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mizuki | 目端に映る短編小説
2022年11月6日 13:29
「今日でもうおしまいなんだ。もうみんなの先生じゃなくなるが、お互いに頑張って生きていこうな。」という台詞が教壇での私の最後の言葉だった。それは、彼ら生徒たちにとっても私からの言葉としては最後となるものだったし、私の教師人生としても最後となるものだった。 私は定年を目前にしていた。そして時代に取り残された。グラウンド拡大、および最寄駅からの通学を楽にするために、改修工事が行われることになった。
2022年10月6日 01:24
学校で一番中のよかった男の子のしょうた君は、学校で一番の変わり者だった。 彼はよく、赤いマントを首に巻いて、それをなびかせながら教室に入ってくる。 「やーっ!」と走りながら嬉しそうにそれをはためかせ、そしてクラスの仲良しの友達のところに飛び込んでいく。みんな、変だなぁ、と思っていたが次第にそれが羨ましくなって、あちらこちらで好きな色のマントを首に巻く男の子が現れ始めた。時は大ヒーロー時代で
2022年9月30日 02:49
割烹着の店主からお釣りをもらって先生は暖簾をくぐった。私もその後ろに続くと、雲の切間から碧い空が広がっていた。夏空は、もっと風をよこせと急かしているようだ。太陽の下の雲は忙しなく動き、アスファルトは沸騰寸前の薬缶のようで、絶えず陽炎を揺らしていた。 「珈琲が好きなら、一つ、この近くにとても美味しいcafeがあるんですよ。」と先生は言った。「よろしかったら、どうですか?」 「私でよろしければ