時刻はお昼の十二時すぎ。昼休みに入ったお客さんがいっせいに食堂にやってくる。 狭い店内は一気にごった返し、洗いもののお皿で溢れかえる。 「店長!お米も、お茶も、…
ついにこの日が来てしまった。 いつもなら学生たちで溢れ返る食堂前の通りには今朝、人けはない。 誰もいなくなった通りに立ちすくみ、天を見上げている店長のとなりで、…
当店では日替わりの一汁一菜の他に、二品のお好きな小鉢を選ぶことができます。本日の小鉢はスコッチドエッグに野菜たっぷりラタトゥユ、海老フライにブドウと生ハムのカル…
「今日は、小鉢ひとつ追加したので650円です。おつりは350円です」。レジに立つお客さんの声がする。「あっ、自分でスタンプ押しますよ」。老眼のスタッフに代わって、お客…
食堂には、ときどき営業時間以外にもお客さんが来ることがある。 人通りの多い日中が苦手なUさんは、早朝に朝ごはんを食べに来る。 朝ごはんといっても、まだ食事の支度は…
小さい頃の 学校からの帰り道 ぐうぐう鳴るお腹を抱え アリの行列や野良猫のお尻、 真っ赤に染まった夕焼け空に なん度も気をとられながら やっとの思いで家に着いたっけ …
つまずきてんちょう
2024年4月5日 15:13
時刻はお昼の十二時すぎ。昼休みに入ったお客さんがいっせいに食堂にやってくる。狭い店内は一気にごった返し、洗いもののお皿で溢れかえる。「店長!お米も、お茶も、お茶碗もなくなったよ!」スタッフは必死に接客をする。私はというと、完全にパニックに陥り、厨房の奥で空(くう)を見つめてフリーズしている。そういうときに限って五名さまの入店。(店内は満席)洗い物の山は、シンクからいまにも溢れ出
2024年3月17日 21:50
ついにこの日が来てしまった。いつもなら学生たちで溢れ返る食堂前の通りには今朝、人けはない。誰もいなくなった通りに立ちすくみ、天を見上げている店長のとなりで、ボランティアのコバヤシさんがつぶやく。「あぁ~大学、春休みだね」「なんだ~ハルマゲドンかと思ったよ~!」というのを飲み込んで、ホッとしたのもつかの間。その直後、新型コロナウイルスが世界的に感染拡大し、開店から三ヶ月後の二〇二〇年
2024年2月11日 16:26
当店では日替わりの一汁一菜の他に、二品のお好きな小鉢を選ぶことができます。本日の小鉢はスコッチドエッグに野菜たっぷりラタトゥユ、海老フライにブドウと生ハムのカルパッチョ、さらに季節の果物をふんだんに使ったフルーツタルトって……、「一汁一菜はどこ行ったーー!」とツッコミを入れてくださった読者の皆さま、落ち着いてください。確かにうちは和食を基本とした一汁一菜、粗食テイストの店なのですが、今日は違うんで
2024年1月21日 22:53
「今日は、小鉢ひとつ追加したので650円です。おつりは350円です」。レジに立つお客さんの声がする。「あっ、自分でスタンプ押しますよ」。老眼のスタッフに代わって、お客さんがポイントカードに印を押す。"CLOSE"のままの看板に気がついて、「これじゃぁ、お客さん入って来ないんで」とひっくり返して〝OPEN〟にしてくれるのもお客さんである。この食堂では、不思議な現象が起こる。お客さんが自分でお皿を
2023年12月23日 17:49
食堂には、ときどき営業時間以外にもお客さんが来ることがある。人通りの多い日中が苦手なUさんは、早朝に朝ごはんを食べに来る。朝ごはんといっても、まだ食事の支度はできていないので、食べるのは昨日の残りの冷凍ごはんとキムチ納豆である。それでもUさんは「今日も愛情をありがとう!」と言って帰っていく。彼の後ろ姿を見送りながら「料理は一手間が愛情ってあれ、嘘だな…」と思いながらも、さわやかな「ありがとう」
2021年5月29日 12:46
小さい頃の学校からの帰り道ぐうぐう鳴るお腹を抱えアリの行列や野良猫のお尻、真っ赤に染まった夕焼け空になん度も気をとられながらやっとの思いで家に着いたっけ家のドアを開けるなり靴をほっぽり出したまま「今日の夕ごはん何ですか」と叫ぶ、赤ら顔ひとつ何度その道を歩いたか子供はあっという間に大人になってわけもわからず忙殺の日々やれ進路だ、やれ就職だ、やれ請求書だたえず時計と