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ショートショート:動く写真
その写真は動いていた
誰がなんと言おうと動いていた
動画のようだったので
誰も写真だと思わなかった
ただひとりだけ
写真が動いてると言った少女がいたが
何を言っていると笑って誰も相手にしなかった
壁に掛けられ
額縁に入れられ
飾られているのに
誰もおかしいと思わなかった
もしかして
そういった仕掛けがあるのだろうか
映像が流れるのは不思議ではない
壁にかけるテレビがあるくらいなのだ
額縁に入
ショートショート:縁切寺に詣でても
終わるはずの恋だった
燃え上がるような炎は今はない
もう終わったと言い聞かせて
くすぶる心をなだめるために縁切寺に詣でた
どうせ終わるなら
縁もゆかりもなくなる方がいい
仕事も捨てよう
住んでいた場所も捨てよう
あのひととのなじみの場所も
ぜんぶ捨てよう
そうしてきれいさっぱりしたら
次は縁結びの神様の元へ行けばいい
嫌いじゃない
嫌いじゃない
でももうこれ以上好きになりたくない
これ以
【ショートショート】闇は吸う
漆黒の闇の中
どちらを向いても黒い
助けを呼ぶ声はとけて消える
どこに行こうか
どこへ行けるのか
さっぱりわからなかった
どうすれば
どうすれば、ここを出られる?
開かずの間の中にいるようだ
自分も外にいる誰かも開けられない
密室ともいえる場所は
あまりに黒すぎて広いのか狭いのかもわからない
どうやって入ったのか
いつから入ったのか
とんと覚えていなかった
待っていれば誰かが助けてくれるの
#幸せをテーマに書いてみよう~休日の休息~
「どーぞ」
「ありがとう」
「どーぞ」
「ありがとう」
四階建てアパートの二階、ベランダのある八畳間にはお昼を過ぎたあたりから陽があたるようになる。折り畳み式のちゃぶ台を置き、食事をしたり、ちょっとした作業をすることもあった。今はよちよち歩きの娘、千里と一緒に過ごしている。妻の浩美は久しぶりに友達とお茶をするのだと出かけてしまっていた。
中西健也は区役所の職員として日々働いている。つかの
『 #同じテーマで小説を書こう ~人守る声~ 』
ひゅーひゅーという声がする。いや、声ではなくて音だろう。何十年も前から建っている、古い家屋だから隙間風が吹くのは仕方なかった。暴風雨の中、明かりもない山道をさ迷い歩くよりはましだった。昼間は歩いていれば暑いぐらいの気候だったが、日が落ちるにつれて気温がどんどん下がった。
秋の日はつるべ落としと言うが、茜色の空が浮かび上がった後は凍えそうな冷たい空気に身を震わせた。山奥の秋は多くの実りと豊かさを渡