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#詩 2023年2月②


「同調圧力」



誰も動かない動こうとしない

いつもせっかちなおじいちゃんも
ペダルに足をかけた若者たちも

信号が赤から青に変わっても
すぐに点滅を開始しようとも

サイレンの音よりもていねいに
救急車が徐行で抜ける交差点

本当の所なんてわからない
こんな同調圧力なら悪くない

あたりまえを見送った

2023年2月5日



「夜にしか読めない文字」



今日、あなたはひとつ太陽を作った

昼の世界はたおやかにすぎていく
黒みだした空にそっと目をこらす

ほら、またたきがひとつ増えている
世界の明度がすこしあがっている

季節はずれの手紙をかざす
夜にしか読めない文字でつなぐ

明日、あなたは何を作ってくださるの?

2023年2月6日



「私の中身」



私の中身を探しています

血肉を抜いたスケルトン
透明な伽藍堂を泳いでいく

つまるところはしゃれこうべ
声をつまんで蓋をして

誰かが水を注いでくれるのなら
探してたものが浮かびあがるから

私の中身
私にだけは見つかんない

今ごろはきっと
水星あたりを漂っているはずだから

2023年2月7日



「140字未満」



話せばはなすほど離れていくようで
どこか遠くの空へと風にさらわれて

私の言葉おしゃべりしたがってる
待てと言われた仔犬のここちで

だから140字未満でちょうどいい

かけない時間もかみしめている
明日またかけることを祈ってる

私は私の言葉をてばなしていく
140字未満でちょうどよかった

2023年2月8日



「そうだユニバ、行こう」



そうだユニバ、行こう

ペンとノートと年パスもって
往復分のSuicaチャージして

乗らない食べない仮装しない
ぽつんと座ってただ書いて

誰かの笑顔がみたくなる
誰かの元気をもらいたくなる

私を知る人がいない世界で
私は孤独の先にふれる

なんてぜいたくな人生
そうだユニバ、行こう

2023年2月9日



「ハンモックにゆられながら」



ハンモックにゆられながら
あなたと二人飲むとしたら

秋つまみのオータムナル
少しあまめのダージリン

ちょこんと爪先をあげたなら
そこはずっと死に近い浮遊感

ゆれるカップに口をつけて
こぼさないようにていねいに

ハンモックにゆられながら
あなたと二人ゆらめいて

2023年2月10日



「つまずき」



きみはいつも虚空につまずく

何もないところでこけてしまう
おっちょこちょいって笑われて

何かを始めるたびにすべっては転び
誰かの言葉に引っ掛かっては倒れ

きみの心のスタビライザー
きみだけの姿勢制御システム

だから今日もつまずいていくんだ
きちんと世界と折り合うために

2023年2月11日


#詩

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