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私がはるか昔、高校生だった時の出来事である。

その当時、好きな女の子と大阪城に行くことが

友達同士の中でなぜか流行っていて、

お付き合いはしていなかったものの、

当時好きだった女の子を誘って、

電車で大阪城公園まで向かい、

お散歩デートをしてもらったことがある。

当時は手をつなぐ勇気もなく、

とにかく面白いと思ってもらえるように、

また行きたいと思ってもらえるように、

爪痕を残すことばかり考えていた。

とにかく間をあけずに会話を繰り返し、

女の子の話を引き出しながら、

それにツッコミを入れる形で、

ケラケラ笑いながら、

お城周辺を散策した。

大阪城の周りには、

高く積まれた石垣がたくさんあって、

その高い石垣の上の段の方まで行き、

その石垣に腰掛けて、

足をぶらんぶらんさせながら、

景色を眺めたりして、

女の子と2人でケラケラ笑いながら話をしていた。

石垣の高さは、およそ3メートルくらいあり、

それが段々畑のように連なっている。

周りには人があまりいないところだったので、

少し良い雰囲気になった私と女の子は、

少しずつ距離を接近させていった。

話しながら、腕と腕が時々ぶつかり合い、

それでも構わず話を続けた。

ちょっと間が空いて、

お互いが、お互いの顔を見合わせる。

「 こ、これは、もしかして・・・」

私の胸の鼓動がどんどん高鳴るのがわかる。

唾をゴクンと飲み込む音をなんとか消そうとする私。

そして2人は、

更に接近する。

すると突然、

「 ガサッ、ガサガサッ・・・」

と、何か物音がした。

私と女の子はビックリして顔を見合わせ、

そして周りをキョロキョロ確認する。

右、左、上、と、視線を動かし、

そして、

ぶらんぶらんしていた足元に視線を動かすと、

なんと、

石垣に沿って、

ピタッと張り付いている、

男の忍者がいたのだ。

「 え〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ ‼︎!!! 」

私と女の子は思わず大きな声を出した。

すると、

その忍者は、

高さが3メートル近くある、段々畑のような石垣を、

猛スピードでピョンピョン降りながら、

私達の前から、あっという間に姿を消していった。

私と女の子はしばらく呆然となり、

お互いに顔を見合わせて、

「 ほっ、ほんまに忍者って、い〜いたんやな〜 」

と2人呟いた。

忍者とは、

黒い上下の服を着た、

ただの覗き見変態おじさんのことなのだけれど、

なぜか忍者という表現しか、その時は出てこなかったのだ。

それからは、

女の子が覗き見された怖さに耐えられなくなってしまったため、

残念ながら、

すぐにその場をドロンする形になった。


後にも先にも、

忍者と出会ったのはその1回だけ。

逃げるスピードが、

人間の能力を超えていたように思う。

いつの時代にも、

忍者はいるのかもしれない。


忍者






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