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#詩 2023年1月③


「分解と再生」



カラダは食べたものでできている
分解と再生を繰り返す動的平衡

生命が感情で彩られているなら
ココロは感じたことでできている

かなしみだけでも喜びだけでも
きっとよどんでしまうから

色んなものを食べていくんだ

不要なものなんてなかった
無駄なものなんてなにひとつなかった

2023年1月15日



「はじめて虹をみた日のこと」



橋という存在が生まれる前から
虹は空とわたしをつないでいたね

弧をえがきながらヘミソフィア
ときには垂直起動エレベーター

はじめて虹をみた日のこと
もう思いだすこともできないけれど

空にうごめく化け物の影をみたのか
ただそこに物言わぬ美があったのか

ねえ、わたし覚えていますか

2023年1月16日



「わたしのエントロピー」



未完成な詩をかきとめる
まだふぞろいな欠片たち

わたしはその中で漂って
つないでよまだだよって

子守り歌の囁きをきいて
ノックの音を待っている

あふれそうなキャンバス
抱きしめながら息をして

ああどんどん増えていく

ごめんなさい地球温暖化
わたしのエントロピー増大中

2023年1月17日



「まだくれない」



夕日になる前の太陽が好きだ

昼と夜の境界線で拒んでる
もういいかいって言われてる
まああだよって叫んでる

赤くなりたくないよって
最後の力を振り絞って
眩しくて優しくて暖かくて

その光を浴びる者は
その声に耳を傾ける者は
みなすべからく詩人

まだくれない
もうくれない

2023年1月18日



「欲求不満なかかし」



欲求不満なかかしが
空をにらんで微笑んでいる

哀しいのは誰かと
カラスがたずねてくる

風が興味深そうに
こちらをのぞいている

明日も明後日も
かかしには特にやることがない

ただそこにいるだけの存在
害虫や害鳥がいなくなったら
かかしは自由だ

かかしは自由になりたいのか
そこにいたいのか

2023年1月19日



「君が笑う」



温かいご飯と冷たい団らん
わたしの味気ない食卓の記憶

だけど、君が笑うんだ

おいしいねって
嬉しそうに楽しそうに
唇をせっせと動かして
残さずちゃんと味わって

ナンプラーも知らない私を
宇宙人でも見るような
呆れた顔であなたは
今度はエスニックだねって
光りながら、笑うんだ

2023年1月20日



「ハトつかまえたことある?」



園児が息を弾ませながらきく
お母さんは大層困り顔
何か答えるも聞こえなくて

捕まえられなかったことへの
憤りなどまるでなくて
ただ追いかけることへの
喜びであふれて

鳩を置換しようする私には
あの子の問いに答えてやれない

「ハトつかまえたことある?」

2023年1月21日


#詩


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