の中国

          「反腐敗闘争」、検察トップも標的か─江派大物と密接な関係(2013年9月)

          各地方指導部で「批判と自己批判」─党内引き締め、市場化の改革推進へ(2013年10月)

           中国共産党は党内を粛清する「整風」運動の一環として、省レベルの各地方指導部に「批判と自己批判」を行う「民主生活会」を開催させた。6月の党政治局専門会議などで本格化した「整風」を地方に広げた形だ。一方、習近平国家主席はインドネシアで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で市場経済化を拡大する改革推進の決意を表明。党内引き締めにより権力基盤を固めた上で、11月の党第18期中央委員会第3回総会(3中総会)で新たな改革措置を打ち出す方針とみられる。 ■江派大物の元部下が標

          各地方指導部で「批判と自己批判」─党内引き締め、市場化の改革推進へ(2013年10月)

          人事・宣伝・経済の要職に起用─習主席の側近人事(2013年10月)

           中国の習近平国家主席は今春の就任から10月にかけて、地方時代の部下ら側近を次々と中央の要職に起用した。配置先は自分の弁公室(事務所)のほか、人事、幹部養成、宣伝、経済政策に関するポスト。習主席はこれまで中間派的存在だったが、共産党総書記と国家主席を兼ねて新体制が名実ともにスタートしたことから、自前の権力基盤固めに乗り出したとみられる。 ■浙江人脈  一部の中国メディアは10月24日、共産党中央宣伝部の劉奇葆部長が国家博物館を視察したことを伝えるニュースで「黄坤明中央

          人事・宣伝・経済の要職に起用─習主席の側近人事(2013年10月)

          「国家安全委」「改革指導小組」を創設─党3中総会で習主席の権力強化(2013年11月)

           中国共産党は11月9日から12日にかけて、第18期中央委員会第3回総会(3中総会)を開き、「国家安全委員会」と「中央改革全面深化指導小組」の創設を決定した。国家安全委は習近平国家主席のトップ就任が確実。同小組の組長も習主席が兼ねる可能性があり、そうなれば、既に国家主席、党総書記、中央軍事委主席を兼務している習氏がさらに安全保障政策と改革政策全般を取り仕切る機関も率いて、個人的権力を大幅に強化することになる。 ■大胆な経済改革措置なし  中国は社会主義体制なので、重要な

          「国家安全委」「改革指導小組」を創設─党3中総会で習主席の権力強化(2013年11月)

          習近平時代後半の指導部人事に影響も─改革小組・安全委関連の異動(2013年11月)

           中国共産党の第18期中央委員会第3回総会(3中総会)で創設が発表された中央改革全面深化指導小組と国家安全委員会に関連する人事異動が、第19回党大会(2017年)で決まる習近平国家主席時代後半の指導部人事に影響する可能性が出てきた。党の最高指導部である政治局常務委の次期メンバーは、留任が確実な習主席と李克強首相のほか、党中央弁公庁の栗戦書主任や上海市党委の韓正書記、汪洋副首相(いずれも現政治局員)らの名前が下馬評に上がっている。 ■上海市トップ交代か  明報(11月1

          習近平時代後半の指導部人事に影響も─改革小組・安全委関連の異動(2013年11月)

          習主席、強硬策で軍掌握狙う─東シナ海の防空識別圏設定(2013年12月)

           中国政府は11月23日、沖縄県の尖閣諸島(中国名・釣魚島)を含む東シナ海の上空に防空識別圏を設定すると発表した。事前に周辺国と協議しなかった上、圏内で中国側の指示に従わない航空機に対しては武力による「防御的緊急措置」を取ると警告。このため、日本だけでなく、関係各国から批判や懸念の声が相次いだ。習近平国家主席(共産党総書記、中央軍事委員会主席)は権力基盤固めの一環として人民解放軍を掌握するため、対外強硬策をあえて打ち出したとみられる。 ■国家安全委の課題  中国共産党は1

          習主席、強硬策で軍掌握狙う─東シナ海の防空識別圏設定(2013年12月)

          ネット言論の取り締まり徹底を指示─習主席の「8・19講話」(2013年12月)

           中国の習近平国家主席(共産党総書記)が2013年8月19~20日の全国宣伝思想工作会議で行った演説の要旨とされる文書が11月から12月にかけて、一部の香港メディアや海外の中国語ニュースサイトで伝えられた。演説は「8・19講話」といわれ、習主席はその中で人権や自由を重んじる西側の価値観に敵意をむき出しにし、その影響を排除するため、インターネット上の言論に対する取り締まりを徹底するよう指示している。一党独裁堅持の決意を示した12年12月の「南巡講話」に続き、党内でタカ派ぶりをア

          ネット言論の取り締まり徹底を指示─習主席の「8・19講話」(2013年12月)

          汚職疑惑の周永康氏軟禁─側近の警察高官らも取り調べ(2014年1月)

           胡錦涛国家主席時代の中国共産党内で江沢民元国家主席派の大幹部として権勢を振るった周永康氏(前党中央政法委員会書記・政治局常務委員)の汚職疑惑調査が大詰めを迎えた。当局は取り調べのため、周氏を軟禁。共産党政権で初めて党最高指導部メンバーである政治局常務委員級の要人に対し、汚職容疑で強制措置が取られた。また、周氏の側近だった閣僚級の警察高官らも相次いで取り調べを受けた。習近平国家主席(党総書記)は「反腐敗闘争」の強化で権力基盤を着々と固めつつある。 ■先輩の葬儀欠席  中

          汚職疑惑の周永康氏軟禁─側近の警察高官らも取り調べ(2014年1月)