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ツキノエッセイ

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なにげない日常だったり、ふらりと立ち寄った過去や、ふと思い出した記憶を拾い集めて、言葉の花束にしてみたい。 切り取ったシーンをそのままに ノンフィクションを始めてみる。 人生…
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#小説

雨音

雨音

さらさらと雨の音が響く朝、
耳の奥をくすぐられているみたい。

今日が日曜日であることに心底ホッとする。

まだ布団から出たくない。このまま永遠に雨音を聞いていたい。いつまでも。

そういえば、あの人に会う日もよく雨が降っていた。買ったばかりのスニーカーを履いて会いに行く。白いコンバースが汚れることさえも、心が弾む魔法のように思えた。いつだってわたしの足取りは軽かった。

好きな人にただ好きだと伝

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茜色の紅茶

茜色の紅茶

平日の午前中

院内の小さな喫茶店は、
付き添いの人達の待合室になる。

大学病院の診察は、
いつだって一日がかりだ。

神妙な顔つきの人
待たされてイライラしてる人
晴れやかな表情を浮かべた人

ここには様々な感情が散らばっている。

わたしは今、
どんな表情をしているんだろう?

混み合う喫茶店の
窓側の特等席に座れたわたしはツイている。

血液検査を終え、
診察まで少し時間があったので
病院

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