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#詩 2023年1月②


「太陽系の外へも」



どれだけ手を伸ばしても君の手は
海にも月にも届かないかもしれない

だけど手と手を取り合えば
太陽系の外へもいけるから

いまはまだ手ごたえがなくても
手さぐりで精一杯伸ばしてみる

隣にいる誰かに届くかもしれない
隣にいる誰かの傷をふさぐことが
できるかもしれない

2023年1月8日



「ゾンビのぬくもり」



まるで死体が動いているみたいだ
あなたは繋いだ手を振りほどくと
呆れながら眉間にしわを寄せて
そんなゾンビみたいなわたしの手を
精一杯強く握ってくれたんだ

あなたの手のぬくもりは
やわらかであたたかで
あなたに包んでもらうためだけに
わたしの手は冷たかったんだね

2023年1月9日



「わたしだけのバイオスフィア」



わずかな硬水と
スマホのブルーライトを
太陽光の代わりにして
植物みたく光合成もどき
ずっとこのまま
どこにもいきたくないと
ただありたいと
おふとんの中で
ひざをかかえて丸まって
わたしだけのバイオスフィア
完全閉鎖型循環環境生物圏
ここでいきたいよ
どこかいきたいよ
いきたいよ

2023年1月10日


「わたしのトラウマスイッチ」

わたしのトラウマスイッチ
だれかいますぐ爆破して

全身いたるところ地雷原
わたしの取扱説明書
メルカリで売ったらいくらかな

気がねなく話したい
当たり前を喋りたい
日常を語りあいたい

今日少し寒いねとか
前髪はねてるねとか

わたしのトラウマスイッチ
だれかいますぐ爆破して

2023年1月11日



「待っている」



予定時刻になってもこない
バスを待っている

このままずっと
ここにいなきゃいけない気がして

電車がいったあとの
駅のホームでたたずんでいる

いつも私だけが
取り残されている気がして

誰もいない公園のベンチで
何かを探している

ここでなら見つかる気がして
かつてあったような気がして

2023年1月12日



「そんなこと考えて意味あるの?」



わたしにとって他人は
夜空の星ぼしよりも
もっとずっと遠かった

命のこと死のこと
宇宙やわたしや人間のこと
「哲学的」とか「深い」とか
そんなんじゃないんだ

果てはないけれど明日も考える

「意味なんて必要なの?」

今なら言えるから
今から言うんだ

2023年1月13日



「スムージー」



キレイなものだけを抽出してジュースにする
カラダに優しい味がした

キレイじゃないものを集めてミキサーにかける
凍らせておいた思い出の数々

汗や涙や名前も忘れた誰かの体液
全部ぜんぶ加えてスムージー

ひと息に飲み干す

味なんてもうわからないけど
ココロがふるえているのだけはわかった

2023年1月14日


#詩

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