「つぶやくということ」 twitterでつぶやくということ 同じ空の下で違う景色をみる 今日は日差しが強いねとか雨だねとか 誰かのしんどいねとか美味しいねとか 平らな大地の上で 世界のまるみに触れる瞬間 まろやかに流れる季節の中で こっそり息をはく ぼくたちはまるく繋がっている 嬉しいね楽しいね一人じゃないね 2023年4月23日 「河川敷を歩く」 河川敷を歩いていく 昼下がりの水面の乱反射 目も開けていられない 飲みかけのペットボトルが リュックの中で揺
桜ひらひら みうしない 燕ぱたぱた 駅のとたん 春つづき #五行歌 2023年4月16日 「あかいろひいろ」 やさしくリセットしましょう 繊維は断ち切らないように もらった絵の具の数が少ないなら パレットに溶かして混ぜまぜして 血液よりもずっとはやく流して 酸素供給間に合っているから たまに脳髄をはみ出して お空をぐるりと一周して 還ってくる引き連れて 明色 喜色 哀色 悲色 2023年4月17日 「シャングリラ探して」 今日も旅するノートのなか ケイ
「黄土の先に在る物」 ここから出たいなんて 思ったこともなかった 死者は砂にかどわかされ 淋しさは嗜好品 夜は殻の雨が降る 誰もが息を潜め皮膚を隠す 老人が言った 黄土の先に在る物を知っているか? 月だった物の成れの果てを 少年はぼんやりと眺めていた またひび鳴りの音がした いつもと変わらぬ静かな夜だった 2023年4月9日 「わたしだったもの」 わたしだったもの 爪を磨いたときに出る白い粉末 わたしだったもの 実らなかった初恋
「きっすいのうた」 不意に生粋に頭をたたかれた 私のきっすいのうた なまだとつよすぎる K音なのにかたすぎない ちょっとつややか わくだとせまい いきでも素敵 すいだと自由だ明度がある 語源はきすい ぴんとこない ちいさいっが愛らしい 息をはくように くちびるはそのままで 私の魂の片割れ きすみたいで 2023年4月1日 「日陰の石垣」 太陽と地球がちょうどいい塩梅で 汗が皮膚を停滞前線している頃合 工事中のカンカンがよく通
「わたしのアドレッセンス」 わたしのアドレッセンス 過ぎ去ったはずの青春時代 抜け出せない思春期じごく 終わりのこない居残り授業 ルーズリーフの真ん中の花柄模様 もう誰もいない放課後の教室 黒板にチョークでかき散らした わたしのアドレッセンス 季節をめくれなくなったんだ 青にこがれるだけの青 ずっと春のまま 2023年3月26日 「さくらのいま」 桜の今は花なのかいなか 開花のあけぼの満開の夜更け ひらひらと舞い散る白昼夢 ひだまりを
「一歩」 その一歩が踏みだせなくて 助走はいつも急ブレーキのステップ 見えない壁と崖におびえる日々 だから抜き足 差し足 忍び足 恐怖にバレないようにすり足で 半歩にも満たない一ミリの歩み いつか一歩になると信じて そしたら 誰かの一歩の尊さを、その勇気を 感じることができるかもしれない 2023年3月19日 「なんとなく」 どこへ向かっているの? 筋トレをはじめたんだ カラダに報いたかったから 瞑想をはじめたんだ イライラしたくないか
「春にしかられる」 あなたが薄着で楽しそうだから わたしもつい真似して脱いでいく 部屋のカーテンも窓も扉も開放して 重たいものはクローゼットに隠して あなたのコーデは終わっていなくて わたしはもうすっかりだらしなくて そんなんじゃ風邪ひくよって 精一杯の冷たさで温めてくれたんだ 2023年3月12日 「このままで」 いたみなんてなかったから 気づかないままでいたんだ ガラスフィルムについた一条のあと 日に日に増えていく透明な線 みっとも
「記憶」 幼い日のメロン味した麻酔の記憶 うすらまなこに映ったあなたの姿 泣きじゃくってまるで祈るように 手を握りしめてくれていたね 生きることはふれることだと あなたが教えてくれたんだ 自分で自分を抱きしめても 私には全然届かないから 人にふれて、ふれられて ようやく私になっていくんだね 2023年3月5月 「私は知っている」 私は知っている あなたの愛が終わってしまったことを 私は知っている あなたほど想っていなかったということを 私は知っている あな
「マフラーを巻く」 マフラーを巻いてあげる姿を 見るのが好きだ 前からでも後ろからでも うまくできなくて 焦りながら じっとしていなくて 文句を言いながら ふるえてる? 心配しながら それは誰かを想っているんだ 寒くならないでっていう祈りなんだ 目に焼きつけておく しばらくお別れだから またねって 2023年3月1日 「つぎはぎだらけのミックスジュース」 空っぽだと思ったら ひたすら誰かの言葉を収集して 部屋の中に飾っ
「爪をとぐ」 わたしは爪をといでいく あなたの肌を傷つけたくないから ぎゅっと手を握りしめていたいから わたしは爪をといでいく すべて指先から始まっていくから 丁寧に生きていくと決めたから わたしは爪をといでいく 誰かの心に刺さるようにと けれど刺さらないようにと かどは削っておいたから 2023年2月19日 「永遠ダイアリー刹那的」 永遠ダイアリー刹那的 日記なんて読んで欲しくないのに いつも誰かにわかって欲しいという 永遠ばかり求めて勝手に失望
「交歓」 どれだけ口をつぐんでも ここは私の最前線ターミナル どこからどこまでが 私の世界の表と裏なんだろう? 生まれていく呼吸も言葉も 終わりのない争いも喜びも 全部ここから飛び立っていく くちびるをそっとさしだした 表も裏もやわく触れあえたなら 私と世界との交歓のはじまり 2023年2月12日 「優しさはミルクレープ」 優しさはミルクレープみたいだ うすく、ただうすく どこまでも伸ばしてゆく ぶちまけられた感情全てを 包み込んでいくように 何度もなんど
「同調圧力」 誰も動かない動こうとしない いつもせっかちなおじいちゃんも ペダルに足をかけた若者たちも 信号が赤から青に変わっても すぐに点滅を開始しようとも サイレンの音よりもていねいに 救急車が徐行で抜ける交差点 本当の所なんてわからない こんな同調圧力なら悪くない あたりまえを見送った 2023年2月5日 「夜にしか読めない文字」 今日、あなたはひとつ太陽を作った 昼の世界はたおやかにすぎていく 黒みだした空にそっと目をこらす ほら、またたき
「あなたは今こそ美しい」 誰より華やかだったあなたは 花は散り 葉は落ち 枝は枯れ 幹は痩せ細る 失ったものはなんだ 虚飾とへつらいだけだとしたら 抜き身のあなたがそこにいる 年月は残酷か 今をさかりと咲き誇る あなたは今こそ美しい 沈みたくも昇りたくもないと 地平線にとどまり続ける あなたの輝きに魅せられながら 2023月2月1日 「内臓たちのチルアウト」 内臓たちのストライキ 最後休みいつだっけ? 休肝日なんて言うくせに 胃腸なんて
「しにふれる」 ねむれない夜 今日を終わらせたくなくて 何もなせなかったと 後悔ばかりを募らせて まばたきの数だけ 傷は増えていくというのなら 悪夢と対峙する勇気を まぶたの裏にそっと閉じこめて わたしはしにふれる 目をあける 生きているという不思議 朝でも昼でも真夜中でも おはようとありがとう 2023年1月22日 「ともしび」 もし生まれ代わっても 私にだけは戻りたくないと 深海の底の泥の中で 日の光を求めるのは 息苦しいから なのになんでかな
「分解と再生」 カラダは食べたものでできている 分解と再生を繰り返す動的平衡 生命が感情で彩られているなら ココロは感じたことでできている かなしみだけでも喜びだけでも きっとよどんでしまうから 色んなものを食べていくんだ 不要なものなんてなかった 無駄なものなんてなにひとつなかった 2023年1月15日 「はじめて虹をみた日のこと」 橋という存在が生まれる前から 虹は空とわたしをつないでいたね 弧をえがきながらヘミソフィア ときには垂直起動エレベータ
「太陽系の外へも」 どれだけ手を伸ばしても君の手は 海にも月にも届かないかもしれない だけど手と手を取り合えば 太陽系の外へもいけるから いまはまだ手ごたえがなくても 手さぐりで精一杯伸ばしてみる 隣にいる誰かに届くかもしれない 隣にいる誰かの傷をふさぐことが できるかもしれない 2023年1月8日 「ゾンビのぬくもり」 まるで死体が動いているみたいだ あなたは繋いだ手を振りほどくと 呆れながら眉間にしわを寄せて そんなゾンビみたいなわたし