ビジュアルフィロソフィ - 映像制作と映像広告と哲学

映像制作。監督・DP。映像はダンスのようなものだ。自分が踊れなくても踊りを見ると上手い…

ビジュアルフィロソフィ - 映像制作と映像広告と哲学

映像制作。監督・DP。映像はダンスのようなものだ。自分が踊れなくても踊りを見ると上手いか下手かはすぐに分かる。小さな決定の積み重ねが見る人の無意識に働きかける。映像の裏側を探しましょう。

記事一覧

失うことと、失うことでしか手に入れることのできないもの。 - サウンド・オブ・メタル

驚くことに、聴覚を失うということを体験することができる映画だ。ダリウス・マーダー監督/共同脚本。 日常の外から聞こえる音と聴覚を失った主人公の聞こえる音が繰り返…

マルコム&マリー Malcolm & Marie

Sam Levinson監督。二人の役者と、一つのロケーション、ブラック&ホワイト、特別なプロップ無し、一夜の出来事の106分。 美しい映像。劇作のような、こんな映画作りたい…

AINU MOSIR アイヌモシリ 映画

NetflixUSAでも公開された「アイヌモシリ」。リベリアのゴムプランテーションを描いたOut of My Handの福永 壮志監督。 アイヌと現代社会の中でアイデンティを築く14歳の…

ニーナ・シモン 私にとって自由が何か教えるわ。

Liz Garbus監督のニーナ・シモンの素晴らしいドキュメンタリ。 - New York, 1968 自由とは? それは感覚なの。本当にそれは感覚なの。 人を愛したことのない人に愛する…

ブルースは人生を語る手段だ。楽しむためじゃなくて人生を理解するためにある。 マ・レイニーのブラックボトム

アメリカの最も偉大な劇場作家の一人オーガスト・ウィルソン。20世紀の各年代ごとに1本の脚本を書こうと決めたのだ。 1900 - Gem of the Ocean 1910 - Joe Turne's Come a…

ウィン・ハンドマン 人生は短いが芸術は長い

ウィン・ハンドマン 1922年生まれ。アメリカン・プレース・シアターのディレクター。Netflix ドキュメンタリ。 2020年4月になんとCovid19で亡くなっている。 彼は演じな…

自分を変えるな、世界を変えろ。 - Nike Japan “You Can’t Stop The Future”

Nikeの話題になった映像。監督はJovan Todorović、クリエイティブダイレクターはCurro De La Villa。 エージェンシーはもちろんW+KのWieden Kennedy Tokyo。 日本に住む…

想田和弘監督 - 観察する ドキュメンタリの手法

想田和弘監督がフランスの映画祭のグランプリ取ったと言うニュース見た。フィルム・ヴェリテの監督が好きだ。 ドキュメンタリーのスタイルにはざっくりこんな種類がある …

長回しによる不思議な共感 -象は静かに座っている フー・ボー

29歳の中国の映画監督。この映画を作り終えて自殺する。才能のある若い映画監督がなぜ自殺しなければなかったのだろう。 ストーリーを追うための映画ではない。 時間を圧…

幸せな偶然の瞬間がカメラの前で起こるまでひたすら撮影を続ける - エマニュエル・ルベツキ によるiPhone12Pro

シネマト グラファーの巨匠エマニュエル・ルベツキがiPhone12Proで撮影している非常に美しい映像が公開されています。 ”僕がシネマト グラファーとして働き始めた時、カ…

圧倒的な映像の力。FOR SAMA ドキュメンタリ

見終わって、外を見ると子供達が遊んでいて、近所の人が庭の手入れをしている。心の中で思う。 なぜ逃げないのか。 現実が遠ざかるほど、圧倒的なリアリティでシリア・ア…

世界の善は歴史に残らないような行動によって支えられている - A HIDDEN LIFE - テレンス・マリック

あまりに美しいテレンス・マリックのA Hidden Life。 テレンス・マリックはハイデガー哲学を学び、哲学者にならずに映画監督となった。 周りの世界が流れる方向に流れる…

テレビや商業映画で多用される手法です。 映像に言葉がないのです - アルフォンソ・キュアロン ROMA

NetflixROMAのメイキング映像が面白い。アルフォンソ・キュアロンはここで、彼が本当に作りたい映画を作れた最初の映画と語っています。 彼の記憶だけを頼りに、演者はほ…

フィルムとはまるでミュージシャンが楽器を選ぶようなものだ - Ali & Ninaスカンジナビア最後のセルロイドフィルムラボ

美しいスカンジナビアで最後のラボ。父娘で運営するAli & Ninaの美しいドキュメンタリ。 デジタルの前はセルロイドのフィルムで撮影しラボで現像されていた。 ”現像その…

ドキュメンタリ映画とは人生の交換なのだ - アート・オブ・ドキュメンタリー・フィルムメイキング

複数のドキュメンタリ監督による素晴らしいインタビュー。 ダイレクティング、カメラワーク、編集、サウンド、サウンドデザイン、サウンドトラック、ナレーションなどのテ…

LIFE Needs Truth ニューヨークタイムズ ブランディング映像

2019年のカンヌライオンズ受賞のコンテンツも素晴らしかったが、こちらも同様のフォーマットを踏襲した、素晴らしいブランディング映像。 Viva La Vulvaなどカンヌライオ…

失うことと、失うことでしか手に入れることのできないもの。 -  サウンド・オブ・メタル

失うことと、失うことでしか手に入れることのできないもの。 - サウンド・オブ・メタル

驚くことに、聴覚を失うということを体験することができる映画だ。ダリウス・マーダー監督/共同脚本。

日常の外から聞こえる音と聴覚を失った主人公の聞こえる音が繰り返しカットされることで、聴覚を失うことが恐ろしいほどに見るものに迫ってくる。外音遮断性の高いヘッドホンをつけて見たい映画だ。

手話の会話は、会話もなく、音楽もなく、自然音と手や体の動きの音が聞こえる。

「このどうしようもなく平凡な世界が

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マルコム&マリー Malcolm & Marie

マルコム&マリー Malcolm & Marie

Sam Levinson監督。二人の役者と、一つのロケーション、ブラック&ホワイト、特別なプロップ無し、一夜の出来事の106分。

美しい映像。劇作のような、こんな映画作りたいと思わせる。

映画好きならにやっとするセリフが散りばめられる。John David WashingtonとZendayaの演技も素晴らしい。

AINU MOSIR アイヌモシリ 映画

AINU MOSIR アイヌモシリ 映画

NetflixUSAでも公開された「アイヌモシリ」。リベリアのゴムプランテーションを描いたOut of My Handの福永 壮志監督。

アイヌと現代社会の中でアイデンティを築く14歳の少年の目を通して物語が進む。

小熊を世話し、神の国に送る儀式。イオマンテ。
熊の魂を盛大にもてなし、神の国に帰ることで、アイヌの大地がとても楽しかったと他の神々に伝えてくれる。それが神と人間の関わり方という。

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ニーナ・シモン 私にとって自由が何か教えるわ。

ニーナ・シモン 私にとって自由が何か教えるわ。

Liz Garbus監督のニーナ・シモンの素晴らしいドキュメンタリ。

- New York, 1968
自由とは?
それは感覚なの。本当にそれは感覚なの。
人を愛したことのない人に愛するという気持ちをどうやって説明する?
言葉にできないでしょう、物事の説明はでできても、こういう感覚は。
でもそうなれば、わかる。
それが私の意味する’自由’。
私にとって自由が何か教えるわ。
’恐れのないこと’

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ブルースは人生を語る手段だ。楽しむためじゃなくて人生を理解するためにある。 マ・レイニーのブラックボトム

ブルースは人生を語る手段だ。楽しむためじゃなくて人生を理解するためにある。 マ・レイニーのブラックボトム

アメリカの最も偉大な劇場作家の一人オーガスト・ウィルソン。20世紀の各年代ごとに1本の脚本を書こうと決めたのだ。

1900 - Gem of the Ocean
1910 - Joe Turne's Come and Gone
1920 - Ma Rainey's Black Bottom
1930 - The Piano Lesson
1940 - Seven Guitars
1950 Fen

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ウィン・ハンドマン 人生は短いが芸術は長い

ウィン・ハンドマン 人生は短いが芸術は長い

ウィン・ハンドマン 1922年生まれ。アメリカン・プレース・シアターのディレクター。Netflix ドキュメンタリ。

2020年4月になんとCovid19で亡くなっている。

彼は演じないことを求め、多くの名優を育てた。

不気味で変わっている彼が知的だからこそ、人生の本質を見抜く力を持っている

ウィンは何よりも作品の中で真実を語ることを求めた
真実の一部は自分を知ること
正直でいなければなら

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自分を変えるな、世界を変えろ。 - Nike Japan “You Can’t Stop The Future”

自分を変えるな、世界を変えろ。 - Nike Japan “You Can’t Stop The Future”

Nikeの話題になった映像。監督はJovan Todorović、クリエイティブダイレクターはCurro De La Villa。
エージェンシーはもちろんW+KのWieden Kennedy Tokyo。

日本に住む異なる背景を持つ3人の女の子のアスリート。一人は日本人、一人は韓国人、一人はナオミオオサカのように黒人の父と日本人の母を持つ。スポーツを通して日々直面する悩みや対立をスポーツを通し

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想田和弘監督 - 観察する ドキュメンタリの手法

想田和弘監督 - 観察する ドキュメンタリの手法

想田和弘監督がフランスの映画祭のグランプリ取ったと言うニュース見た。フィルム・ヴェリテの監督が好きだ。

ドキュメンタリーのスタイルにはざっくりこんな種類がある

1. Verite
2. Re-enactment
3. Talking head
4. Expository
5. Performative/participatory
6. Reflexive
7. Impressionisti

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長回しによる不思議な共感 -象は静かに座っている フー・ボー

長回しによる不思議な共感 -象は静かに座っている フー・ボー

29歳の中国の映画監督。この映画を作り終えて自殺する。才能のある若い映画監督がなぜ自殺しなければなかったのだろう。

ストーリーを追うための映画ではない。

時間を圧縮しようともしない。会話でもう一人のキャラクターが話していたもカットバックしたりフォーカスが移動したりもしない。極めて浅いフォーカスで、話している相手はぼやけたまま会話が続き、沈黙が支配する。中国の内陸部の灰色で埃っぽい都市の中、長回

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幸せな偶然の瞬間がカメラの前で起こるまでひたすら撮影を続ける - エマニュエル・ルベツキ によるiPhone12Pro

幸せな偶然の瞬間がカメラの前で起こるまでひたすら撮影を続ける - エマニュエル・ルベツキ によるiPhone12Pro

シネマト グラファーの巨匠エマニュエル・ルベツキがiPhone12Proで撮影している非常に美しい映像が公開されています。

”僕がシネマト グラファーとして働き始めた時、カメラは機械的だった。映画を撮影したければ、とても高価な機材をレンタルし、フィルムを購入し、現像し、編集のための専用機材が必要だった。

iPhone12は世界中で誰もが映画を作れるようにすると思う。小型でいますぐに映画を撮り始

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圧倒的な映像の力。FOR SAMA ドキュメンタリ

圧倒的な映像の力。FOR SAMA ドキュメンタリ

見終わって、外を見ると子供達が遊んでいて、近所の人が庭の手入れをしている。心の中で思う。

なぜ逃げないのか。

現実が遠ざかるほど、圧倒的なリアリティでシリア・アレッポの徹底的に破壊され、毎日何十発もの爆弾が落ちる中で生活をする普通の家族や子供達。

これはそこで暮らす者でなければ撮ることができないドキュメンタリだ。そこに暮らす、母であり、女性でなければ撮ることができないドキュメンタリだ。

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世界の善は歴史に残らないような行動によって支えられている - A HIDDEN LIFE - テレンス・マリック

世界の善は歴史に残らないような行動によって支えられている - A HIDDEN LIFE - テレンス・マリック

あまりに美しいテレンス・マリックのA Hidden Life。

テレンス・マリックはハイデガー哲学を学び、哲学者にならずに映画監督となった。

周りの世界が流れる方向に流れる中で、ノー。と言い続けた名もなき一人の農夫と家族の実話を元にした映画。

”過ちだと信じていることをすることはできません”

DPはJoerg Widmer。カメラはRed HeliumとDragon 。12mmの超広角レン

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テレビや商業映画で多用される手法です。 映像に言葉がないのです - アルフォンソ・キュアロン ROMA

テレビや商業映画で多用される手法です。 映像に言葉がないのです - アルフォンソ・キュアロン ROMA

NetflixROMAのメイキング映像が面白い。アルフォンソ・キュアロンはここで、彼が本当に作りたい映画を作れた最初の映画と語っています。

彼の記憶だけを頼りに、演者はほぼ演技経験のないものばかり、シナリオもなく、演出もなく、できる限り当時の街や部屋を再現した中でできる限りリアルに撮影された。

当時そのものは存在したか、当時その言葉、言い回しは存在したか、エクストラもその当時の人種や年齢の割合

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フィルムとはまるでミュージシャンが楽器を選ぶようなものだ - Ali & Ninaスカンジナビア最後のセルロイドフィルムラボ

フィルムとはまるでミュージシャンが楽器を選ぶようなものだ - Ali & Ninaスカンジナビア最後のセルロイドフィルムラボ

美しいスカンジナビアで最後のラボ。父娘で運営するAli & Ninaの美しいドキュメンタリ。

デジタルの前はセルロイドのフィルムで撮影しラボで現像されていた。

”現像そのものが重要なのではない、アーティストが彼ら/彼女らなりの最高の方法で表現するためのツールなのだ。フィルムとラボはその一部だ。だから私たちはこれを維持しなければいけない。さもなければ完全に実現させることができないのだから。”

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ドキュメンタリ映画とは人生の交換なのだ - アート・オブ・ドキュメンタリー・フィルムメイキング

ドキュメンタリ映画とは人生の交換なのだ - アート・オブ・ドキュメンタリー・フィルムメイキング

複数のドキュメンタリ監督による素晴らしいインタビュー。

ダイレクティング、カメラワーク、編集、サウンド、サウンドデザイン、サウンドトラック、ナレーションなどのテーマごとに会話が進みます。
映像があまりに軽くなる前の2008年公開という時代のドキュメンタリ映画監督達の貴重な言葉に勇気づけられもします。

"ドキュメンタリ映画とは人生の交換なのだ。"

"撮るものが誰なのか、私自身が誰なのか強く問い

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LIFE Needs Truth ニューヨークタイムズ ブランディング映像

LIFE Needs Truth ニューヨークタイムズ ブランディング映像

2019年のカンヌライオンズ受賞のコンテンツも素晴らしかったが、こちらも同様のフォーマットを踏襲した、素晴らしいブランディング映像。

Viva La Vulvaなどカンヌライオンズ受賞作品もたくさん手掛けるKimGehring監督。

コロナ、ブラックライブズマター、愛国、コミュニティとは、伝統とは、学校に戻るべきか、どこで舵を切るべきか、真夜中のパスタレシピ、どのように私たちが過ごしたか。カー

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