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#詩 2023年3月④


「一歩」



その一歩が踏みだせなくて

助走はいつも急ブレーキのステップ
見えない壁と崖におびえる日々

だから抜き足 差し足 忍び足
恐怖にバレないようにすり足で

半歩にも満たない一ミリの歩み
いつか一歩になると信じて

そしたら
誰かの一歩の尊さを、その勇気を
感じることができるかもしれない

2023年3月19日



「なんとなく」



どこへ向かっているの?

筋トレをはじめたんだ
カラダに報いたかったから

瞑想をはじめたんだ
イライラしたくないから

ダンスをはじめたんだ
楽しそうだから

詩をかきはじめたんだ
かきたくなったから

きわめなきゃいけないの?
どこか目指さなきゃいけないの?

ただなんとなくくらげみたく

2023年3月20日



「星くずと雨ざらし」



ほら
空にはじまりの線がひかれていくよ
あの一本いっぽんが誰かの涙の跡

あなたが乗るはずだった銀河鉄道
チケットはびりびりに引き裂いた

カシオペアも北斗星も大好きなのに
笑って手を握ってごまかした

星が雨みたいにふりそそぐ夜
もう少しあなたとぬれていたかった

2023年3月21日



「おわかれのひ」



ことばがテキじゃなくなったひ
ことばはあなたをまっていて

イミをこえられたら
よろこんでくれた

イミをかんじてくれたら
だきしめてくれた

いつかくる
どうしようもないひのこと

さよならでもさようならでもない
ことばがただのコトバになる

おわかれのひのことを
ことばだけがしっていた

2023年3月22日



「くるいめまいサティ」



つまずきはどこか気づき
ねえたたいてよサティ

ひねもすがらにジムノペディ
くるいめまいサティ

もっとゆっくりと苦しみをもって
つまびらかにサティ

わたしの鍵盤だけをたばねて
つまびいてサティ

わたしのつまずき気づき
もしくはくるいめまいサティ

2023年3月23日



「羽化」



穴ぐらの中のあなたは
オホホとも言えないくらい暗い

今をムリして精一杯
エヘヘと不自然な声でクライ

もっと自由になって欲しいけど
ウフフなんて嘘くさいため息

いたずら好きの子供たち
イヒヒって乳歯の笑みでスマイル

「あなたの中のエヘヘムシが羽化する瞬間」
アハハと宙を舞うスカイ

2023年3月24日



「名状しがたい」


名状しがたいものがある
孤独に包まれた未明の衝動

言葉にできたら幸いだけど
たいてい不可視な残像だ

それでもあなたは名状してゆく
形のない感情に輪郭を与えてゆく

世界の質量が少し増えていく
いまはまだ見えないままだけど

いつか誰かが名前をつけて
くれるかもしれないから

2023年3月25日


#詩


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