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2021年12月の記事一覧
答えは君とぼくたちしか知らない
泳ぐ魚のような文字が地面に踊る。意味を誰にも教えまいと、誰かの瞳に映るたびに互いの位置を変えた。本当の意味は筆者と魚たちしか知らない。
「ねえ、シナモンがその味を変えるとき、どうしてシナモンのままになるの?」
「どういうこと?」
「味が変わったらもうシナモンではなくない?成長したら魚も名前が変わるのに、シナモンは味が変わったら名前は変わらないの?」
彼はそれに答えようとはしなかった。彼女の言葉
ツバつき帽のうらっかわ
あの子は決して帽子を人に渡さなかった。髪の毛を整え直すときも、屋内に入るときも、いつだって。
野球帽が多かったけど、たまにバケットハットなんかも被る。ツバがついていればなんでもなんでもよくて、ツバがないものは買わなかった。
ときどき彼女は、上を見やってツバの裏を覗いていた。たぶん、そこに秘密があるのだろうと折り入って聞いたことがある。
「ねえ、ときどき帽子の裏を見ているのはどうして?」
「わ
何曜日かのホットケーキ
「ねえ、何していたの?」
女の子が覗き込みながら声をかけてきた。覗き込むのはいい。いや、どうだか。少なくともわたしの部屋に見知らぬ子がいることがわからなかった。
「あなたはだれ?」
「あたし」
「名前は?」
「ひみつ」
起こされたばかりのわたしは機嫌が悪くて、いたずらっぽい彼女のやり方に苛立っていた。誰の子だろうか。姉さんか、そういえばずっと遠いいとこの子供が前に生まれてしばらくだとか。