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【ファジサポ日誌】112.自滅と規律~第18節 ジェフ千葉 vs ファジアーノ岡山 マッチレビュー~

フクアリで試合がある度にどうしても「鬼門」に関する話題がついてまわる。筆者も2年前は「鬼門突破」と意気込んでアウェイに乗り込んだのだが、この1~2年の岡山のサッカーを追っていると、結構他にも出来ないことがたくさんあることに改めて気づかされ(5連勝など)、フクアリで勝てないことのみを特化したジンクスとして語る必要もないと思うようになった。
要は試合内容が向上すれば勝てるようになるし、勝ってもこの好調を持続しなければ意味はない。逆に言えば、負けても引きずる必要はないし、負けてもシーズン全体の目標を達成すればよいのである。

そういう意味で捉えるならば、今回の千葉戦にはいくつかの勝てる要素があり、その良い流れを自ら手放してしまった点は痛恨であったといえる。つまり自滅の一戦であったと思うのである。

振り返ります。

1.試合結果&メンバー

高崎航地主審が担当ということで注目された一戦にもなりました。双方に合わせてイエロー6枚、レッド2枚が出され、字面では荒れ模様にもみえるのですが、この試合での同主審の判定は「高崎氏」の判定という点を踏まえますと許容できるものであったと考えます。

このように高崎主審の成長や、その判定の趣旨、それに適応する選手という点にも着目し、同主審のレフェリングの改善について触れました。
一方で同氏が担当した先日のJ1福岡-C大阪戦(0-3)を観ましても、カードでの規制を多用する、その規制基準も他の審判と比べて極端に低いことから、強いフィジカルコンタクトを戦術に組み込んでいるチームはたちまちに不利になってしまう点は重要な問題であると筆者は考えます。

つまり、特定の主審の指向により本来答えがない筈のフットボールのスタイルが実質的に否定されることになっているのです。

審判においても個々に重視すべき価値観が異なるという点は理解できるのですが、あまりにもその振れ幅が大きすぎる現状ではチームは主審の傾向ごとにプレーを含めた振る舞いを毎試合大きく変えなくてはならず(しかも試合直前に)、これは無駄な負担以外の何物でもありませんし、そもそもがアンフェアなのです。

高崎氏はいわゆる審判界では大変に高い評価・期待を受けていると聞きますが、そこにフットボールの価値向上という意識や現場の選手に対するリスペクトが果たしてあるのか?筆者はこの点にも大きな疑問を持っています。

J2第18節 千葉-岡山 メンバー

メンバーです。
岡山に関しては変えようがないのですが、U-19日本代表選出が濃厚と思われていたRSH(39)早川隼平が引き続きチームに帯同してくれる点は、岡山にとって幸運としか言いようがありません。

千葉では、RSH(7)田中和樹の復帰が目につきます。同ポジションでは(19)岡庭愁人のクロスも魅力ですが、やはり昨シーズンの対戦でも苦労した(7)田中のスピード、強度、突破力は岡山の脅威になり得ると感じていました。その千葉において、LSH(77)ドゥドゥのベンチスタートは岡山にとって幸運とも感じました。先発した(20)高木俊幸も良いプレーヤーですが、後半途中、その(20)高木から(77)ドゥドゥにスイッチ以降は千葉の左サイドの精度は一段階上がったように見えました。LSB(67)日高大との連携も(77)ドゥドゥとのコンビの方がスムーズに見えました。

2.レビュー

J2第18節 千葉-岡山 時間帯別攻勢・守勢分布図

試合全体を振り返りますと、序盤の岡山の入りは決して悪くなかったと思います。CF(99)ルカオが「収め役」として予想以上に機能しており、また千葉陣内での再奪取にも成功、セットプレーも獲得します。
5分、岡山のCK(39)早川のキックをRCB(4)阿部海大がニアで触ったシーンにはかなりの得点の匂いがしていました。
しかし、そんな良い立ち上がりながら、あえて厳しいことを述べますなら、決め切れない甘さも同時に感じられました。
岡山は6分にもCKを獲得しましたが、ショートコーナーで(39)早川と(24)藤田(息)がパス交換にもたついている間に千葉のプレッシャーを受け、ボックス内へクロスを送り込めませんでした。
いわゆる「ユルい」プレーといえます。
これが他の対戦相手であれば、そこまでも感じないのでしょうが、決める、決めないの勝負になる千葉が相手であったからこそ、もっとチームには甘さの排除について突き詰めてほしいのです。

そんな「ユルい」プレーをみせていたら、必ずツケは回ってきます。
7分LSH(19)岩渕弘人が遠めからシュートを放つものの枠外へ外れ、千葉のビルドアップ。千葉LCB(22)佐々木翔悟のグラウンダーのフィードが中央のOFM(16)横山暁之へと綺麗に通ってしまいます。
千葉(22)佐々木の売りのプレーですが、岡山の中盤は(16)横山へのパスコースを全く消すことが出来ていませんでした。
その後、持ち上がる(16)横山からCF(10)小森飛絢へ。
(16)横山にパスが通った段階で、岡山の最終ラインは初動が遅れているように見えました。CB(18)田上大地が後方からファール、開始8分という段階で早々にイエローを貰ってしまいます。
この場面も(10)小森の持ち方がもう少し良ければDOGSOによる退場の可能性もあったように筆者にはみえました。更に高崎主審に抗議、この時点でこの試合の(18)田上には「アブナイ」匂いが漂っていたようにみえます。

このファールによるFKは外れ、二次攻撃からの千葉RSB(2)高橋壱晟のクロスも千葉の得点には繋がらず、岡山は事無きを得ますが、この一連のプレーが千葉に大きな自信を与えたように見えました。
裏返せば岡山が大きな隙を見せてしまった場面とも言えます。

J2第18節 千葉-岡山 18分千葉先制点に繋がったカウンター

そして18分の千葉の先制点に繋がるのですが、ここは千葉(7)田中がクロスを上げるまでの場面にポイントがあったように思いました。
岡山が前がかりになっているシーンでLCB(5)柳育崇はハーフウェイ付近まで上がり、前線にパスをつけます。これが(19)岩渕から(99)ルカオに繋がりそうなところを千葉(2)高橋がカット、ここから千葉のカウンターに移行するのですが、映像を止めますと、この千葉の第一歩が明らかに岡山よりも速いことが確認できます。
この時点で岡山は既に不利に陥っているのですが、悪いことにCH(7)竹内涼も前にいたので中盤のカバーが(24)藤田(息)のみになっています(ダブルボランチの縦関係を考えれば仕方がない事でもありますが)。

千葉の工夫のひとつが(16)横山のポジションです。通常であればCH(4)田口泰士や(5)小林祐介にボールが渡りそうなところですが、2人ともパサーのため、周囲の味方が前線に上がるまでキープ、もしくは前線のスペースにパスを出す選択となる可能性が高いと思われます。前者の選択であれば岡山が帰陣する、後者であればマイボールを手放すという点でカウンターの成功率は低くなります。
ここにドリブルで運べる(16)横山が顔を出し、受けることによって、マイボールを確実に保持したまま岡山陣内へと運べるのです。

そしてふたつめの工夫は(7)田中の走り方です。そもそもこの場面での(7)田中のトランジションが非常に速く、優位に立っている点は見逃せないのですが、斜め方向へスプリントすることで、岡山DFから遠ざかり良い形でクロスを上げるねらいが見えました。更に直線的に走るよりも、斜めに長い距離を走ることで、味方がボックス内へ進入する時間も稼いでいます。

この(7)田中のスプリントに対して、岡山LCB(5)柳育崇は長い距離を走ってでも(7)田中にプレッシャーをかけに行くべきであったと筆者は考えます。

おそらくスピードと距離の問題で(7)田中に間に合わない、それならニアのスペースを埋めようという判断であったと思います。(10)小森が気になったという点もあるでしょう。そして(7)田中がサイドに流れたことで(17)末吉が対応してくれるという期待もあったのではないでしょうか。

その(17)末吉も中へと入ってしまうのですが、これはおそらく今シーズンの岡山がサイドアタッカーに対して、左右のCBが迎撃に出る形がチームの守備の標準になっていたことも判断に影響したと思います。(17)末吉からすると(5)柳(育)が(7)田中に行くとみていたのかもしれません。

岡山は中の枚数自体は足りていただけに、もったいない失点シーンとなりました。精度の高いクロスを上げられる千葉の選手を相手に、あれだけフリーでクロスを上げさせてはいけないのです。
仮にLCBに(15)本山遥が入っていたらどうだったでしょうか。(7)田中を追いかけたかもしれませんね。(15)本山が負傷し、(5)柳(育)も慣れていないであろう3CBの左で奮闘してくれていますが、(5)柳(育)は基本的には中央で跳ね返す守備が身についている選手なのだろうと思います。

SPORTERIAさんより、千葉のパスネットワーク図です。(7)田中、(16)横山の役割がよく現れていると思います。

そして、エリア間パス図です。岡山陣内中央を使った前進がほぼありません。サイドをしっかり使う意図、そしてピッチを幅広く使っている様子が伝わってきます。

千葉に先制され追いかける立場となった岡山でしたが、XのTL上では前半終了までの岡山のプレーが消極的に映ったとの意見が多くみられました。
このことについても理由は明確で、ひとつは上図のようにラインを上げた状態で千葉に綺麗にカウンターを許してしまったことから2失点目への警戒が強まったこと、そして前節仙台戦で同様の試合運びから結果を出していた点も影響していたと思います。そこには岡山の前からのプレスが嵌らなかったことがスタートとしてあるのですが、その原因については後ほど触れます。

また、この前の時間帯について失点の場面も含めて、サイドからクロスを何度か上げられていたことから、岡山は同点に追いつこうと躍起にならず、両WBを下げて甲府戦同様に5-4-1、または5-3-2の守備ブロックを形成、まずは仙台の両SHのプレースペースを埋めて、守りから改めて試合の自分たちのリズムを取り戻そうとしていたのです。

拙著ファジサポ日誌111.エッセンシャル思考~第17節 ベガルタ仙台vsファジアーノ岡山 マッチレビュー~より

繰り返しになりますが、失点後の岡山の振る舞いに関しては、自分たちと千葉との力を比較し、続けざまの失点を防ぐことを意図的に優先したのであれば、擁護出来る点はあったと考えます。
やはり、昨シーズンの5失点の残像が残っている選手も多いですし、先日の愛媛戦での7得点など、畳みかけた時の千葉の勢いも計算に入っていたのかもしれません。

さて、後半からギアを上げたかった岡山でしたが、後半序盤も千葉(7)田中らの勢いを止められず、後半最初の10分間は千葉の攻勢に晒されます。
ようやく岡山の時間になったのが60分以降、つまり(19)岩渕の同点ゴールが生まれた時間帯です。

まさにコレなのだと思います。ガス欠です。
先制点のカウンターの図をご覧いただきたいのですが、千葉の陣形は岡山と比べても非常にコンパクトで、全員が攻守に連動しているといえます。つまりFP全員の走行距離が長くなっていることが推測できます。更にトランジションの鋭さ、前述の(7)田中に代表されるスプリントの多さからも一定の体力の消耗が予想されるのです。
更に、次の点が千葉の大きな特長とみているのですが、千葉がGKからビルドアップする際、CBの(22)佐々木や(40)メンデスは非常に深い位置を取り、SBやSHなどサイドプレーヤーも思いっきり幅を取ったり、高い位置を取ったりします。
岡山がこの状況で千葉のボールホルダーにプレスを掛けると、長い距離を走らなければならず、かつプレスの連動性が失われ、陣形が間延びします。
そして間延びした中央を経由して、予め良い位置を取っているサイドに展開するという流れも千葉のサッカーなのですが、千葉のピッチ全体を広く使うことによる運動量の増加、体力の消耗という点も見逃せないのです。

こうした千葉のサッカーは今に始まった話ではなく、実は昨シーズンの前半から構築していたものと筆者はみています。対千葉という点では、どうしても昨シーズンのホーム戦、自陣に押し込まれたサッカーの印象が強いのですが、この日の千葉のサッカーはどちらかというと、昨シーズンのフクアリでの試合に似ているように感じました。
これは前述した愛媛戦でも同様で、筆者は昨シーズンの岡山のように愛媛が自陣から脱出できなかったのかなと予想していましたが、実際にはピッチを広く使うことで愛媛の前プレを無効化していたのでした。

昨シーズンのフクアリ千葉戦でのレビューを貼っておきますので、よろしければご参考ください。

余談が長くなりましたが、つまり千葉の強度、スピードを90分、また全試合持続することは非常に難しいことであると思うのです。
一方、岡山はこの試合では2失点してしまいましたが、守備では絶対的な強固さをつくりかけている反面、攻撃は相手のミス待ち、相手のガス欠待ちといった側面はあります。しかし、その相手の綻びを突ける「嗅覚」は強みです。

そんな(19)岩渕の同点ゴールでした。

千葉(7)田中からのクロスを(10)小森がヘディングで合わせますが、岡山GK(49)スベンド・ブローダーセンが真正面でキャッチ、岡山が攻撃へ移行するのですが、まず千葉の陣形全体が間延びしており、守備への切り替えも遅くなっています。

右サイドでボールを受けたRWB(88)柳貴博が内レーンに下りてきた(99)ルカオに当て、スプリントを開始しますが、迷いなくアウトレーンから内レーンへのスペースにスピードを緩めずスプリントした点が見事でしたし、(7)竹内のフィードも非常に正確、そして(88)柳(貴)のクロスは千葉GK(1)藤田和輝のタイミングを外すもので、しっかり感じていた(19)岩渕が決めるという電光石火のゴールでした。
岡山としては各選手に広いプレースペースが与えられていたという点は大きかったのですが、(88)柳(貴)、(99)ルカオ、(7)竹内、(19)岩渕の意思がしっかり噛み合っていました。

前々節、前節と(88)柳(貴)が「ゾーン」に入ってきている感じはあります。
この左右のサイドの攻防という点でも全体的には、千葉がSB、SHの2枚で対応するのに対して、岡山は基本的にWB1枚での対応という事になり、噛み合わせでも不利な面はあったように感じました。
終盤に岡山は(16)河野諒祐をRSBに配置する4バックに変え、(88)柳(貴)を前に出しますが、思いの外機能しているように見えました。10人になったことによる緊急対応という側面はありましたが、こうしたオプションは今後積極的に使っていっても良いように思えました。

この岡山が同点に追いついた時間帯からオープンな展開になる予感はあり、即ちこの後、岡山が簡単に2-1で勝てたとも思わないのですが、前述しました千葉のペースダウンから少なくとも追加点を奪えた可能性はあったと思います。

ですから、この時間帯の(18)田上の退場は痛すぎるどころのものではなかったのです。主審の傾向、前半でカードを貰っている状況、ゲーム展開、局面の状況、残念ながら全てにおいて軽率過ぎるプレーであったと言わざるを得ません。
いわき戦での退場の時にも感じたのですが、(18)田上は時折、目の前のプレーに没頭し過ぎてしまっているように見える時があります。それにしても不可解なプレーでした。

当然、岡山にとっては1人少なくなることは痛かったのですが、この退場の間に千葉の選手に休息、そして考える時間を与えてしまったことが非常に痛かったと思いました。
この直後の(10)小森の勝ち越しゴールについては(10)小森を褒めるべきですが、試合の流れが変わった点は大いに影響していたと思います。
一言で述べるなら岡山にとってこの試合は(18)田上の退場が全てであったといえます。チームとしての規律を守れない選手が出てしまった。つまり自滅です。

それでも、岡山は84分に途中交代(10)田中雄大が(99)ルカオからのマイナスのクロスに反応、際どいシュートを放つなど、ベンチも含めて最後まで戦っていました。繰り返しになりますが、このエネルギーを11人で出せなかった点が悔やまれます。

3.チームスタイルの色々

ここで、まとめのような内容になるのですが、岡山としてこの試合で悔やまれるのは、序盤の保持時のプレーの甘さ、そして(18)田上の退場であったと思います。攻撃の持続性については、筆者は岡山のチームスタイルを踏まえると妥当なところであったのかなと考えています。

そのチームスタイルについてですが、千葉のこの試合の攻守の迫力を考えますと、現段階でもっと上の順位にいてもおかしくないとも思えました。
各スタッツをみてもそう思えます。

しかし、これからどうなるかは別にして、現段階では7位に止まっている点からも、スタイルの持続性という観点から強度とスピードを極め続けるサッカーにも限界があるということが見えてきます。

一方で岡山のサッカーは、強度を高めようとした結果、怪我人が続出しているという現状はあるにせよ、他チームと比べると特に攻撃の面でその強度とスピードの出力は8割ぐらいなのかなという感覚でみています。
しかし、その分スタイルの持続性はあるように思えます。勝敗に関わらずロースコア、1点差の試合が多い点からもそうした傾向が窺えます。
観戦している側としては突き抜けられないもどかしさを感じたりもするのですが、こうした点を踏まえますと、現状の岡山が昇格する上で大事にするべきポイントは「試合巧者ぶり」といえるのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、だからこそ「自滅」はもう見たくないのです。
(18)田上に関して辛く書きましたが、今シーズン岡山の左右CBが有効に攻撃参加出来ているのも、彼が的確にリスクを取りながら最終ラインを押し上げてくれているからです。出場停止は1試合で済むとのこと、チームとしての規律を理解したうえで戦列に戻ってきてほしいです。

4.懲戒とは何か?

3. 懲戒処置

主審は、試合前の競技のフィールド点検のために競技のフィールドに入ったときから試合(PK戦(ペナルティーシュートアウト))を含む)の終了後に競技のフィールドを離れるまで、懲戒処置をとる権限をもつ。

JFA サッカー競技規則2023/24より

ここからは雑談です。

競技規則では審判が選手などに警告(イエローカード)、退場処分(レッドカード)を与えることを「懲戒処置」と表現しています。

筆者は企業の労務管理をお手伝いする仕事をしている関係で、企業の就業規則の「懲戒規定」に触れる機会や、実際に関与先企業の従業員に対して懲戒処分を行えるかどうかその可能性を検討することもあります。
しかし、労働者に対するこの懲戒処分(処置)の適用は簡単なことではないのです。事実関係の調査・確認、労働者の弁明、指導、懲戒処分の相当性(妥当性)の検討等、様々な段階を踏まえて、慎重に検討していくものなのです。
このプロセスを怠ったり誤ったりすると、労使の紛争に発展する可能性もあります。仮にそうなると企業にとっても不利益ですし、労働者の職業生活にも大きな影響を及ぼしてしまいます。
実際に懲戒の相当性(妥当性)を争った判例は数多くあり、現在進行形で増えていっている状況にあります。

このように「懲戒」、すなわち「懲らしめる」、「戒める」という言葉に個人的に非常に重たいイメージを持っているため、サッカーの試合でイエローカードやレッドカードが乱発する試合を観る度に、「サッカーって本当に簡単に人を懲戒してしまうのだな…」という妙な感想を抱いたりもするのです。

独り言ですが、千葉の佐々木選手のイエロー2枚目は、その真相はわかりませんが、もう少し選手側の事情を斟酌してもよかった、注意する程度で止めることは出来なかったのかと思えてしまうのです。

ちなみに「懲戒」を英訳すると「discipline」となります。「discipline」の本義は「規律」です。

もちろん企業活動とサッカーの試合は同列に語れるものではありませんが、企業(使用者)は労働者と労働契約を結び、その労働契約を根拠として労働者が労務を企業(使用者)に提供する義務が発生します。企業(使用者)には労働者の労務提供の対価として賃金を支払う義務が発生するのです。
この二者間の総合的な「規律」を定めたのが就業規則であり、その中に規律違反の処分として「懲戒」が定められているという関係性が存在します。

ではサッカーの場合はどうなのかというと、まず上述の競技規則のとおり、審判に「懲戒処分」を含む非常に強い権限が与えられています。
しかし、審判と選手は、企業(使用者)と労働者(従業員)のような契約関係にはありません。当たり前ですが、プロサッカー選手は所属クラブと契約を結びますので、所属クラブの規律には拘束されます。

それでは選手等が審判の規律に拘束される根拠は何なのか?と考えた時、筆者はやはり競技規則にヒントがあるように思うのです。審判には非常に強い権限が与えられているのですが、その権限は試合前のフィールド点検の時から試合後競技場を離れるまでと限定されています。

当たり前だろ、お前は何を言っているんだ?と思われるかもしれませんが、この当たり前の意義が非常に重要と考えているのです。

つまりサッカーの試合を成立させるため、拡大解釈すると良いサッカーの試合を成立させるためのルールの専門家としての審判の能力に強い権限の根拠があると筆者は考えるのです。

よって、まず審判には正確な判定を試合に提供することが第一に求められます。しかし、審判と選手の間には明確な根拠に基づいた主従関係がありません。良いサッカーの試合をつくっていくためには、選手の審判に対する尊敬と協力関係が築かれなくてはならないと筆者は考えるのです。

果たしてイエローカード、レッドカードを数多く出すことで、サッカーの試合の規律をつくっていけるのか?審判と選手の関係性という点に着目して考えてみたら答えは自ずと出るような気がするのです。

以上、雑談でした。

今回もお読みいただき、ありがとうございました!

※一部敬称略

【自己紹介】雉球応援人(きじたまおうえんびと)

地元のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。
2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。

レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。


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