宇宙ネコ

散文、随筆、小説、童話、文体気にせず雑多に書いています。 双極性障害の頭の中は、こんな…

宇宙ネコ

散文、随筆、小説、童話、文体気にせず雑多に書いています。 双極性障害の頭の中は、こんなふうに忙しいのです。

マガジン

  • 随筆またはエッセイ

    躁状態で書いたものが多いです。(下にいくにつれて躁) ちょっと意味わからないかもです。

  • 男と女シリーズ

    〇〇な男と〇〇な女たちの世にも奇妙な物語

  • Bar logosにて【完結】

    異次元へと誘う奇妙な一夜。 【長編小説】

  • ヘンリーと赤いふうせん

    ふうせんが表すものは、勇気・自信・好奇心・チャレンジ精神・自分を動かす原動力となるもの。ヘンリーのふうせんはどうなるのでしょうか。 【童話】

最近の記事

  • 固定された記事

【短編】#(2,300字)

一度見失ったら二度と出会えない。 そんなSNSの大海原の中でわたしたちは再会した。 それも、お互いに新しいアカウントで。 さらには、違うアカウント名で。 これは奇跡と言ってもいいんじゃないだろうか。 大海に放ったワカシとセイゴの稚魚がそれぞれブリとスズキになって再び出会うような。 いや、例えが悪いな。 では、これではどうか。 同じタンポポから飛び立った綿毛がそれぞれ旅をし、降り立った場所は隣同士だったような。 うーん、例えはもういいか。 とにかく、わたしとあなたは再び出

    • お勧めは分身

      人から勧められたものは、大抵読むことにしている。 小説、ビジネス書、JBpressの記事のひとつ、 その他何でも。 大抵の人は、 「本は読む?」とか「小説好き?」とか そんな前置きを置く。 それに対して、 「読むけど最近はあんまり」とか 「小説はミステリーが好き」とか 「伊坂幸太郎は面白い」とか そんなことを返す。 そうすると、 勧められる本はミステリーでもなく伊坂幸太郎でもなく、歴史物の冒険譚であったりする。 人は、いろんな前置きをしながらも 勧めると決めたものは8割方勧

      • 【短編】SFはファンシーパンダに乗って(4900字)

        公園のベンチに空きがなかったので、子供用の遊具に腰を下ろし缶コーヒーを開けた。 動物を模した塊に跨って遊ぶアレ。 バネ式になっていてグワングワンと前後に揺れるタイプのものをよく見る。 幸い俺の腰掛けた、恐らく馬、はバネ式にはなっておらず安定しているのでコーヒーをこぼすことはないし、変な大人がはしゃいでいるようにも見えない。 向こうのはうさぎ、だろうか。 それにしては大きさの比率がおかしいと思うが、まぁどうでもいいことだ。 乾いた秋の風が枯葉を散らすと同時にため息を吐く。

        • 躁なんです。

          スーパーの商品ラインナップが、どの売り場も年末年始に向けて浮かれ気味だ。 この浮ついた空気がするりと身体に入り込んでしまえばどうなるか、想像にかたくない。 そう。 躁だ。今、限りなく“躁”に寄っている。 予兆は2週間くらい前だっただろうか。 先月は身近な人物が続いて亡くなるなど、気分の沈むことが多かった。 それで、一時鬱に寄っている気もしていた。 ところが、次第に躁の気配が濃くなってきている。 最近はまた新規事業の構想を練り始め、ビジネスモデルキャンバスやらカスタマージ

        • 固定された記事

        【短編】#(2,300字)

        マガジン

        • 随筆またはエッセイ
          19本
        • 男と女シリーズ
          5本
        • Bar logosにて【完結】
          5本
        • ヘンリーと赤いふうせん
          13本

        記事

          小説の種

          『穴』 「埋め合わせするから」 なんて台詞、大っ嫌い。 そんなことを言う男に限って、吐いた台詞さえ忘れてるから、その穴が埋まったことはない。 あぁ、あたしはもう穴だらけよ。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 『この大空に翼を広げ』 爽やかな青に羽を広げたような雲。 そんな空を見上げて、あぁ、秋がやってきたのだなぁ、と思う。 あの雲のように、わたしもこの空に溶けて飛んでゆきたい。 目を閉じて、強くそう願うと、次第に地面から足が離れてゆくような感覚になったけれど、地球の引力はそう

          2000字を書くということ

          一体、何のために書くのだろう。 正直、こんなことをしても何にもならない、と解りきった頭でいる。 でもそんなことはすぐに忘れて、というかまったく気にならなくなっていてまた書いている。 この繰り返し。 本当は、“何にもならない”という谷の底に沈んで終わり、なのだけれど。 「毎日2000字書くぞ!」と意気込んで開設されたnoteを見た。毎日2000字チャレンジの記録は一日で終わっていた。 「毎日2000字書くぞ!」と始まった記事の終盤には「2000字書くのって大変だ」と書いて

          2000字を書くということ

          【ショートショート】キミの温もり(220字)

          「あったかいね」 そう言って抱きつくとキミは 「血が流れてるからね」 と素っ気なく言う。 「その態度はあったかくない」 なんてふくれて見せたものだけど。 今キミに抱きついても 「あったかくない」 あったかいのは血が流れてるからだ。 頭上でキミがそう言うのが聴こえる。 いつものキミの言葉が今は鋭く胸に突き刺さる。 今、キミはとても“冷たい”。 あふれた涙がほおを流れた。 「あったかい」 「「血が流れてるからね」」 ひとりでつぶやいた。 キミの声と重

          【ショートショート】キミの温もり(220字)

          光の方へ

          生きる意味なんかなくていい、 そう言ってあなたは笑った。 その笑顔はキラキラとしてわたしには眩しすぎた。救われる思いもしたけれど、同時にあなたとわたしとの測れない距離を見た気がして、少し寂しくもなった。 少し?・・・ううん、かなり。 キラキラと輝くあなたは光で、わたしは黒く地面に張り付く影だった。 生まれて来なければよかったと、そう言われ続けてきたわたしは、存在の意味の裾を握っていないと立ってさえいられない。 本当はそんなものにこだわらず、無垢にひた走ってこの命を使って

          【短編】僕と死と嘘と。(1,870字)

          費やした時間に応じて減っていくから、勉強するには鉛筆が好きだ。 書けなくなるギリギリまで粘って、ようやく削る、その瞬間が好きだ。 歯磨き粉でも、スポンジでもなんでもギリギリまで使いたい。 だからこの命もギリギリまで使いたい。 そういう性分なのかもしれない。 喉に癌が見つかったのは3年前の春だった。 会社の健康診断で良の結果を受け取った数週間後だった。 あの時、もっと早く見つかっていれば。 そうは思わない。 人間は遅かれ早かれ死ぬのだ。 そんな心境に至ったのが、癌が

          【短編】僕と死と嘘と。(1,870字)

          【ショートショート】僕の友達(750字)

          カラスがそのザラザラとした舌を僕の手に押し付けた。何度も何度も舐めてくれる。 擦りむけた手のひらにその感触は少し刺激的だったけれど、不思議と痛みは和らぐような気がした。 ありがとう。 気付けば声に出していた。 ありがとう、カラス。 カラス。僕が付けた名だ。 真っ黒なコイツには単純すぎる名前。 それでも、僕だけの呼び名が気に入っている。 公園に住む野良猫のカラスには他にも、クロやジャー子という名前があるらしい。 ジャー子は、その特徴的な鳴き声から付けられた名だろう。 懐い

          【ショートショート】僕の友達(750字)

          【ショートショート】染まるふたり(300字)

          「地平線に夕日が沈むのが見たい。そういう場所に住みたいなぁ」 君がいつものワガママを言う。 僕らは、この街で一番夕日がよく見える歩道橋の真ん中にいる。 「そうだね」 僕はいつもの返事をする。 そうしているうちに夕日はビルの谷間に沈んでいった。 「また沈むとこ、最後まで見られなかったね」 君が言う。 「そうだね」 僕が答える。 手をつないで歩道橋の階段を一歩一歩と降りていく。 君は気付いているだろうか。 夕日がどこに沈んでも、ぼくにとっては君とのこんな時間がずっと

          【ショートショート】染まるふたり(300字)

          自由の刑

          人生において、やらなければならないこととは何だろうか? その答えとも言えることが、確信を伴ってびっちりと書いてある自己啓発本や、それらに関連して広告として流れてくるネットの記事を目にする度、僕には似合わぬそのバイタリティに気圧されてしまう。 僕は何をすればいい? 僕に何ができる? 僕に生きる意味はあるのか? 問いばかり膨らんで、抱えるものは大きくなって、重くて重くて一歩たりとも前に進めやしない。 目の前を行き過ぎる箱。ぎゅう詰めに運ばれる人たち。みな目的を持ってあの箱に

          自由の刑

          譫言

          どろどろと眠りの中に溶けて、ベッドと一体になった頃には「今は何時だろうか」と気にもしなくなった。 貧血で倒れてゆく瞬間に似ている。 緩やかに穏やかに死んでゆくとき。 今日がいつまでも続くとは思わない。 寧ろそんなことはうんざりだった。 追いかけてきた昨日が今日を追い越すような日々の中で、明日に馳せる希望は捨てた。 夢を探して開けた空っぽの冷蔵庫の前で冷やされていくちっぽけな身体。 ありつけたものはなく、何も生まないし何も生まれない。 (カバーイラスト:オリジナル作品の一

          【ショートショート】わたしの心の中の風景(920字)

          彼が描いたその絵は、とにかくとても素敵だった。 そんなことで彼のことが気になり始めるなんて、漫画のようなフィクションが現実に起こり得るとは。 我ながら驚きだ。 F6のキャンバスにアクリル絵の具で描かれた秋の草原は、穏やかに、寂しそうに風に吹かれていた。 オーカーのワントーン、差し色さえないその画面がとてもお洒落に見える。 中学生でそんな配色をする子は見たことがない。それも美術の課題授業で。 彼が気になった。 それにはふたつの意味がある。 この草原は、彼の何を表している

          【ショートショート】わたしの心の中の風景(920字)

          【ショートショート】HERO(290字)

          実は僕、スーパーヒーローなんだ。 地球を侵略する知的生命体がいれば戦うし、街で犯罪が起これば警察より俊敏に駆けつける。学校のアイドル、美姫さんのピンチを救って恋に落ちる。 …かもしれない。 そんなことのひとつも起きればの話。 だから僕がスーパーヒーローだってことは誰も知らない。 侵略者は攻めてこないし、小さな町の犯罪は駐輪違反くらいだし、学校のアイドル、美姫さんは学校一のイケメン、藤堂先輩と付き合ってる。お似合いのふたりだ。本当に。 だから、僕は時々自分がスーパーヒ

          【ショートショート】HERO(290字)

          【ショートショート】ファインダー(620字)

          僕には妻の死に顔が見える。 現像する写真にも、もちろん目の前の妻にも異変はない。だが、ファインダー越しに妻の死に顔が見えるのだ。 気が付いたのは、この古いカメラを道具屋で買ってまもなくのことだった。 ファインダーで妻を覗くといつも見えるのは、白髪の老婆。その面影が妻のものだ、と気付き、もしやこれは死の間際の妻の姿なのではないかと思うようになった。 ある日、自宅マンションの中庭で日向ぼっこをする妻を撮っていた。すると、いつもは老婆であるファインダー越しの妻は、今この瞬間の

          【ショートショート】ファインダー(620字)