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ファーストタイム、イン、スリー、イヤー

やっと出会えた

そう思いました。
何が とかはなくて なんか よかった。

彼の後ろ姿を初めてみた2月、もう恋に落ちていたのかもしれません。
髪型とか、背格好とか、声とか、名前とか
惹かれる理由は山ほどあるけど、それらのどれでもなくて
彼の なんか に恋をしたのだと思います。
でもその なんか は恋愛弱者である私には到底わかるはずもなくて、恋としては認識をしていませんでした。

同じクラスになった4月、あぁやっぱり好きなのかも と彼への好意を実感しました。
あの日の直感を信じてよかったんだ、彼のことこれからもっと好きになるんだろうな。
そう思いました。
でもやっぱり明確に好きな理由はわからなくて、見た目かな?くらいにしか思えなくて
そんな風に適当に彼のことを好きになってもいいのかなって不安に思いました。
もちろん、見た目が好きというのも立派な理由ですが自分がそのように考えてもよい立場なのかもよくわからなくなりました。

なんせ三年ぶりの恋なので、恋というのがいかに唐突に始まるものなのか、どれだけ熟成されたものから始まるものなのか
何もかも忘れてしまったようで、ただ彼の なんか を信じるしかありませんでした。

そんな気持ちでいていいものなのか、そんなことばかり思っていても
じゃあ、ただのクラスメイトでいいか。
この思考にだけは至らなくて、やはりこれは恋だと確信して、わたしは彼を見つめてみようと恋する覚悟を決めました。

彼は素敵な人でした。
今までに恋した人の中でも、今までに出会った人の中でもずば抜けて素敵な人でした。

目上の人への敬語を忘れない とか
「お願いします」「ありがとう」「ごめんなさい」が言える とか
周りへの配慮を劣らない とか
当たり前のことができる人なんです。

わたしはよく 理想が狭い と言われますが
まさに彼のような人が理想でした。
わたしは「たろぅちゃんのタイプってなぁに?」と聞かれた際には ゴミをポイ捨てしない人 と言及するようにしています。
それはわたしなりのユーモアと常識人が好きだという強い意思を表すためで、わたしの中の真理でもあります。

彼はきっとポイ捨てをしない人に分類されると思います。

掃除の時間、彼は自分の机を下げたあと、欠席者の机をひとりで下げていました。四人分くらいだったと思います。彼の心の内はわかりませんが、決して偉そうでも気だるげにも見えず、ただ当たり前のことかのように、スマートに事を全うしていました。

その時のわたしはというと、爪先から頭のてっぺんまで強い風が吹き込んだのちに、頭のてっぺんから爪先まで物凄い速さで稲妻が走りました。

大好き。
大好き、大好き、大好き。
は? ってなる暇もないくらい、わたしの目はハートになって、心臓はドキドキ言っていて、身体は硬直したままでした。
わたしはようやく彼に本当の恋をしました。

恋の決め手は机つり。
いやいや、おかしいだろ。って思うかもしれませんが、わたしにとってはとても重要なことでした。


それからの学校生活は楽しくて仕方がなくて、もともと不登校ぎみだったわたしが学校に行きたいと思うようになったのはまさに革命で、彼には感謝でしかないのです。
毎日、会えるかなって想像しながら、ほぼ確実に会える場所に足を運んで、彼をこっそり見つめて、こんな幸せなことはありません。

この恋が実るとか、青春がどうだとか、そんなことは一切考えていなくて
ただ、素敵だと心の底から思える彼のことを好きになれたこと、そういう風に思わせてくれる人でいてくれたこと この事実そのものが、わたしにとっては、かけがえのないもので
彼に恋ができてよかったと思っています。

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