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#詩 2023年4月④


「つぶやくということ」



twitterでつぶやくということ
同じ空の下で違う景色をみる

今日は日差しが強いねとか雨だねとか
誰かのしんどいねとか美味しいねとか

平らな大地の上で
世界のまるみに触れる瞬間

まろやかに流れる季節の中で
こっそり息をはく

ぼくたちはまるく繋がっている

嬉しいね楽しいね一人じゃないね

2023年4月23日



「河川敷を歩く」



河川敷を歩いていく
昼下がりの水面の乱反射
目も開けていられない

飲みかけのペットボトルが
リュックの中で揺れている
あの音を何て呼ぼうか?

コガモアオサギ
すずめにカラスにはとぽっぽ
翔んでいる啼いている
ここではみんなすいちょうだ

果実のない葉の中で
アオスジアゲハが羽を閉じ
せせらぎを聞いている

すべての緑をアプリで
片っ端に取り込んでいく
雑草なんてひとつもなかったよ

ただわたしが名前をしらないだけの
あなたたちがそこにいるだけの

もしかして他人なんて人も
いないのかもしれないね

2023年4月24日



「リノリウムの床」



リノリウムの床に頬をつける
厳かな静寂だ

左耳の方が通りがいいからと
みぎそくがいで横になる

左目から始まり右目と合流し
こめかみをくだり外耳へといたる

あたたかさで震えがとまらない

リノリウムの床なんて幻想だと
あなたは云う

長い廊下に上履きが触れる瞬間を
ただ聴きたかった

2023年4月25日



「蟻」



ありがはっているよ
私のカラダのいたるところで

アメンボみたいにすいすいと
皮膚感覚をすり抜けて

うぶ毛をそわそわかき分けて
はわれていない所を探す方が難しくて

強い風に見舞われて
何匹か引き離されて

照りつく日差し物ともせず
ありがはっていくよ

夏のにおいがする方にむかって

2023年4月26日


「その先へと」



ここがそうなの?って
キミが訊くから
そうだよって
ボクは応えて

ここが果てなのねって
キミは舐めようとするから
不味いよって
ボクは諦めて

もういいわって
キミは立ち上がろうとするから
どうするの?って
ボクは尋ねて

乱雑に掴んでは
何の容赦も外連味もなく
その先へとキミは
進んでいくんだ

2023年4月27日



「letters」



吹きつける風に
心は凪いで
ぬくもりの中
貴方の笑顔も薄れていく

出られない
出口なんてない

大空を失った羽に
十代特有の夢物語が刻まれる
愛し合った思い出を
過去にするように

郵便物は
死人のように
沈黙している

出られない幸福の
消印のない

2023年4月28日



「その真ん中にあるもの」



黄みがかった若草色
輝いて

黒くくすんだビリジアン
力強くて

新緑のシンフォニー
奏でて

儚さとはまるで無縁の新陳代謝

吹き抜ける風
鳴らして

ざわざわと踊り出して

枯葉色の垢
舞って

ひらひらと堆積して

ささやかな季節の予感
聞こえて

上には夏が下には秋があったんだ

2023年4月29日



「あこがれ」



色あせないものを永遠と呼ぶのなら
瞬間だけあればいい

真空がうたう未来永劫なんて
涙のないものだけだから

昨日の夢を今日の夢と共に洗濯する
乾くと少し伸び縮みしている

着心地が悪くなっている
色味もどこか違って映っている

それでもぬれたままでいたい
蒸発を繰り返しながらあこがれ

2023年4月30日


#詩

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