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帰還雷撃知らざれば

水溜りには空が映る。雲放電によってついぞ大地と対話が出来なかった雷は、そこにあった水溜りを知らなかった。

旅を知らない雷は、ひとりぼっちになった気がした。降りることも叶わずに、打ちひしがれたまま眠る。

千々にちぎれて消えていく雲は、次の機会を教えてはくれない。ごろごろするしかない雷ができることは待つばかりであった。

眠りにつかねばならなかった。再び空に仮の居場所が設られるまで、その時をただ静かに待つほかなかった。

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