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トイレは、真剣に -猫も子どもも、大人もみんな- #047

私の思う猫のかわいさのひとつに、トイレをしているときの顔が真剣だ、ということがある。

自宅で私がよく座っている場所から見える位置に猫のトイレがあり、たまに目が合うのだが、彼らはいつも何やら真面目な顔をして用を足している。

友人達にその話をすると、動物だけでなく、赤ちゃんや子どももトイレの時は真剣な表情なのだと教えてくれた。

そうなのか。たしかにそうかもしれない。それに、笑顔では力が入らない。

「用を足す猫が、笑いながらこちらを見ている」

これは怖い。猫が笑うのかどうかは置いておいて。

猫と暮らしながら子育てをしている友人が、猫や子どもが排せつという無防備なタイミングで真剣なのは、外敵に襲われないために警戒する本能なのではないかと言っていた。彼の息子が小さい頃、部屋のはじっこでトイレの格好をしているのに目をやると「見ないで」とよく怒っていたらしい。

食べることや寝ることと同様に、身体に不要になったものを身体の外に出すことは大切だ。でも外敵に襲われないで安全を確保することもまた重要なのだ。


また別の友人とその話していると、彼女は言った。

「大人だって、その時は真剣なんじゃない?」

それは、盲点だった。言われてみれば、そうかもしれない。

大人は基本的に個室に隠れて用を足す。その時の表情は人からは見えない。自分の顔ももちろん見えない。

座っている正面に鏡があるトイレはあるのだろうか。

あるのかもしれないが、私は入りたくはない。自分がその時どんな顔をしているのか見たくはないし、見ながら用を足せるのか甚だ心もとない。


よく考えてみるとちょっと入ってみたい気もする。

その時自分はいったい何を考えるのだろうか。そんなことを考えつつ夜も更けていくのだった。

(追記1)
なんで子どもはみんな、うんち(やその他下ネタ的な言葉で)笑うんだろう。と私が言ったら、「自分も大人だけど笑っちゃうんだよね」と言っていた友人がいて、彼はきっといいお父さんだろうなと思った。

うんちをしている猫を私が見ていたら「集中できなくなったらかわいそうだから見ないであげて」と妻は言う。猫はそんなことを気にするのだろうか。うちの猫はその後尻を誇らしげに嗅がせてくるくらいなのだ。そういう話をその友人にしたら、彼の妻も同じだと話していた。猫の気持ちにまで気遣う優しい妻をもってお互い幸せかもしれない。という事にしておいた。

(追記2)
このエッセイを読んだ妻は、トイレに鏡をもって入ることを勧めてきた。ある女性の友人は、スマホで自撮りしたらどうかと言う。私の周りの人は、いったい私をなんだと思っているのかと思うが、いい友人達を持ったと思うことにする。

(追記3)
このエッセイを執筆中に行ったあるカフェのトイレは、目の前が鏡だった。自分が意外と大丈夫なことが、なんというか意外だった。

ここはとてもとても素敵なカフェなのです。

2024年4月19日執筆、2024年4月29日投稿

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