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#詩 2023年2月④


「爪をとぐ」



わたしは爪をといでいく

あなたの肌を傷つけたくないから
ぎゅっと手を握りしめていたいから

わたしは爪をといでいく

すべて指先から始まっていくから
丁寧に生きていくと決めたから

わたしは爪をといでいく

誰かの心に刺さるようにと
けれど刺さらないようにと

かどは削っておいたから

2023年2月19日



「永遠ダイアリー刹那的」



永遠ダイアリー刹那的

日記なんて読んで欲しくないのに
いつも誰かにわかって欲しいという
永遠ばかり求めて勝手に失望する

だけどあるんだ
微弱なWiFiみたいな一瞬が
まばたきよりもずっと短くて

それでもあったんだ
わかってもらえたと思える瞬間が
繋がっていたんだ

永遠ダイアリー刹那的

2023年2月20日



「固まってゆくよ」



どうか35℃を下回らないで
心も凍えてしまうから

感情が固まってゆくよ

憎しみは憎しみのまま
悲しみも苦しみもそのまま

映画を観たり散歩したり
何かを創ってみたり

ほら、また動きだすよ

ふるえてるシバリング
とけてあふれてながれでて

涙はきっとあの頃のわたし
こおらせておいたわたし

2023年2月21日



「手放して」



もうどうでもいい
ただ感じていたいだけ
私は私を尊重したいだけ

ほらどうぞって
湧きあがるエネルギーを
また手放して、あげる

ハロー世界ありがとう
おはよう私ありがとう

いっぱいいっぱい
愛してもらえていたんだね

それならもう大丈夫だから

さあ遊ぼうか

2023年2月22日



「心に闇を飼っている」



心に闇を飼っている

なかなか子憎たらしくて
意地っ張りなヤツを

光なんて微塵も理解したくないと
お祭りの、屋台の輝きをいつも
指をくわえ遠巻きに眺めてるくせに

白く塗りつぶしたかった
あの列に並びたかった
浄化したら幸せになれるの

黒をいだいたまま生きてゆく
お願い今日も傷ついて

2023年2月23日



「またたく」



まばたきのたびにまたたいていく

名もなき何かがどこかでよばれ
名前も知らない誰かがよばれる

いつか私もまたよばれるから
あなたと一緒ならよかったけれど

たぶんそうはならなくて
その方がきっといいはずで

同じ所に行けるかもわからない
だから今の内にいっぱいよんで

めをとじていても

2023年2月24日



「冷めた珈琲」



朝、ベッドからおりてリビングにいく

流し台の横に珈琲カップがぽつんと

冷蔵庫の中にはサラダと果実とあと
スクランブルエッグになれなかったたまご焼きが

透明な静寂だった

もう匂いさえも残っていないのに
まだあなたの温度が残っているから

わたしは冷めて苦くなった珈琲をのむ

2023年2月25日



「世界に覚えておいてもらうために」



世界に覚えておいてもらうために

私の哀しみも、あなたの喜びも
今日いなくなった誰かのことも

色鮮やかに、でもモノクロームに
等しく繋いで、ときに不等式で

感情すべてを季節にたくして
私たちが生きたあかしを
その空気をもぜんぶぜんぶ

世界に覚えておいてもらう

2023年2年26日



「わたしだけの言葉」



わたしだけの言葉を探している

もうすでに言われたのか
まだ言われていないのか

これから言われるのか
一生言われないのか

特別な言葉なのか
ありふれた言葉なのか

言いたいのか
言って欲しいのか

辞書に載っているかもわからない
まるで何もわからないけれど

わたしだけの言葉を探している

2023年2月27日



「言葉に羽がついている」



味気ないノートとペンをおく
ヨガマットかベッドの上か

正座だったり膝をかかえたり
ごろんと大の字だったり

何がかけるのかなんて
この瞬間は忘れてしまえ

だって詩がかけるんだから

ただそれだけで嬉しくて
たまらなく生きていける

だからもう私は翔べなくていい
言葉に羽がついているから

2023年2月28日


#詩


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