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読書ノート 19「人民の名のもとに」(上下巻)
数年前中国でブームになったテレビドラマ「人民の名義」の原作。中国のH省を舞台にした官民の汚職を描く勧善懲悪モノで現在の中国の実情を色濃く反映した骨太な内容。長編だが一読の価値はある。
著者はあとがきに書いているようにバルザックに心酔しているようで、中国におけるフランス文学の影響がここでも窺い知れる。
最後の主人公侯亮平の台詞が中国の現状を物語っている。
「….高先生が変わったのは、社会と心の病的状態のせいです。僕の幼馴染の蔡成功は悪徳商人で悪いところがたくさんありましたが、社会の環境がそれを悪化させました。そして、彼の違法行為が社会の病的状態をより深刻にしてしまったのです。この悪循環がとても恐ろしい結果をもたらすんです。私は長い間反腐敗の仕事をしてきて、腐敗官僚を数多く逮捕してきました。そこで疑問が生まれました。すべて逮捕し終わるのだろうか。官僚になったものは腐敗官僚となり、経営者は悪徳商人になる。庶民は目先の利益を奪い合い、一度権力を手に入れれば、腐敗官僚じゃないと保証することはできません。だから、病的な社会の土壌を変えていかなければならないんです!自分の病巣から着手して、個人と社会がお互いに感染し合う悪循環を断ち切らなければいけません。どの人も自分の身の浄土に努める….」(下巻P620)
(2021年9月12日)
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