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2023年7月の記事一覧

小説 創世記 9章

小説 創世記 9章

9章

街は少しずつ建て直されていった。

牧場を広げ、家畜を増やした。
さすがに人々に食糧を与え続けることはできなかったが、ノアには森の知識があった。
牧場を囲む森から食糧を得る方法を、ノアはたくさん知っていた。
人々に罠の仕掛け方を教え、食べられる野草を教え、果実の調理と保存の方法を教えた。

なにもかもを一度失った人々は、喜んでこの新しい生き方に従った。
目の前にすることがあり、自分や家族の

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『信仰』(絵)

『信仰』(絵)

信仰
それは揺らぎ、混ざり合い、深くなっていく。
綺麗な青になるまで。

絵の前に人を立たせてみた。
見た人の、時が止まると良いな。

小説『小説家』 第五話

第五話

『俺は風呂屋なんだ。毎日、風呂を洗って、番頭に立って、風呂を流して、店を閉める。それが俺だ。』
「あんたのこの言葉がおれを小説家にしたんだ」

行きつけの銭湯で、一郎はおっちゃんに語りかける。
「おれは小説家なんだ。起きて文字を書いて書いて書き続けるんだとあの時、、、」
「はよ、はいれよ」
おっちゃんは冷たくあしらう。

番台の向こうに通った女子大生をチラチラ見ていたことがバレていたよう

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小説『小説家』 第四話

第四話

『いきつけの喫茶店のマスターに拾われた男は、コーヒーの香りに顔を顰めた』
「この一節はおれだよ。
こいつはいっつも営業後に来るんだよ。
このコーヒー自慢のおれの店にだよ。コーヒーの香りが苦手だからってさ。
こいつとは昔からの腐れ縁さ。おれも昔は小説なんかを書いたりしていたんだ。
こいつはこの店に、メロンクリームソーダとナポリタンを目当てに営業後にくるんだ。

まぁ、家族みたいなもんだね。

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小説『小説家』 第三話

第三話

『男は寡黙で、男の中の時間は周りとは違っているように思えた。どんな喧騒の中にいても、静かに立っているのだ。』
「私、面白かったんですよ。
こんな一節を書いた人が、楽しそうに一人で話しているんですもの。
嫌な気持ちなんてぜんぜんないですよ! むしろ、かわいいって感じ?
あ、すいません。先生にかわいいだなんて失礼ですよね。でも私、部屋に帰ってすっごく嬉しくなったんです。あの本を書いたのはこの

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小説『小説家』 第二話

第二話

『誰の心にも森がある。森には獣と宝が潜む。だから俺は奥に行く。』
「僕の世界はですね。この一言で変わったんですよ。目の前に見えている景色が変わったんですよ。色づいたんです。いや、色は元々もあったんですけど、輝きが変わったんですよ。ちょうどあれです、iPhoneの彩度を上げた時みたいな感じですよ。
そんな一言のために、物語はあるんです。誰かの世界を壊すために。その一言で気づき、開けて、癒さ

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小説『小説家』 第一話

第一話

『男は山の中に虎を喰らう。』
「あのね、物語ってのはこれでもう始まるわけ。ここから男の人生に沿って言葉にしていくだけ。
難しい言葉も誰かの小説の知識も、あったらいいかもしれないけど、ないほうがいいこともあるの、いや、その方が多いかもしれん。
凝った設定もどんでん返しもあったほうがいいかもしれない。でもないほうがいいこともあるの。
世界を変えるって言うけどさ、そりゃ男はみんな小さい頃に思っ

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『わたしの心だ。清くなれ。』(絵)

『わたしの心だ。清くなれ。』(絵)

イエス・キリストは言った。

これを飲むものは乾くことがない、と。
飢え渇くものが潤される、と。

一つの川がある。

Instaもあります!
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『恥』(絵)

『恥』(絵)

恥とは不自由である。

心を縛る鎖、それが恥である。
その鎖はどうやってできるか、
誰かに殺された過去である。

恥をかいた時、
後悔が生まれる。
後悔は将来の心配を生む。
将来の心配は現在の支配を生む。

支配は心を殺す。

隠したい傷がある時、
人の目が怖い。
1人になっても、
自分の目がある。
恥ずかしい自分を嫌う。
恥ずかしい過去が縛る。

本当の心は赤く燃えている。

『殺すな』(絵)

『殺すな』(絵)

『殺すな』

私たちは時に
いとも簡単に殺す。
心から出てきたものを、
簡単に握りつぶす。
「無駄だ。恥だ。こっちにいくべきだ」

「殺すな」
そう言ってくれる神は、
僕の傷を癒やしてくれた。

昔かいた恥は、
僕の中で傷となり、
再び傷つくことの恐れとなる。
その恐れを隠すため、
僕は相手を支配した。

愛されることに失敗した悲しみが
愛することを怖くした。

その傷に気がついたとき、
泣いて祈

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『サウルとダビデ』(絵)

『サウルとダビデ』(絵)

聖書の
旧約聖書の
イスラエルの王として出てくる2人
サウルとダビデ

2人には同じように聖霊が臨む。
ダビデはその中で安心し、
サウルは恐れおびえる。
罪を犯した時、
ダビデは神の前にさらけだし、
サウルは隠す。
罪がないかじゃない。
神が喜ばれるのは砕けた魂だ。
神の前に負けられるかだ。
恥をかき、みじめになり、泣いたダビデは、聖霊に腹の底まで知られることを、
「なんて自由だ」と思っただろう。

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