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私信 印象操作ー嫉妬ー

私には
おまえの手に在る「世間が認める肩書」が無い
それは
おまえと比べて
私が劣る事であり
私は癪に障るから
私はおまえよりも「優れている」と
世間に知られなければならない

私は
膨らむ嫉妬に集まる視線を逸(そ)らすため
おまえは非情でわがままで怠け者でなくてはならない 

私が「するな」と言えば
誰もが何もしなくなる
そうしておまえがやめたことを
私がせねばならない場面を作る 

私が「そうしろ」と言えば
誰もがするしかなくなって
おまえもそうする状況を
私が我慢する場面を作る

私は
私が知らない出来事を
おまえが口にするたびに
大きく首を横に振り
じっと堪(こら)える体(てい)で居て
おまえが去った瞬間に
「嘘・嘘・嘘」
「嘘つきは大嫌い」
おまえを嘘つき呼ばわりすることで
私は正直者に成り上がる 

私が望む世間の様は
おまえと比べて
私を高く評価する世間
私に同情する世間
「邪悪」なおまえを耐え忍ぶ
「善良」な私、と知る世間 

私が得たい満足は
相対性でしか成り立たない

時には無言の圧力で
不機嫌を体現することで
思い通りに誘導しては
思い描いた空気を作る

誰かが無言で問うてくる
「それでいいの?」と 

私は
思うようにならない日々の
おまえと無縁のストレスを
溜まり続ける欝憤を
おまえで晴らして
その場しのぎの留飲を下げ
そうしてさらに
世間がおまえを疎(うと)んじるよう
おまえの所為(せい)で
うまくいかない体(てい)でいる
印象操作を繰り返す

堂に入った印象操作で
あらゆる嫉妬に目を瞑(つぶ)ろうと
収まりきらない欝憤は
誰かれかまわず
制御不能の時を重ね

もはや誰も
態度も声も
私に何も伝えて来ない

私は
見たいものだけを見ていたいから
見られたい私を
周りに強いる私の様など
見られていようと
認めないから
有り得ない、としらを切り
いくつも在った思考の回路を
刹那の「欲」を適(かな)えるだけの
唯だ一つの回路を残して
見るべき景色が
見たい景色になる路を
労せず
閉ざした

おまえを「邪悪」に仕立てることで
私は同情されるだけでなく
おまえと無縁の不都合も
おまえの所為(せい)にできるから
私は「責任」の名のもとに
疲労も傷も負わずに済むから
 
私は
無言で見透すおまえを
だから視界の外に置く

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