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書評

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#書評

最近読んでいる本(2024年4月29日版)

最近読んでいる本(2024年4月29日版)

気付いたらブログの更新が1週間ほど空いてしまったので久々に書こうと思う。特に話題もないので最近読んだ本及び、現在読んでいる本などを書いていく。

菅原出『民間軍事会社の内幕』最近読んだ『アークナイツ』というゲームのシナリオで民間軍事会社が出てきたので、現実の民間軍事会社はどういうものなのだろうと興味を持ちとりあえず手に取ったのがこの本である。本書は民間軍事会社とは何かというところから実際の業務内容

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最近読んでいる本(2024年2月20日版)

最近読んでいる本(2024年2月20日版)

更新しなければいけないが、話題がないので最近読んでいる本を語ろうと思う。

ナシーム・ニコラス・タレブ『反脆弱性』読んでいるといってもメインとしてはこの本くらいしか読んでいないというのがある。上下巻がともに400ページ、合計約800ページという長大な分量なので読むのが大変だ。ただ内容自体は非常に興味深いことが書いてあるので面白い。

本書では反脆弱性という著者が提唱する概念が主に説明されている。反

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芥川龍之介『葱』の感想

芥川龍之介『葱』の感想

久々に芥川の全集(筑摩書房)を開いて短編を1つ読んだのでその感想を書いていこうと思う。

今回読んだのは『葱』という短編だ。タイトルを聞いたことがなかったのでそこまで有名ではないのかもしれない。

内容はあるカフェで給仕をしているお君さんという女の子がちょっとチャラい感じの田中という男とデートする話である。お君さんの年齢は15~16歳。ちょっとだけ夢見がちな女の子で、文学や音楽などの芸術鑑賞により

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夏目漱石『こころ』の感想

夏目漱石『こころ』の感想

夏目漱石の『こころ』を読んだので感想を書いていこうと思う。ちなみに自分が高校生の時、教科書にこの小説の一部が採用されておりその部分だけは読んだことがある。たぶん長いこと採用され続けているので読んだことがある人も多いだろう。

教科書に採用されている部分は主に後半の部分で、その部分が小説としても重要な個所ではあるが、すべて通して読んでみるとまた読み味が変わってくるとも思う。細かい箇所を忘れているとい

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ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』の感想

ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』の感想

とある読書系ツイッタラーの人が「今のコロナ禍において『ペスト』が読むべき本とされてるけど『白の闇』の方がパンデミック状況においての本質的なこと描いてる」的なことを言っていたのでそれに影響されて『白の闇』を読んでみた(具体的なツイートはどうだったか忘れたので雰囲気でこんなこと言ってたなという感じです)。

こういうのは大衆のごとく広告に釣られ『ペスト』なんていう有名作に飛びつくよりも『白の闇』とかい

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2023年に読んだ本ベスト10選

2023年に読んだ本ベスト10選

2023年も終わるということで、このあたりで2023年に読んだ本のベスト10冊を列挙していきたいと思う。2022年以前はツイッターでやっていたが、今回はnoteの方にも挙げようと思う。noteの方に書くとその作品の説明も書けるので便利だ。それでは早速挙げていこうと思う。

1冊目→三島由紀夫『春の雪』1冊目と言いつつ読んだのはごく最近である。思い浮かんだ順番で挙げているので最近読んだ本が先にくるの

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村田沙耶香『信仰』の感想

村田沙耶香『信仰』の感想

※村田沙耶香『信仰』のネタバレがあるので注意!

村田沙耶香の『信仰』という短編集がkindle unlimitedにあったのでとりあえず読んでみることにした。村田沙耶香と言えば『コンビニ人間』で有名である。自分もコンビニ人間を読んで面白いと思ったのでとりあえず表題作の『信仰』という短編だけを読んだ。なので今回はその感想を書いていこうと思う。

この作品は主人公の永岡という女性が中学の同級生である

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京極夏彦『姑獲鳥の夏』の感想

京極夏彦『姑獲鳥の夏』の感想

京極夏彦の『姑獲鳥の夏』を読んだので感想を書いていこうと思う(以下の本)。

実は京極夏彦の本は初めて読むが、なんとなくのイメージとして怪異や幽霊といった不思議な存在が出てくる世界観を想定していた。しかし実際は結構理屈っぽい感じ科学や哲学っぽい話が多い。幽霊とかも出てこない普通の推理小説である。

京極堂の脳と心や認識の話の部分を読んでいてカントを思い出した。本書ではそれが不確定性原理という話に帰

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倉橋由美子『パルタイ』の感想

倉橋由美子『パルタイ』の感想

倉橋由美子の『パルタイ』を含む短編集がブラックフライデーで割引だったので買って読んでみた。今回はその感想を書いていこうと思う。

この作品では直接具体的にどこの組織かは明言されないが「パルタイ(党)」での活動の様子と、そこに入党するために履歴書を書くという一幕が描かれる。

手法的にはカフカの『変身』っぽい感じはするけど『変身』ほど抽象的ではない感じ。パルタイという若干間接的な言葉を使ってはいるも

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『三体』の作者の短編を読んで感じたバカSFの良さについて

『三体』の作者の短編を読んで感じたバカSFの良さについて

※劉慈欣『円』に収録されている短編『郷村教師』のネタバレがあるので注意

『三体』自体は途中自体で読むのを断念してしまったが、短編なら読めるだろうということで『円』という『三体』作者の短編集を読んでみた。今回はその感想を書いていこうと思う。

感想を書くと言っても全ての短編について言及するわけではなく、今回は短編集の中でもひときわ印象に残った『郷村教師』という作品にフォーカスして感想を書こうと思う

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卯月コウにおける「別棟」とドストエフスキーの「地下室」は似ているのかもしれない

卯月コウにおける「別棟」とドストエフスキーの「地下室」は似ているのかもしれない

ドストエフスキーの『地下室の手記』という小説を読んだ。

この作品は本心では仲間と混じりたいのに冷たくしてしまったり喧嘩をしてしまったりするという面倒くささが凝縮されたメンヘラのおじさんが主人公の作品となっている。面倒くささや他人に対する他罰的かつ嫉妬的な目線がリアルで、おじさんに不快感を抱くレベルの作品だけど、若干なりとも「自分にもこういう要素あるかもなぁ」と共感ポイントもあるので少なからず刺さ

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【木戸幸一日記の感想】会食、ゴルフ、会議、ゴルフ、視察、ゴルフ、etc……

【木戸幸一日記の感想】会食、ゴルフ、会議、ゴルフ、視察、ゴルフ、etc……

最近『木戸幸一日記』の上巻を読んでいる。木戸幸一と言えば戦前に内大臣を務めた明治の政治家だ。維新の三傑・木戸孝允の親族(養子の子らしい)でもある木戸幸一は終戦時にA級戦犯となったが後に釈放される。その釈放の判断の際に参考資料として重要な資料が本人がつけていた日記である。

普通この手の一次資料はどれも高額で手が出せない印象にあるが、『木戸幸一日記』の上巻に関しては3000円程度で売っていたので買っ

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ハインリッヒ・シュネーの『「満州国」見聞記』を読む

ハインリッヒ・シュネーの『「満州国」見聞記』を読む

最近ハインリッヒ・シュネーの『「満州国」見聞記』という本を読んでいる(上記の本)。元々近代の日本及びアジアの歴史には興味があるのでそれ関連の本はいくつか読んでいるけどこの本は特に面白い。まだ読み途中だが他の本にはない魅力があると思う。

著者であるシュネーは満州の実態調査のために派遣されたリットン調査団の委員でドイツの代表である。他にもイギリスやアメリカ、イタリア、フランスの計5か国の委員がいて、

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芥川龍之介『妖婆』の感想

芥川龍之介『妖婆』の感想

芥川龍之介作の『妖婆』を読んだ。

芥川の作品にしては比較的長い作品となっており読むのに結構時間がかかった。大まかな内容としては互いに好き同士だった主人と女中がいて、その仲がお婆さんに邪魔され引き裂かれるのを何とかするというものとなっている。

この作品は芥川の作品には珍しくハッピーエンドで終わる。女中の方がおばあさんの謎能力と威圧によって家に囚われてしまうけど結局おばあさんが雷に打たれ死ぬという

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