本書は現役中国人民解放軍空軍大佐である喬良と王湘穂の共著で、1999年に中国で出版されベストセラーになり、その後9.11テロが起きて注目を浴びて、2001年には日本語にも翻訳されたものを、2020年に新書で復刊したもの。
超限戦とは簡単に言えば「戦争と非戦争」「軍事と非軍事」の境界線を取り払い、言わば何でも活用して総力で戦う概念で、第一次世界大戦がそれ以前の戦争と異なった「総力戦」(軍事力だけの戦争でなく、国家全体の人員、物質、イデオロギーを用いて行う戦争)になったことを彷彿とするもの。
本書を読んで真っ先に感じたのはロシアの「ハイブリッド戦争」であるが、本書の説明によると、この本が出版された遥に後の2014年にロシアの新軍事ドクトリンにこの概念が現れて、それが「ハイブリッド戦」と呼ばれるようになったとのこと。つまりロシアが活用する「ハイブリッド戦争」の大本は「超限戦」であると言える。
本書では未来の戦争では、今までのルールに縛られない方法で非軍事的、超軍事的手段である貿易戦、金融戦、新テロ戦、生態戦、密輸戦、メディア戦、麻薬戦、ハッカー戦、技術戦、資源戦、経済援助戦、文化戦など、国家に多大な損失を与えることが出来るあらゆる方法の戦いが繰り広げられると述べている。
著者によると「軍事」と「超軍事」と「非軍事」のカテゴリーはそれぞれ以下のようになり、これを組み合わせて使用することで相乗効果をもたらすという。
(2022年8月6日)