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#詩 2023年3月②


「記憶」



幼い日のメロン味した麻酔の記憶
うすらまなこに映ったあなたの姿

泣きじゃくってまるで祈るように
手を握りしめてくれていたね

生きることはふれることだと
あなたが教えてくれたんだ

自分で自分を抱きしめても
私には全然届かないから

人にふれて、ふれられて
ようやく私になっていくんだね

2023年3月5月



「私は知っている」



私は知っている
あなたの愛が終わってしまったことを

私は知っている
あなたほど想っていなかったということを

私は知っている
あなたにとりかえしのつかない傷がついたことを

私は知っている
あなたがちゃんと人を愛せる人間であるということを

誰よりそばで見てきたから
私は知っている

2023年3月6日



「何度も何度も」



昨日なくしたはずの言葉たちが
今朝そしらぬ顔してひょっこり隣に

ひらがなも漢字もてにをはも
表記は何も変わっていないのに

うたが優しさを連れてきたんだ
もう帰ってこないと思っていたのに

私たち何度も何度もなくしては
私たち何度も何度も取り戻していく

春の風のにおいがした

2023年3月7日



「ケラケラケセラセラ」



笑い声はきっとケラケラケセラセラ
子どもたちだけの魔法の言葉

耳をすませてごらん
意味なんてないのに通じてる

叫び声もきっとケラケラケセラセラ
子どもたちだけの秘密の文法

楽しさを響かせながら
走ってる駆け回ってる笑ってる

ありがとうになる前の魔法の言葉
笑顔はケラケラケセラセラ

2023年3月8日



「アボガドに裏切られる」



アボカドにいつも裏切られる

あなたの愛を待ち続けると
ドロドロにとかされてしまうんだ
闇堕ちですね、わかります

やわらかな笑みに騙される

どこぞのドーンな海賊みたく
実はゴーイングマイウェイ
もうそれただのゴムだよね?

そもそもアボガドかと思ってた
私は今日もアボカドに裏切られる

2023年3月9日



「まるでラブレターをかいてるみたい」



今もどこかで誰かが何かを
表現しようとしているから

私にはそれが世界に対する
愛の告白にしかみえなくて

ラブレターなんて
かいたことないけれど

ラブレターなんて
もらったことないけれど

あなたに内緒でしたためてる
毎日がまるでラブレターみたい

2023年3月10日



「ホーム」



帰る場所はあるのに
帰れる場所がないとあなたはいう

眠る場所はあるのに
眠れる場所がないとあなたはいう

今日もきっとまぶたは開いたまま
あなたは寝たふりをしているから

帰るべきホームを、ふるさとを
たぶんずっと探し続けていくんだ

2023年3月11日


#詩


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