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#詩 2023年4月①


「きっすいのうた」



不意に生粋に頭をたたかれた
私のきっすいのうた

なまだとつよすぎる
K音なのにかたすぎない
ちょっとつややか

わくだとせまい
いきでも素敵
すいだと自由だ明度がある

語源はきすい
ぴんとこない

ちいさいっが愛らしい
息をはくように
くちびるはそのままで

私の魂の片割れ
きすみたいで

2023年4月1日



「日陰の石垣」



太陽と地球がちょうどいい塩梅で
汗が皮膚を停滞前線している頃合

工事中のカンカンがよく通る
温度があがると匂いがつよまる

私の席は日陰の石垣おいやられ
はだかの梅ただよって思い出す

くんくんくんくん誘われて
色も音も私もあなたもみなみな

おそとに出てしまいたくなる
しまいたくなる

2023年4月2日



「ほうちょうの日」



きみに呼ばれた気がしたから
4月2日ほうちょうの日

温室の放し飼いひらひらひらひら
顔にも髪にもてふてふてふてふ

人懐っこいオオゴマダラたち
スマホ画面をガシガシガシガシ

自由とはガラス天井の先なのか
今この瞬間の飛翔のことなのか

色褪せた翅に聖夜の刻印
きみの時間もう少しあと少し

2023年4月3日



「アッシュグレイのほこり」



あなたのその艶やかな御髪を

一本いっぽん違う色に染めてしまっても
きっと束ねたホコリのアッシュグレイ

おかしいね見えないよ光チラチラ
世界の波長わたしの周波数ずれて

この波になんて乗れっこないのに
今日も踊らされているよゆらゆら

空と海と大地と
キャンバスにはぶちまけられた灰

2023年4月4日



「鳩のくちばし」



鳩のくちばし
巻きつく花びら
サクラ色
飛び立つ姿は
ルチャリブレ

2023年4月5日



「あのアクアパッツァ」



あのアクアパッツァをもう一度
お願いって言われるたび胸がきしむ

タラもアサリも安物だったのに
塩コショウの加減間違えたのに

ふたを開けたら海が
あなたの故郷のにおいがした

あの味をこえることも
再現することもできないけど

あのアクアパッツァじゃないけれど
あなたに食べて欲しいんだ

2023年4月6日



「おしまづき」


わたしのこり固まってしまった
輪郭を消してしまいたくて

そっと もたれかかった
五体を地になぐように

あなたの果てとわたしの果てが
ふれあってしまう

毛穴が埋まる
うぶげが蝶々結びする

はだから月がとおのいて
あなた おしまづき

また 線をひきたくなる
あなたは月 そこにいる

2023年4月7日



「雨の日は」



雨の日は世界が少しそうぞうしい
かきけして

大地をたたいて弾かれて
タイヤに巻き込まれズタズタで
もう点ではいられなくなる

足元には水たまり ぽとんぼとん
落ちてゆく何度も呑み込まてゆく
明日にはきっと面でもいられなくて

水が静寂になる前の孤独の叫び
雨の日はみんなうたいたくなる

2023年4月8日


#詩


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