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【読書ノート】47「パンとサーカス」島田雅彦

実は初めて島田雅彦の小説を読んだ。「小説・対米従属国家日本」といった感じの内容で、長いが読みやすいので一気に読める。ドラマ「VIVANT」のように、政治経済に関わる多少難解な題材を万人に理解できるようにマンガ的に解りやすく物語化している印象。筆者は職業小説家であるが、政治に対する意識も非常に高く日本国の現在の在り方(アメリカ隷属の現状と中国従属の可能性)について批判的な立場から長年深く考えていることが理解出来る。参考文献は添付されていなかったが、多分あの本やこの本を読んだのではないかということを推測してしまった。作中に出てくる中立を守る「自由日本」の構想が筆者の理想だと思われるが、実現する日は来るであろうか。

「売国奴が一番偉い国から愛国者が放出する国への転換は容易ではない。アメリカへの隷属から解放されたとしても、中国への従属を余儀なくされるのであれば、世直しは新たな悪夢の到来を促すだけに終わる。アメリカの自由主義も中国の共産主義も根は同じだ。どちらも 官僚が主導し特定企業と政府の利益を独占し、経済格差を広げていく完了通知に過ぎない。共産主義の津波を食い止める防波堤として、70年以上の長きに亘って、アメリカに奉仕してきた歴史自体が大いなる幻影だったのだ。日本の未来は、覇権争いを繰り広げる2つの悪の帝国のどちらに着くかで決まるのではない。どちらにもつかず、中立を守り、市民を搾取し、見殺しにする官僚制資本主義と決別し、誰も欺かず、誰も支配しない自由日本を立ち上げるかどうかで決まるのだ。」

P540

(2023年10月26日)


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