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【ファジサポ日誌】39.代役とは呼ばせない~第4節vsツエーゲン金沢~

Cスタでは改修された大型ビジョンがこの試合から運用されました。
私がグッときたのは、試合直前のスタメン呼び出し(煽り)映像です。
昨季の曲VETTОREの「TОCCATA」に合わせて映し出されたのは、完敗を喫したプレーオフ山形戦の映像でした。
ダダダダン、ダダダダン、ダダダダダダダダダン!

昨季からの継続性を感じさせる音楽と映像から、あの悔しさを忘れることなく、我々はパワーアップする。そしてJ1へ昇格するというクラブの決意を感じとることが出来ました。
今季は昨季から続く物語なのです。

思えば昨季のアウェィ金沢戦(第39節)も悔しい敗戦となりました。
自動昇格圏内横浜FCとの勝点差が8に開いた痛い敗戦、岡山昇格の潮目が退潮となったターニングポイントであったと今では思えます。
その試合で完全に裏を取られ失点に絡んでしまった(5)柳育崇はこの試合に期するものがあったようです(試合直後のクラブ公式動画より)。

そして、U-20アジアカップで奮闘する(22)佐野航大、(48)坂本一彩の不在、更にはエース(7)チアゴ・アウベス、ベテラン(38)永井龍の離脱という前線のコマ不足に岡山はいかなる手を打ったのか?

この試合が岡山にとって上げ潮へと潮目が変わる試合となったのか?
振り返ってみたいと思います。

1.試合結果&スタートメンバー

まずは試合結果とスタートメンバーの確認です。

J1昇格に向けて様々な目安がありますが、4試合で勝点8(42試合で勝点84)というのは勝点積み上げの短期的なペースになると思います。
この試合での勝利により、開幕から最初の4試合で苦しみながらも8ポイントを獲得できました。
また得失点差の面でも、試合をしっかりクローズしクリーンシートを達成、得失点差を稼げた点も良かったです。

J2第4節 岡山vs金沢 スタートメンバー

岡山は清水戦で負傷交代、前節水戸戦を欠場した(14)田中雄大が戻ってきました。その水戸戦で交代出場、試合の流れを引き戻した(44)仙波大志が今季初スタメンでトップ下に入ります。
2トップも清水戦、水戸戦で十分な関係性を築けなかった(9)ハン・イグォン、(18)櫻川ソロモンのコンビから、(8)ステファン・ムークと(18)櫻川の2トップに変更してきました。
ベンチには今節も(99)ルカオが控えます。

一方、金沢にはアクシデントがありました。
CBの一角として先発予定でした(4)井上竜太に試合直前、何らかの体調不良があった模様です。当初サブの予定でした(39)庄司朋乃也が代わって先発しました。
金沢は前節町田戦で最終ラインを3枚入れ換える荒療治を施したばかりでしたが、今節もルーキー右SB(5)櫻井風我が初先発。再び新たな最終ラインでこの試合に臨みます。
右SHにテクニシャン(10)嶋田慎太郎が入った点も目を惹きます。
岡山ОBとして注目された(14)石原崇兆はベンチスタートとなりました。

2.レビュー

J2第4節 岡山vs金沢 時間帯別攻勢守勢分布図

(1) 岡山布陣変更のねらい

岡山の布陣変更のねらいは、
①(44)仙波に相手ライン間、選手間でボールを受けさせること、そして前線に効果的なパスを出させることにあります。
これは開幕戦の磐田戦で(48)坂本一彩が担っていた役割の補完であると筆者はみていました。

そして、運動量豊富な(8)ムークを2トップの一角に据えることで、
②(18)櫻川との距離感をよくする
③前線からのプレッシャーを効果的な形に改善する
これまでの3試合でも惜しいシュートは放っていた
④(8)ムーク自身の得点能力を更に発揮させることにあります。

(2) 仙波大志の存在感①~受け手として~

21分岡山最終ラインからのビルドアップから(14)田中雄大のジャンピングボレーシュートに至ったシーンを振り返ります。

J2第4節 岡山vs金沢 21分 岡山最終ラインからのビルドアップ

惜しくも得点には至りませんでしたが、ビルドアップから崩し切ったという点で大変有意義であったと思います。

金沢2トップに対して岡山は(6)輪笠祐士が最終ラインに下りて3枚でビルドアップを開始します。(6)輪笠はボランチの位置に上がった(43)鈴木喜丈に当てたリターンを右の(5)柳へ。
持ち出した(5)柳は前線の(18)櫻川へ鋭いグラウンダーの縦パスを入れます。柳の進化を感じ取れるパスですね。
(18)櫻川は右サイドに張る(16)河野諒祐へボールを逃がします。
(16)河野は前方に金沢(27)レオ・バイーアが対峙しているとみるや、ボールを引き出しにきた(14)田中へ横パス。(14)田中は中央へドリブルします。

J2第4節 岡山vs金沢 21分 田中のシュートに至ったシーン

中央へドリブルした(14)田中は金沢最終ラインと中盤の間でポジションを取る(44)仙波へショートパスを出します。
金沢はここが奪いどころとばかりに、ダブルボランチと(10)嶋田の3枚でプレスに。ここで奪って(7)加藤潤也に出すねらいがあったと思います。
しかし、(44)仙波はこの狭いスペースでボールを受けて再び櫻川へ。
この一連のパス交換で金沢は中央に引きつけられています。
ここで(18)櫻川から右外の(16)河野へ。(16)河野は良質のクロスを上げ、ゴール前へ走り込んだ(14)田中のフィニッシュに繋げたのでした。

筆者はこのシーンを観て、別の試合のあるシーンを思い出しました。
磐田戦の15分のシーンです。

憶えているはずです。磐田戦のレビューでも触れていました。

J2第1節 磐田vs岡山 15分のシーン

(5)柳から(18)櫻川へ縦パスが入り、右の(16)河野へ展開。
(16)河野から再び中へという展開は金沢戦の21分と同じです。
この時は(16)河野からのパスを(6)輪笠が受けて(48)坂本へ縦パスを入れましたが、磐田の(34)針谷がクリア、(43)鈴木がこのボールを拾い、左の(22)佐野へ展開しました。

ビルドアップのパターンはほぼ同じなのですが、外から中へ戻した後のパスの受け手のポジションが異なります。磐田戦15分の(48)坂本はボックスに近い位置、金沢戦の21分の(44)仙波は相手選手の密集(三角形)の中でパスを受けています。
磐田戦の15分のシーンは最終的に左から中央への戻しから(6)輪笠がクロスを入れ、あわやゴールというシーンに至りましたが、中央から左へ展開、更に中央に戻している分、攻撃に時間がかかってしまいました。
当然、攻撃に時間がかかれば相手の守備態勢は整います。
仮に(48)坂本が図示しました密集(三角形)の位置まで下りて、ボールを受けていれば、金沢戦のようにもっと早い展開でゴールに迫れていた可能性があったと、金沢戦を観た後に筆者は振り返っています。

ではこの違いはどうして生まれたのか、それは2人のプレースタイルの違いです。(48)坂本は本質的に点取り屋です。U-20アジアカップでも上手くライン間、選手間でボールを受けていますが、やはり自身がターンしてシュートを放つ意識が高いので、自然とボールを受ける位置も高くなっています。またこの磐田戦は岡山でのデビュー戦でもあり、早く得点を上げたいという意識も強く働いていたのではないでしょうか?

一方で(44)仙波は攻撃的とはいえ、ミッドフィルダーの選手です。ボールキープの技術と俊敏性を持っているため、多少下りてでも積極的に狭い局面でボールを受けていました。

つまり、(44)仙波はこの金沢戦で(48)坂本の代役というよりは(44)仙波自身の個性をアピールし、岡山の攻撃に新味をもたらしたといえるのです。

ここまでは(44)仙波の受け手としての話でした。次はパスの出し手としての話と、(8)ムークのはたらきについて振り返ります。
ここはやはり岡山2点目のゴールシーンを中心にみてみます。

前半、ジャンピングボレーを放つ田中
水戸戦欠場の不安を拭うハッスルぶりであった

(3) 仙波大志の存在感②~ムークの献身~

このシーンは動画がわかりやすいと思います(作図に疲れた…いや独り言です)(※1分22秒付近からです)。

63分、岡山の貴重な追加点も実は味方スローインを金沢のトップと中盤の間で受けた(44)仙波が起点になっています。(44)仙波から(6)輪笠へ。(6)輪笠はワンタッチで縦に(8)ムークへ。
(8)ムークは中央にドリブルしながら、ついてくる(17)梶浦をターンで剥がし、金沢中盤と最終ラインの間に入った(44)仙波にパス。
この時点で金沢の選手の目線は(44)仙波と(18)櫻川に集中していることが映像から見てとれます。

筆者はサッカー経験者ではないので技術的な考察は弱い(というか…ほとんどできない)のですが、このシーンでは(44)仙波がゴールへ向かってスピードアップしながら、至近距離の(18)櫻川の脚元に勢いを殺した優しいパスをつけている点がスゴイと思いました。

そして(8)ムークの体の強さが出たシーンでもありましたし、左利きの(35)孫の右側に入ったことで(35)孫が足でボールを処理できなかったのではないかと推測します。

いつも隣で一緒に観戦している友人が思わず「巧い!」と声を出していました。

これまでの3戦はおとりとして、最初にボックス内に侵入することが多かった(8)ムークでしたが、この場面では最後に登場するフィニッシャーとして結果を残しました。これまで3戦の献身ぶりが報われたようなゴールでといえます。本人はインタビューで「メッシ」を引き合いに出していましたが、木山監督の新体制会見の冒頭での「メッシが…」を思い出してしまいました。

仙波のパスについては、この得点シーンの前の53分、惜しくもオフサイドになってしまいましたが、ネットを揺らした(18)櫻川へのパスも見ていて気持ちよかったです。こちらについては現地で撮影した写真をアップします。

引きつけて出す仙波のパス

ここまでの(44)仙波を中心とした記事内容をみていきますと、常に(18)櫻川の名前が入ってきます。いかに2人の距離感が良かったかを物語っていると思います。

この試合での(18)櫻川は(44)仙波との関係性の良さのみならず、32分GK(21)山田大からのロングフィードを相手DFを背にしながら胸で正確に受けて反転、タッチライン際を敵陣奥まで侵入したシーンや、76分金沢に押し込まれている場面で、こぼれ球を受けて反転、マーカーの(35)孫を振り切ってクロスまで持っていったシーンなど、重戦車並みの存在感を発揮しました。現状ではボールを納める正確性、時間をつくる能力では、昨年在籍したミッチェル・デュークより上かもしれません。

仙波と櫻川の関係性がよくわかる
彼らが同じ一枚に収まるシーンが多かった
金沢孫を振り切ろうとする櫻川

(4) 強いネガトラへの意識

今回は(44)仙波の話ばかりしていますので、仙波がボールを失ってしまったシーンも採り上げてみたいと思います。
59分、岡山CKを(95)バイアーノがヘッドでクリア、こぼれ球がボックス外の(44)仙波の脚元へ届きますが、ファーストタッチが流れて(95)バイアーノに奪われます。

(95)バイアーノがピッチ中央へドリブルを開始、チェックにいった(8)ムークも吹っ飛ばして岡山が大ピンチになりかけたシーンです。
この場面はカバーに入っていた(6)輪笠が簡単に飛び込まずに中央へのドリブル進路を消しながら、(95)バイアーノとの距離感を保ちます。
そうしながら(95)バイアーノの右を走る(9)林誠道に抜かれないように背走しながらギアチェンジした判断と身体能力が素晴らしかったです。
おそらく(95)バイアーノを追走する(44)仙波の動きも目に入っていたと思いますので、自身は(9)林のチェックに移行したのだと思います。

冒頭で「今季は昨季からの物語の続きである」と述べましたが、それは具体的に選手のプレーにも現れています。特に開幕戦からネガティブトランジションへの各選手の意識は強いと思います。
そんな中でこのシーンを採り上げたのは、ファール等の力技で止めることなく、数的不利の状況で相手のカウンターを阻止したからです。

(5)先制点のシーン~オフサイドルールの確認~

さて、金沢が盛んに岡山のオフサイドを主張していた先制点のシーンもみてみましょう。
まずオフサイドの競技規則を確認します。

競技者の頭、胴体もしくは足の一部でも、ボールおよび後方から2人目の相手競技者より相手競技者のゴールラインに近い位置にある。

JFA サッカー競技規則22/23より

端的に述べますと、味方がパスを出した瞬間に上記の位置にいた場合はオフサイドになるということです。

(16)河野のFKを(18)櫻川が競り勝ち、こぼれたボールを(5)柳が(35)孫を前にしながら右足でキック、ゴールに向かうボールに対して、ほぼゴールライン上で金沢(8)藤村がクリア、クロスバーに当たった跳ね返りを再び(5)柳が右足に当て、その球を(23)バイスが押し込みますが、(5)柳が右足に当てた時にボールとゴールの間には、金沢の選手はいないように見えましたので、このシーンがオフサイドではないかということです。

最初に(5)柳が触った直後に(1)白井が前方に飛び出しています。その後、カバーに入った(8)藤村は勢いそのままにゴール内、つまりピッチ外に出ていますので、オフサイドラインはおそらく(1)白井か、ボールのいずれかがであると思われます。そうなりますと、(23)バイスも試合後のコメントで示唆しているようにオフサイドであったのかな?と思えます。
(23)バイスだけではなく、(43)鈴木もオフサイドポジションかもしれませんね。

■ヨルディ バイス選手
これまでのキャリアで50ゴール以上取ってきて、一番きれいではない形のゴールだったが、重要なゴールだった。ハーフタイムに入る直前に決められて、チームに自信とパワーを与えてくれたゴールだった。守備も成長しないといけない。4試合で3失点は多すぎる。ここまで無敗だが、より謙虚に戦っていきたい。昨年から何度も言っているが、岡山にはJ2で最高のファン・サポーターがいる。コロナ禍で難しい時期があったが、今は歌えるようになったので、今日は12人で戦っている気持ちだった。

ファジアーノ岡山HP 金沢戦後のバイス選手のコメント

逆にこのシーンはなぜオフサイドと判定できなかったのかについて興味がわきます。DAZN解説の佐藤慶明さんは(1)白井の戻りをどう捉えたかについて言及していました。少し遅れながら(39)庄司も戻っていましたが、どうでしょうか?

筆者は今はバックスタンド中央下付近にいますが、Cスタのメイン南側上方から観戦していた時期がありました。上から見ますと角度がついていますからある程度分かりますが、ピッチレベルではごちゃごちゃしていて見えていなかったかもしれませんね。

この点はジャッジリプレイで採り上げてもらえるなら、確認したい点です。

昨季はこんなことが起こると、外野から様々な誹謗中傷を受けていた記憶もありますが、最近は残念ながらこの件よりも酷い誤審や審判のゲームコントロールの不手際(偏り)が目立っている気がします。

さて、(23)バイスのコメントにもありますが「非常に重要なゴール」であったことは事実です。この金沢戦、全体的に良好な内容でしたが、前半は特に試合を支配、波状攻撃を仕掛ける時間帯がありながら、なかなか得点を奪えませんでした。悪い流れになる前という意味でも貴重なゴールでした。

この角度からでは何とも…

3.光る修正能力と今後の課題

それにしましても、ファジアーノ岡山の大きな強みは、短期間での修正能力にあると思います。
前節の水戸戦からわずか1週間しか経っていませんが、的確な布陣変更を行行った木山監督、そしてその布陣変更の意図を汲み取り、ピッチ上で見事に表現した選手たちの柔軟な姿勢や能力には尊敬の念を覚えるのです。
今後の課題には、金沢より強度、スピードが増す相手にこの試合と同じようなサッカーができるかという点があげられます。
その意味では次節の甲府は格好の相手といえるのではないでしょうか?

4.雑記

その他のことについて少々述べます。
3点目は(41)田部井涼が金沢守備陣の関心を引きつけていましたね。おそらくGKもDFもクロスに絞っていたと思います。そこでしっかりシュートを打ち切る(2)高木友也も見事でしたし、評判どおりの力強いキックでした。元横浜FCコンビに今後も期待したいです。
相手の金沢についてですが、昨日の試合を観た限りでは攻撃のバリエーションが他チームと比べると乏しいように見えました。

筆者は今季の金沢は昇格プレーオフ進出候補をみているのですが、柳下監督は昨季あたりから、選手のプレーの責任について継続的に言及しています。
普段から観ているチームではないので軽々しいことはいえませんが、問題の根は深いところにあるのかな…という感想を持ちました。

三名園を控えるという共通項もありますし、個人的に実は「アイランド」や「パッション」などのチャントが好きなチームでもあります。

修正といえば、岡山の応援よかったですよね。ゲート10の皆さまにも感謝ですし、ファジ丸クラップの企画もよかったです。
清水戦の15,000人をバブルと捉えるなら、この試合で8,000人以上の集客は上出来だと思います。

岡山のサッカー文化、確実に熱く根づいていると思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。

※敬称略

躍動する田中
狭くても受けて、出す
ムークもいつもどおり献身的
金沢で最も可能性を感じた嶋田

【自己紹介】
麓一茂(ふもとかずしげ)
地元のサッカー好き社会保険労務士
JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ
ゆるやかなサポーターが、いつからか火傷しそうなぐらい熱量アップ。
ということで、サッカー経験者でもないのに昨シーズンから無謀にもレビューに挑戦。
持論を述べる以上、自信があること以外は述べたくないとの考えから本名でレビューする。
レビューやTwitterを始めてから、岡山サポには優秀なレビュアー、戦術家が多いことに今さらながら気づきおののくも、選手だけではなく、サポーターへの戦術浸透度はひょっとしたら日本屈指ではないかと妙な自信が芽生える。

応援、写真、フーズ、レビューとあらゆる角度からサッカーを楽しむ。
すべてが中途半端なのかもしれないと思いつつも、何でもほどよく出来る便利屋もひとつの個性と前向きに捉えている。

岡山出身ではないので、岡山との繋がりをファジアーノ岡山という「装置」を媒介して求めているフシがある。

一方で鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派でもある。
アウェイ乗り鉄は至福のひととき。多分、ずっとおこさまのまま。

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