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雨の種

「雨の種を埋めよう。あしたは雨がいんだから」
「勝手にやって欲しくないわ」
「でも、雨がいんだな」

種を埋めようと彼は屈んだ。空色の瞳に白いまつ毛。太陽の光を受け、色は瞬く変わる。夜の光は、赤へと変えた。夜明けの青は緑の元になる。

「またあれね、予感てやつ。スピリチュアルに傾倒するのも楽しいだろうけど、今日ばっかりは陽子崩壊とかルシャトリエとかそんな言葉は出さないでよね」
「スピリチュアルと科学は違うよ」
「わたしにすれば、あんたの無駄な言葉は全部一緒くたなの」

彼は耳をかさずに種を植えた。彼女は呆れて空をあおいだ。苗はなり、ふたつの葉についた土くれが風に払われる。

「明日は雨になるのかなあ」
「なるでしょ。胡散臭いけど、あんたのスピリチュアルは結果を逃さないんだから」

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