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『フミオ劇場』まとめ

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昭和初期生まれ“めちゃくちゃ系父“のエピソードを小説風連載にしたものです。 家族が被った数々のネタを書き残しておこうと、昨年よりnoteで始めてみました。 80%実話で、20%…
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#家族

フミオ劇場  10話『100円玉を探せ!』

フミオ劇場  10話『100円玉を探せ!』

 昭和51年頃

 テーブル型ゲーム機が
 各地の喫茶店に置かれ始めた。

 初代はブロックくずしだ。

 フミオの妻、三枝子の喫茶店にも
 さっそく1台が設置された。


 自宅が喫茶店🟰自宅がゲーセンとなる。

 子供にとっては
 パラダイス天国楽園。

 しかし誰より驚喜したのは
 大人代表フミオだった。



「貯金箱から100円玉、持ってこい」

 子供たちに命じる。

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フミオ劇場  11話『FCT(フミオクレイジートレーニング)水編』

フミオ劇場  11話『FCT(フミオクレイジートレーニング)水編』



 フミオは教えたがり屋さんである。

 博識で口達者までは許すが
 この男の場合
 粗暴で放逸といった要素が加わるので

 いきなり
 FCT(フミオクレイジートレーニング)と
 呼ばれる案件が発生する。

 そんな言葉はないが。

 まずは、被害者(犬)シロ。

柴系雑種で、番犬用にフミオに飼われたが
 滅多に吠えない。

 日向ぼっこが大好きで
 シロの一生は
 餌を食べて寝るだけの

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フミオ劇場  12話 『先手必勝と女のタバコ』

フミオ劇場  12話 『先手必勝と女のタバコ』

 地元の活発な(荒れた)中学に入学した樹里は刺激的な毎日を疾走していた。

 新入生は先輩たちを真似て鞄をペタンコに、スカート丈を長く、オキシドールで髪を脱色した。

 樹里たちクラスの女子グループで
 ある日決起し
 新米男性教師を糾弾したら泣き出してしまい
 学校で大事になる。

「家庭訪問するからな!」

 職員室で味方に囲まれ
 生き返った新米は、女子たちへ告げた。


 母の三枝子は喫

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フミオ劇場  13話『はよチャンネルまわせ』

フミオ劇場  13話『はよチャンネルまわせ』

 その物騒な風貌から、酒豪と勘違いされがちだが、フミオは下戸だった。よって晩酌しながらのテレビ鑑賞でなく

 ⚫︎お茶(玄米茶かほうじ茶)
 ⚫︎果物(桃党)
    子供は食べたら鼻血出ると独り占め
 ⚫︎お菓子(鴬ボール、羊羹)
 ⚫︎タバコ盆

 ピクニック型鑑賞である。

テレビは一家に一台の時代。家族揃って観るのが日常だ。

 そうなるってぇと、どうなるかってぇと
 フミオのうんち

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フミオ劇場  14話『和彦を殴る理由』

フミオ劇場  14話『和彦を殴る理由』

 高校生となったフミオの息子、和彦は〈飛び出せわれらさらばビバ青春〉をまるごと満喫していた。

 青春時代が夢なんて、あとからほのぼの思うものと森田先生は歌ったが、道に迷いながらもいつでもどこでもキラキラ出来る。

 予選落ちの常連バスケットボール部を部活に選んだのは、ユルッとした活動が理由。練習量が学校いち少ない。他の時間はすべて遊びに費やせる。

 それがこの冬に事態が一変した。

 ドラマの

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初恋やったら何してもええのんか?

初恋やったら何してもええのんか?

初恋の相手は中学の同級生、それはよくある話だが、その子の名前をまるッと娘に名付けた男がいた。

しかも、妻や親兄弟ほか誰にも知られることなく、姓名判断の本を熟読するふりをしながら、
自然な流れで命名していた。

犯人は自分の父だ。

中学生の頃、部屋で宿題をしていると父が入ってきた。

焦げ茶色の古いアルバムを抱えている。

「お、おったか。これワシの中学の卒業アルバムや」

「中学の? ふ~ん。

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フミオ劇場 18話『愛犬ポロの演技』

フミオ劇場 18話『愛犬ポロの演技』

 恋の逃避行からほどなく、フミオは子供のいない久美子のために子犬を飼う。職場にも連れてくほどの可愛いがりようだった。

 県内の最高気温がまた更新されたと、地元アナウンサーの悲痛な声が、カーラジオから聞こえている。連日の暑さにうんざりしていた和彦はフーとため息をつき、平置きの従業員スペースに車を停めた。

 炎天下には意味がないと思いつつ、派手な色のサンシェードをフロントガラスに張る。顔と首には

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フミオ劇場 19話 『フミオ。母との最後の別れと独り暴れ』

フミオ劇場 19話 『フミオ。母との最後の別れと独り暴れ』

 フミオの母孝江、享年91歳。最後の数年間は病院と施設を出たり入ったりだったが15年以上前なら、大往生だ。告別式は子供とその家族、孫、曾孫たちに見送られた。

孝江の晩年、介護から入院の世話まで寄り添っていたのは、フミオの弟夫婦である由紀男と純子である。

 そんな二人にとって、孝江の告別式は最後のおつとめだ。厳かに送り出してあげたいという願いで準備を進めてきた。

 しかしながら案の定。

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