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【ファジサポ日誌】122. 更なる熱狂空間を目指して ~第26節 ファジアーノ岡山 vs ジェフ千葉 マッチレビュー ~

昨シーズンのホーム戦で千葉に0-5の完敗を喫したリベンジへの期待感、もちろん今シーズン前半の敗戦(1-2)を踏まえての巻き返しへの期待感、ドローながら意図した戦いが出来ていた前節を踏まえての期待感。
そうした期待感が集約されて、J1昇格への期待感に繋がっている。

そんな位置づけの試合であったと思います。
そんな試合であったからこそ、スコアレスドローという結果には普段以上の落胆を感じた訳ですが、試合内容としては前節から改善されている面や意図した攻守が行えている面も多々あり、チームとしての努力の跡がみえるが故に余計にもどかしさが募ってしまいます。

振り返ります。

1.試合結果&メンバー

8月のホーム3戦、アウェイ近場2戦という恵まれた環境下においてのホーム2戦連続のドローという結果は痛すぎるといえます。
前節に続き、昇格を争うライバル他クラブが岡山を勝点で上回ったため、順位は6位に後退、7位(いわき)が迫ってきたことからも、焦りの気持ちは禁じ得ません。しかし、前書きでも述べましたように、前節山形戦と比べますと、課題解決という点ではかなり出来ていた面も感じられました。こうした点を中心に述べていくレビューになります。

J2第26節 岡山-千葉 メンバー

メンバーです。

前節のレビューで岡山が「相手をみながら」サッカーをしている点についての好感を述べましたが、今節も千葉のスピードを意識していた岡山のメンバーであったといえます。
特長的であったのがサイドの人選です。不動のRWB(88)柳貴博がベンチスタート、前節LWBで先発した(23)嵯峨理久がより得意といえるRWBに回り、LWBには久々に(17)末吉塁が復帰しました。
RWBの後方、RCBもレギュラーとして定着していた(4)阿部海大がベンチ外、久々に(15)本山遥が入りました。
各選手のコンディションや意図的な休養という面もあるかと思いましたが、サイドにスピード豊かな選手を置いた理由は、千葉のサイドのスピードを意識したものであったといえそうです。

前線に関してもMF(10)田中雄大がメンバー外、RST(右セカンドトップ)には(27)木村太哉が久々に先発で起用されました。

岡山はサブにもMF(25)吉尾虹樹やFW(11)太田龍之介といった大卒新人が名を連ねます。

千葉の大きな変化はLSB(67)日高大のメンバー外でした。
代わりに磐田から移籍加入した(55)小川大貴がスタメンで起用されました。

久々の起用となった(11)太田
J初ゴールが待たれる

2.レビュー

J2第26節 岡山-千葉 時間帯別攻勢・守勢分布図

岡山も千葉もお互いにアタッキングゾーンには進入出来ていたのですが、互いに決め手を欠いた印象は強く残りました。これが決定機(筆者集計)の少なさに繋がっています。
お互いに攻撃面というよりは守備面が目立っていたといえ、互いに勝点3を欲していた状況とは裏腹な試合内容であったといえます。

(1)ハイプレスに来ない?

まず千葉の出方から振り返りたいと思います。

今節と前回の対戦、そして昨シーズン大敗時の岡山のボールロスト位置をみましても、岡山のロスト位置は過去2戦と比べても低くはありません。

千葉と言えばハイプレスなのですが、今節に関していえば、これまでと比べるとプレスの回数、強度とも過去の対戦と比べても下回っていたと感じました。それでも危ないシーンはあった訳ですが、これまで程ではなかったと思います。

(24)藤田息吹や(7)竹内涼の両CHがしっかり最終ラインからのボールを引き取っていた面はありましたが、どちらかと言うと、千葉が意図してハイプレスの発動を控えていたようにも見えました。
その理由の一つは、前節、終了間際に逆転を許した横浜FC戦も関係していて、夏場の体力消耗により後半の運動量低下を嫌ったのではないかと推察されます。

岡山としては非常に助かる展開であった訳ですが、おそらく想定としてはいつもどおりのハイプレスを仕掛けてくる千葉の姿があったのではないかと思ったのです。

(2)千葉の出方が岡山の攻撃に及ぼした影響

そのように思った理由の一つが、岡山のスタメンにありました。
おそらく(27)木村を起用した意図は、千葉のハイプレスを支えるハイラインの裏をしっかり突くことにあったのではないかと思うのです。

千葉のCB(13)山越康平の今節と前節横浜FC戦のヒートマップを比較しますと、やはり前節の方が前でプレーしている回数が多いことがわかります(ポジション変更はなかった筈です)。
このデータのみでラインの設定までを厳密には判断できませんが、千葉の戦いぶりがかなり慎重であったとはいえるかと思います。

こうなりますと、岡山としてはアテが外れた面はあり(27)木村を先発で起用した効果が理屈上は出にくくなってくる訳です。

最終ラインの裏に広いスペースがあるか、狭いスペースしかないかという違いです。しかし、実際には特に前半の(27)木村は千葉最終ラインの裏を十分に突けていたのです。この点が(27)木村の好調ぶりを反映していますし、主に彼への配球を担った(7)竹内のフィードの正確性をも示しています。山形戦での(7)竹内のフィードは前線とのタイミングが合わないものが多く、結果的に多くのロストに繋がっていたのですが、今節ではその点をしっかり修正してきていたように見えました。

J2第26節 岡山-千葉 千葉の最終ライン設定による(27)木村のスペース

極端な図で恐縮ですが、図で表すとこういうことです。
相手の最終ラインが高い方が後方のスペースへもボールを出しやすいし、(27)木村のランニングも活きやすいということです。
しかし、繰り返しになりますが(27)木村は普段より低めの千葉最終ラインの裏も突けていました。

しかし、この事が皮肉にも岡山の攻撃の思わぬ停滞も招いたと筆者は考えます。
前項の岡山のボールロスト位置を見ていただいてもわかるのですが、岡山のロスト位置が千葉陣内中央、千葉最終ライン付近に集中しています。
これは、つまり岡山が必要以上に千葉の裏に固執したことで、千葉最終ラインに跳ね返されていたことを示しているといえます。

そこで前半終了後、このような感想を持った訳です。

そして更に岡山の攻撃に大きな影響を与えたのは、セットプレーが多くなってしまったことです。

先ほどの図からもお分かりいただけるかと思いますが、相手の最終ラインが低いと、その裏のスペースからクロスを上げるにしても相手の戻りは早くなり、クロスを防がれる可能性が高くなります。寧ろ、元来岡山はクロスを上げ切ることに固執せず、CKを取りに行く傾向が強いといえます。

通常の岡山の攻撃パターンを考えれば、セットプレーが強みの筈なので、それで良いのですが、この日はそうではなかったといえます。
その大きな理由は、メンバーを見れば一目瞭然なのですが、プレースキッカーがLST(19)岩渕弘人しかおらず、かつ有力なターゲットDF(5)柳育崇もベンチに控えていたからです。
(19)岩渕も質の高いキックを蹴ることは出来るのですが、同時に岡山のトップスコアラーでもあり、出来ればゴール前にいてほしい選手です。

千葉の前節横浜FC戦をチェックした際には、主に福森晃斗ですが、その速い球質に少々後手を踏んでいる印象がありました。

岡山で速い球質といえばMF(39)早川隼平が思いつきます。改めて彼の不在は痛かったと思いますし、キッカーとしての(10)田中雄大の不在も痛かったと感じます。後半、MF(33)神谷優太が投入され、CKのキッカーを務めました。その速い球質から可能性を感じましたが、いかんせんプレー時間が短かったといえます。

ターゲット役という事でいえば、スタメンに長身の選手がほとんどいなかった点も響きました。

前述しましたように千葉という相手を意識したメンバー構成にした結果、皮肉にもセットプレーの強みをほとんど失ってしまった。このように言えるのかもしれません。

ちなみに守備面では、今節のメンバーの効果はしっかり発揮されていて、特に千葉RSH(7)田中和樹のスピードには対面した(17)末吉を中心にしっかりついていけていたと思いました。これもCF(22)一美和成が千葉CH(4)田口泰士をしっかり消していたことで、千葉ボールをサイドに誘導し、千葉の攻めを単調なものに出来ていたからであるといえます。

左サイドに関しては、(67)日高不在の影響は思っていたよりも大きく、(77)ドゥドゥの突破もほとんどが単独の形になっていたと思います。
岡山として対応しやすかったと思います。

(24)藤田(息)から右ポケットへの配球
もう少し早いタイミングで出したい
前半(43)鈴木のヘディングシュートはポストへ
ボール1個分をなかなか制せられない

(3)バイタルを突け

では、岡山の攻撃が常にアテが外れた状態を継続していたかというと、そういう訳でもなく、この試合の評価を難しいものにしています。

これも先ほどの図から(22)一美と(19)岩渕の位置を見ていただいたらわかるのですが、千葉最終ラインが低い位置を設定した場合、控えめながらもハイプレス自体は行っている千葉ですから、千葉最終ラインの前、いわゆるバイタルゾーンにスペースが出来るのです。

岡山はこの試合を通じてこのバイタルゾーンを利用した攻撃は出来ていましたし、最も得点の匂いを感じました。

15分千葉陣内中央から(15)本山が出したスルーパスを(19)岩渕が千葉中盤と最終ライン間で受けて放ったシュートや、後半2度ともオフサイドになってしまいましたが、(22)一美と(19)岩渕の関係性でネットを揺らしたシーンは、(4)田口を消しながら攻撃へと転じる(22)一美の立ち位置を巧く使った攻撃といえます。
(22)一美のハードワークぶりが却って彼への負担という面で不安も感じさせるのですが、細部をみていきますと(9)グレイソンへの全部お任せ感までは感じさせず、何となく彼の得点への集中力をチームとして上手く残せているような気もするのです。

前半、(19)岩渕の決定機

そうなりますと、試合後の(7)竹内のコメントのとおり(ファジゲートなので貼りません)、ゴール最終局面での意思疎通を深めていく、今の岡山のサッカーを続けてもらうしかないのかなと、至って平凡ではありますが、そのような結論に至ってしまうのです。

後半(22)一美との関係性から抜け出した(19)岩渕がループシュート、決まったかに見えたが…
今度は(19)岩渕との関係性から抜け出した(22)一美がGKに詰めたこぼれ球をシュート。ネットは揺らしたがオフサイド。

3.新スタブレインストーミングについて

そして、まとめに代えまして、この試合の始まる前、日中にCスタで開催されました「GATE10Uniоn新スタジアム推進室」主催の「新スタジアムブレインストーミング」について、公開できる内容をリポートさせていただこうかと思います。

ブレインストーミング会場より
普段は入れない場所

昨年10月にハレノワで開催されました川渕三郎さんの講演がきっかけになっています。この講演で川渕さんが「新スタジアムには市民の賛同が必要である」と述べられたことをきっかけに、GATE10ユニオンが「何かできることはないか?」と今年に入って新スタジアムに関するアンケートを実施、そのアンケート集計結果を私のような一般サポーターの声と共に、ファジアーノ岡山、つまりクラブ側に届けるという趣旨の催しです。

よって出席メンバーは、普段から応援でリードをとられるGATE10メンバーの皆さま、クラブからは森井社長や、いつも選手を先導されている渡辺さん(もし漢字が間違っていたらごめんなさい)、応募した一般サポーター約20人となりました。

「ブレインストーミング」というタイトルではありましたが、いわゆるグループに分かれて付箋でどんどん意見を出し合うということではなく、GATE10メンバーの方からアンケートの結果についてご報告いただき、その後、森井社長に対して一般サポーターが新スタについて質問、要望を行っていくという形式でした。
どちらかといえば、サポーターカンファレンスに近い形式のように思えました。こうした形でのクラブとサポーターの意見交換は2015年以来、実に9年ぶりの開催とのことでした。

ここからは筆者の感想も踏まえながら述べていきますが、まず一言で述べますなら、これまでの報道や普段からSNS等で述べられている「新スタジアム論」について、ほぼ論点を余すことなく森井社長と共有できたこと、クラブの考え方、現在の立ち位置を読み取れたことは大きな収穫であったと思います。

可能な範囲で論点を整理させていただきますと、

① 25,000人規模の街中スタジアム
 ○入場料収入をもっと増やして、稼げるクラブにすることで、チームを更
  に強化したい
 ○全ての可能性を否定はしないが、街中スタジアムとして、街全体で稼い
  でいくイメージ
 ○代表戦を開催したい
 ○街中スタジアムの場合、交通渋滞対策に如何に目途をつけるかが課題
 ○試合日以外の使用(ミーティングポイントとしての活用など)
 ○ビジャレアルからの学び

② Cスタの評価
 ○屋根がない、バクスタコンコースの狭さは大きな課題
 ○現状で陸上競技との利用調整が難航することがある
 ○シーズン移行後は更に陸上競技との調整が難航する可能性がある
 ○Cスタ改修も全否定はしないが、改修コストは新スタ建設のそれを上回
  る

③ アリーナは街にあった方が良いが…

④ サッカーに関心がない層に如何に訴えていくか
 ○政田の時とは事情が違う
  ・ビニールプール使用はかわいそう
  ・新(専用)スタジアムはぜいたく品
 ○新スタがファジサポーターだけのものではないという言葉の必要性
 ○街の人の自分事にいかにしていくのか
 ○打ち出すタイミング

出席者でもしお読みいただいている方がいらっしゃれば、過不足等をご指摘いただけましたら有り難いのですが、ポイントはこんなところであったと思います。

論点そのものは、そんなに目新しいものは少なかったと思います。
論点に対するクラブの認識も、率直に述べますなら「まあそうでしょうね」というものが多かったと思います。

一方で、こうして論点を集約することで見えてくることもあります。

まずは、新スタジアムはクラブが発展してから求めるものではなく、発展するために必要なものという点です。つまり、新スタジアムは「成果ではなく手段である」ということです。

論点の①では、クラブ強化のために、言い換えるとJ1に上がる(定着する)ために新スタジアムが必要といえますし、②に関しては実は喫緊の課題ともいえるのです。
そして、広く新スタジアムが「何の手段」であるのかということを考えるのなら、「サッカーを通じて地域の価値を高める」ためのスタジアムといえるのではないでしょうか。

こうした考え方を、ファジのサポーター以外、サッカーに関心がない方、新スタジアムに反対している方に広げていくための知恵という部分で岡山の新スタ建設は、あえて厳しい言葉で述べるなら「停滞」しているのかもしれません。

今後もこうした催しの開催を続けていくことが重要と筆者は考えており、次のテーマとしては、新スタの必要性をどのように一般世間に打ち出していくのか?この点をブレインストーミングで出し合うというのもアイデアのひとつとして考えています。これはGATE10ユニオンさんへの感想として、筆者からもお送りしようと思います。

実はこの日は他地区にお住いのSNSのフォロワーさんが、お見えになられてCスタ初観戦を楽しんでいただきましたが、やはり試合内容がいわゆる「塩試合」の面もあり、謝る必要はないのですが、ちょっと残念だったなとの想いもあります。

そうなると、新規のお客さんを掴んでいくためには、ゲーム内容か、スタジアム自体が面白くないとダメであると思います。稼げる新スタジアムが出来れば、クラブが強くなり、サッカーが面白くなる。そして、街が面白くなる。そんな循環をつくっていきたいと思いました。

最後に企画いただきましたGATE10ユニオンの皆さま、森井社長、クラブの皆さまに貴重な場に参加させていただいたことを感謝いたします。

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

※一部敬称略

【自己紹介】雉球応援人(きじたまおうえんびと)
地元のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。
2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。

レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。
鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

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