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「おまいう」常習者が身につけたい「EQ2.0」(関美和)

翻訳者 関美和のおすすめ本! 第6回
" Emotional Intelligence 2.0 "
by Travis Bradberry, Jean Greaves 2009年6月出版
EQ 2.0 (「心の知能指数」を高める66のテクニック)
著:トラヴィス・ブラッドベリー、ジーン・グリーブス 訳:関 美和
サンガ 2019年2月発売

「ここでそれを言うか?」と、こちらが驚いてしまうような人がいる。リアルな世界にもいるし、バーチャルな世界にもいる。失言の多い政治家もそうだし、セクハラまがいの広告を世に出してしまう企業もそうだ。いわゆる「おまいう案件」の当事者のほとんどは、自分が見えていない上に、他人が自分(とその発言)をどう捉えるかが見えていない。
かくいうわたしも、「おまいう」常習者である。失言したあとになって、「どうしてあんなことを言ってしまったのだろう」と気づくのだが、時すでに遅し。仕事でも、私生活でも、自分と他人を俯瞰することができずに、信頼を損なってしまったことが何度もあった。
傷ついた信頼を取り戻すには時間がかかる。壊れたら元に戻らない人間関係もある。

わたしとは正反対に、自分と他人のこころを読むのがうまく、言葉も行動も上手にコントロールできているなと感心してしまう友人がいる。彼女らは、自分と他人の感情を俯瞰できている。調子のいい時に舞い上がらず、調子が悪い時も必要以上に落ち込まない。尊大にも卑屈にもならないので、付き合っていてとても気持ちがいい。そんな人なので当然、周りに人が集まってくるし、仕事でも私生活でも成功している。
まさに、あんな人を「EQ」が高い人というのだろう。
1995年にダニエル・ゴールマンが出版した『EQ こころの知能指数』はアメリカで一大ブームになった。日本でもベストセラーになり、「EQ」という言葉が一般に普及した。「IQよりEQ」と言えば、「頭がよくても人の気持ちがわからなければダメだ」とか、「学歴より人柄」といった意味で使われているようだ。
この少し手あかのついた「EQ」だが、具体的にはどんなスキルがあればEQが高いと言えるのかをはっきりと説明できる人はほとんどいない。またこのコンセプトはわかっていても生活の中で実践できている人は少ない。

EQを高めるのに必要な4つのスキル

EQ 2.0 (「心の知能指数」を高める66のテクニック) 』では、EQのスキルを大きくふたつに分けている。ひとつは個人的なスキルで、もうひとつは社会的なスキルだ。どちらのスキルもさらにふたつに分かれる。
自分の心を知るスキル、つまり自己認識力。そして感情ではなく行動をコントロールするスキル、つまり自己管理力。ここまでが個人的なスキル。
他人の気持ちを理解するスキルは社会的認識力。そしてそれを人間関係に活かすスキルが人間関係管理力だ。

このように分解してみると、EQが具体的に何を意味するのかがわかってくる。そして一番大切なのは、EQはIQと違って生まれながらに備わったものではなく、努力によって身につけることができるという点だ。

ではどうやって身につける? この本にはそれぞれのスキルを自分のものにするためのテクニックが66項目にわたって描かれている。
さらにこの本が面白いのは、巻末付録のパスコードを使って、オンラインでEQテストを受けることができ、4つのコアスキルのスコアの内訳がすぐにわかる。このスコアを参考にしてどのスキルを伸ばしたいかを選び、選んだスキルを伸ばすためのテクニックを3つほど選んで訓練してみるといいそうだ。数カ月も実践を続けたあとでもう一度テストを受けると、驚くほどにスコアが伸びているらしい。

ありのままに他者の感情を受け止め、人間関係を円滑に

ところで、このEQ、最近よく耳にするマインドフルネスとどう違うの?と思われるかもしれない。同じとも言えるし、違うとも言える。
マインドフルネスは、自分の感情をありのままに受け止め、善悪の判断を加えず、今この時に集中することで、人生をより穏やかに健康に豊かに生きようとする試みだ。
EQには自分だけでなく、他者の感情をありのままに受け止めるという側面がある。他者の気持ちを客観的に見ることができれば、人間関係がスムーズになる。

自分のこころをありのままに受け止めながら、感情に引っ張られずに行動するスキルと、他人のこころを読み取って人間関係に活かすスキルの両方があれば、「おまいう」案件で失敗することもないはずだ。そんな人間になりたいものである。

執筆者プロフィール:関美和 Seki Miwa
翻訳家。杏林大学准教授。慶應義塾大学文学部・法学部卒業。ハーバード・ビジネススクールでMBA取得。モルガン・スタンレー投資銀行を経てクレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。翻訳書にリー・ギャラガー『Airbnb Story』(日経BP社)、『お父さんが教える13歳からの金融入門』(日本経済新聞出版社)、ピーター・ティール『ゼロ・トゥ・ワン』(NHK出版)、ほか多数。


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